心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

お上りさんの東京見物(その6)~孫娘のお食い初め

2020-02-22 14:57:21 | 旅行

「私はかねてより、古い部屋には、たとえそこに誰もいなかったとしても、独特の美しさがあると思っています。あるいは、まさに誰もいないときにこそ、それは美しいのかもしれません。」

   これは、室内画の画家として知られるヴィルヘルム・ハマスホイの言葉です。東京お上りさんの初日は、東京都美術館で開催中の、家内お薦めの「ハマスホイとデンマーク絵画」展を楽しみました。といっても私には馴染みのない画家です。一枚一枚の絵と対峙しながら、なにかしら心和む時間を味わいました。
 案内によれば、「身近な人物の肖像、風景、そして静まりかえった室内――限られた主題を黙々と描いたデンマークを代表する画家ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)は、17世紀オランダ風俗画の影響が認められることから “北欧のフェルメール” とも呼ばれる」のだと。「19世紀末デンマークの画家たちが描き出した北欧の美しい自然やプライベートな空間でくつろぐ家族の姿。デンマーク人が大切にしている価値観 “ヒュゲ(hygge :くつろいだ、心地よい雰囲気)” が溢れる珠玉の絵画を堪能ください」とありました。
 お昼前に東京羽田空港に到着後、まず向かったのが上野公園でした。ハマスホイとデンマーク絵画展を楽しんだあとは、いったんホテルにチェックイン。夕刻、東京ドームでこの日から始まった「第30回世界らん展」見物に出かけました。午後6時からは場内の照明が落とされ幻想的な風景が広がります。なぜか会場の一画に大きな水槽が置かれ、沖縄の海に生きる魚たちが悠々と泳いでいました。かと思うと多肉植物や盆栽などのコーナーもあって、楽しいひとときを過ごしました。今週の水彩画教室のために、洋らんを一鉢連れて帰りました。
 その後、足を延ばして月島に向かい、少し遅めの夕食をいただきました。知る人ぞ知る「もんじゃ焼き」の街です。JALパックのオプションから「だるま」を選び、東京下町の味を楽しみました。

 2日目の土曜日は、名古屋に単身赴任中の長男君が帰ってきてくれました。小学生の孫2人はクラブ活動で忙しいため、幼稚園に通う末の孫を連れて、浅草へ。孫君のお目当ては、浅草寺に隣接する日本最古のゆうえんち「浅草花やしき」でした。小規模な街中の遊園地にすぎませんが、幼少の頃東京で育った兄姉が遊んだだろうレトロな遊園地を一度覗いてみたかったのでした。
 浅草寺の境内からスカイツリーが見えます。浅草界隈を眺めながら歩いて向かいました。賑やかなお店通りを通って孫君を連れて行ったのは、ソラマチ8階にある千葉工業大学の未来ロボット技術研究センター・fuRoの展示室。決して大規模なものではありませんが、ロボット研究の最先端に触れることができます。大学の方に丁寧に説明いただき、孫君も興味津々でした。
 その後、長男君宅で小学生たちが帰るのを待って、夜は皆で楽しい夕食会。その夜の宿がある横浜に到着したのは10時を回っていました。
 3日目のメインテーマは次男君宅の孫娘の「お食い初め」でした。一カ月半ぶりに再会した孫娘はずいぶん成長していました。笑顔が絶えません。ニコニコニコニコとご挨拶をしてくれました。大安の日だったためか、小料理屋さんには同じ儀式で盛り上がるご家族が数組ありました。
 あっという間の4日間でしたが、最終日は、横浜の中華街を覗いてきました。新型コロナウィルスの影響でしょうか、さすがに人通りは少なかったものの、JALパックのオプションのお店に入ると大勢のお客で賑わっていました。
 この4日間を通じて、心のなかで咀嚼していた言葉があります。「時間がふりつもった空間」です。「ハマスホイとデンマーク絵画」展でみつけた言葉ですが、目まぐるしく移り変わる世の中にあって、揺るぎもしない空間。何代にもわたって人の呼吸が聞こえてきそうな空間。部屋に差し込む和らかな光が充満する空間。ネット時代を迎えて、映像が瞬時に陳腐化してしまう日常性の中で、ひっそりと時を感じる瞬間、空間。
 息子たちの家にも、ぞれぞれの空間があり、それぞれの喜びがあり、それぞれの悲しみがあります。こうして人は成長していくんでしょう。帰りの飛行機のなかで思ったものでした。

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