心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

温故知新 ~ ふるきをたずねて新しきを知る。

2022-10-06 13:56:39 | Weblog

 朝のお散歩で立ち寄るお不動さんの境内には、四国八十八カ所の祠が並んでいます。ずいぶん年を経過したためか、数年前から宮大工の方が祠をひとつひとつ新調されています。今朝、その前を歩いていると真新しい祠が4つ並んでいました。第58番札所「仙遊寺」まで完成したようです。あと30個。まだ1,2年はかかるでしょうか。
 きょうは、先日久しぶりに仲間たちと出かけた街歩きのことをご紹介しましょう。向かったのは日本橋にある高島屋東別館(夏目漱石の義弟である鈴木禎次の設計)でした。1年前に国の重要文化財(建造物)に指定されたばかりの建物内を見学させていただき、そのあと高島屋史料館をご案内いただきました。
 株式会社高島屋といえば1831(天保2)年、初代飯田新七が京都で古着木綿商を創業したのが始まりです。説明を聞きながらふと思い出したのが、玉岡かおるの「花になるらん ―明治おんな繁盛記」(新潮文庫)でした。女だてらにのれんを背負い、幕末から明治を生き抜き皇室御用達百貨店「高倉屋」の繁栄の礎を築いた御寮人さん・みやびの波瀾の人生を描いた一代記でした。もちろん高倉屋とは高島屋のことです。
 この建物には現在売り場はなく、高島屋の社屋として活用されています。一画にはホテルも入っています。部分的ではあっても当時の大理石の飾りが活かされ、昔ながらのエレベーターも一基だけ社員用として稼働していました。古いものを大切にしながら新しい時代を見据える視点は「御寮人さん・みやび」を彷彿とさせるものがありました。
 1階のフードホールで昼食をとったあと、天王寺区は寺町界隈に向かいました。たくさんのお寺が建ち並んでいてびっくり。大阪にこんな場所があるとは知りませんでした。新選組大坂旅宿跡やら應典院などを見ながら、めざすは生國魂神社です。
 生國魂神社は、名前は聞いたことがありますが、お参りしたのは初めてでした。御由緒を拝見すると神武天皇や孝徳天皇の名前が出てくるという古いお社です。大阪では「いくたまさん」と呼ばれ親しまれています。
 境内に入ると、案内矢印板に芸能・お稽古上達の神「浄瑠璃神社」、西鶴一昼夜四千句独吟の聖地「井原西鶴座像」、上方落語発祥の地「米澤彦八の碑」などの文字が並び、いかにも大阪らしい風情が漂います。古き良き時代の大坂を想起させました。

 先週、石清水八幡宮をお参りしたばかりですが、昔の人にとって神さまとはいったいどういう存在だったんでしょう。なんとなく気になります......。そんなことをぼんやりと考えながら、帰りに紀伊国屋書店に立ち寄りました。そこで何気なく目に留まったのがNHKEテレ「100分de名著」でした。
 今月のテーマは折口信夫(おりくち・しのぶ)の「古代研究」です。テキストの表紙には「まれびととは何か」「日本の文化は神とひととの交歓から生まれた」と記され、「実感を重視した古代人の祭り、歌、行事、芸能研究の足跡が、時を超え我々をいにしえの旅へと導く。円環のようにめぐるその思考を辿り、私たち自身の足元を見つめ直す」とありました。
 長い読書遍歴のなかで、鶴見和子、南方熊楠、柳田國男、折口信夫などを摘み食いしてきましたが、根源的な何かしらを薄々感じながらも真面目に向き合ってこなかったように思います。その日の夜、第1回目の講座が始まりました。秋の夜長、窓辺に秋の虫の声を聴きながら折口信夫の世界を遊んでみようと思います。.......これもリタイアした者の特権かも?何歳になってもお気軽なものです(笑)。

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