初夢２０１２

その狭い空き地に読売巨人軍の練習場が建設されることになった。
ただでさえ狭く、通り抜けるのが大変な路地は、
工事のためのフェンスが設置され、ますます狭くなってしまった。
僕はクルマを運転し、道幅ぎりぎりにその路地を抜けていた。
土手沿いには運転を誤って川に転落したクルマも見える。
僕はクルマを駐車場に止め、そのビルの中に入っていった。
受付に行って名前を云うと、「２階に上がってください。」と云われた。
ロビーでは目つきの悪い男がこちらを見ている。
僕が階段を上がっていくと、その男も僕の後をついてきた。
僕に気付かれないように、余所見をしながら距離を取っているが、
明らかにこちらを気にしていることはその態度で分かる。
きっと僕が読売巨人軍の練習場建設に反対する手続きをすると思っているのだろう。
僕は２階に到着すると、ドアが明け放れた部屋に入った。
そこには事務服を着た女性がファイルを広げて待っていた。
彼女は僕に椅子に座るように促し、ファイルから書類を取り出した。
「もうほとんど完成していますが、あと２０分足りません」と云った。
僕は書類を手にして眺めた。
ポテトサラダやグラタンなどの写真が載ったその書類を眺め、
「分かりました。あとは僕が残りを作ります。」と答えた。
僕は建物の外に出た。
土手沿いに夕日が見えている。
しかし何かが違っていた。
最初はそれがなんだか分からなかった。
しかし土手沿いを歩き、街に行くとその違和感の原因がはっきりした。
人がいないのだ。
街から人間がすべて消失していた。
僕は街の中を彷徨いながら、人間の存在を探した。
しかしもう街には人間がいなかった。
街中の路地裏にある倉庫に行くと、その理由がはっきりした。
街の人々はすべて透明のキューブに閉じ込められ、
倉庫にぎっしりと積み上げられていた。

※これは林檎乃麗が見た初夢を文章化したものであり、
実在の読売巨人軍練習場とその地元住民への配慮、交通事故とは一切関係ありません。