心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ピエール・ロラン・エマール

2009-04-19 09:19:49 | Weblog
 日曜日の朝は、愛犬ゴンタとのお散歩で始まります。ふだんなら難しい顔をしてバス停に並ぶ通りを、きょうは愉快な気持ちで通り過ぎます。いつの間にか、街路樹のハナミズキが咲き始めているのに気づくのも、やはり休日の心の安寧のせいでしょうか。そういえば、至るところの樹木が芽立ちの季節を迎え、柔らかな若葉が全身で陽の光を浴びています。樹皮に守られて、寒い冬の間じっと耐えてきた生命が、いっきに樹皮を破って芽生えた。それは、若い頃のニキビのような、身体全身がうづくような、そんな内発的な高まりなのでしょうか。樹皮を破って生命の羽根を陽の光に向かって広げる。そんな感じなのでしょうか。こうして、葉っぱたちの1年が始まります。
 そんな気持ちの良い日曜日の朝、いま、部屋にバッハのピアノ曲「フーガの技法」が流れています。きょうのピアニストは、グールドでもアルゲリッチでもありません。ピエール・ロラン・エマールです。季刊誌「考える人」の特集記事「ピアノの時間」に登場したピアニストです。記事によれば、現代音楽の演奏家として高い評価を得ていて、2003年には、かのアーノンクールの指揮でベートーベンのピアノ協奏曲全集を発表して、広く知られるようになったとか。ブエノスアイレスの情熱でもなく、詩的であり哲学的であり独自の世界観のなかに生きる孤高の人でもない。ここに一人の技巧派のピアニストがいる。職人肌さえ感じる、それがエマールの初印象です。昨年発表された輸入盤を見つけました。
 「20代の初めにバッハの自筆譜のファクシミリ版を手に入れて以来、私がずっと楽譜を読み返し、研究を続けてきた作品でした。しかしこのような複雑な名曲を弾くには、まだまだ時間がかかる、自分には機は熟していない、と思い続けてきました。そして50歳になったとき、ようやく決心がつき、録音することにしました」とエマール。わたしたちが何気なく聴く演奏の裏に、演奏家たちの葛藤が隠れています。きょうは、このピアノの曲を部屋に充満させながら、しかし、西洋の天上の高い教会のなかで聴いたら、どんな響きなんだろうとも思いながらの、ブログ更新でありました。
 そうそう、あと10日もするとゴールデンウイークを迎えます。今年は次男君が帰省できないかわりに、長男君がご帰還の予定です。それも6か月を迎えたばかりの孫を連れて。孫の体調にもよりますが、元気そうなら連れて帰りたいと。実現すると、長女の孫君とご対面とあいなります。春の芽生えと同様に、孫たちの成長が楽しみな年代になりました。彼らが、幸せに生きることのできる社会をつくるのが、老年期に向かうわたしのお勤めであろうと、肝に銘じている今日この頃です。
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