東方三博士の礼拝
この、暗く混沌とした絵が好きだ。
あのレオナルドが、試行錯誤するさまが克明に記されているから。
その、大いなる未完ぶりが気に入っている。
タルコフスキーの映画”サクリファイス”にも暗示的に登場する”東方三博士の礼拝”、その相乗効果でさらにこの絵が好きになった。
かれこれ20年以上も前に、レオナルドのウィンザー城収蔵の素描展を観に行ったことがある。
観た時点では、それほど強い感動はなかったのだが、時を経るに従いじわじわとレオナルドの絵が、自分の内側に浸透してくるのを感じる。
レオナルドの素描には、線の言いようのない美しさがある。
渦巻く水と植物の葉、簡潔に馬の肉体を描き出し、武器や飛行機の細部まで具現化しようとする、錬金術師のようだ。
貪欲な探究心、有り余るアイディア、彼はアーティストでは納まりきらなかった。
なにかを成すには短い人の一生。
レオナルドのほとばしる思考が結晶化しているこの素描を、こよなく愛する。
”モナ・リザ”や”聖アンナと聖母子”もすばらしいが、レオナルドの素描には、宇宙の広がりを感じられる。
一見地味ではあるけれど、彼の素描に今一度深い関心を持ってみよう。
植物画
武器
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