大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・43『はるかなるザナルカンド』

2018-04-16 15:49:20 | 小説3

通学道中膝栗毛・43

『はるかなるザナルカンド』 

 

 

 もともと、わたしの部屋はお父さんとお母さんの共用の物置部屋だった。

 

 夫婦の事情で整理しなくてはならなくなった時に、どうせやるなら、当時赤ん坊だったわたしの部屋になるように片づけたらしい。

 しかし、何事も徹底的にやることが苦手な両親は、部屋のあちこちにモノを残したままわたしに譲った。そして、いつの間にかわたしの持ち物の中に混じってしまったんだ。

 薄型プレステ2は、そういうモノの一つで、本棚そのものがピンク色であることに紛れてしまい、モナミに指摘されるまで気づかなかった。両親が学生時代に使っていた英和辞典や国語辞典に混じって縦置きにされていたので完全に紛れてしまったんだ。

 大型ってか、初代のプレステ2は知っている。ずっしりとごついフロントローディング式で、ソフトを入れる時、いちいち受け皿が出てきて、いかにもこれから仕事をしますって感じの働き者。うちのリビングに残っていたんだけど、受け皿の動作が悪くなったこととソフトを読まなくなったことで、複雑ゴミで捨てられた。

 

 えーーーー! もったいない!

 

 そう叫んだのは、その夜、うちにやってきたモナミだ。

 ピンクの小型も試しにDVDを掛けてみたら、ロゴマークから先に進まない役立たずだった。

 上蓋をパカって開いてソフトを掛けるのが「オーーノスタルジー!」って感じで気に入ったんだけど、使えなくては存在意味がない。こりゃ月末の複雑ゴミだとメールしたら、前回同様アケミさんの運転の自家用車でやってきたのだ。

「これはね、ピックアップレンズが汚れてるんだよ、クリーニングして調整してやれば、元通り元気な子になるから!」

 直す気満々でモナミは目を輝かせる。

「でも、DVDなら他のもで観れるし、プレステ2のソフトとかも無いし」

「そんな、直せば直る子を捨てようと言うの!?」

「あ、だって、使わないし……」

「それで捨てようなんて、ナイチンゲールの精神に反するわ!」

 あんたは看護師か!?

「まっかせなさーい!」

 宣言したモナミはさっそくプレステ2を分解し始めた。

「きったねー!」

 小さなボディーの中によく詰まっていたなあってくらいのホコリとヤニだ。え、ヤニ!?

「これ、相当タバコ喫う人が使っていたんだなあ」

 うちの両親は昔はタバコを喫っていたそうだ。あ、そうかくらいに受け止めていたんだけど、プレステ2の汚れ具合から見ると、とんでもないヘビースモーカーであったようだ。

「まあ、ファンが入ってるから空気清浄機みたいに吸っちゃうんだよねえ……よいしょっと、ほれ、ボディー洗って。うん、ふつうに水洗いでいいから」

 ザザッと洗ってくると、モナミはティッシュや綿棒で中身をクリーニングしていた。

「なんの毛だろう……ワンコ? ニャンコ?」

「動物を飼ってたなんて聞いてないよ」

「ま、いいや。えーと、ここがピックアップで、これをキレイキレイして……ほんで、横のポチっとしたとこが出力調整、これを五度ほど回してやって……」

 

 直った!

 

 無事にDVDが再生できた! でもDVDだったら他のハードでも再生できるんだけど。

「ゲーム機はゲームをやってこそのゲーム機でしょ!」

「だって、ソフトないよ」

「持って来たわよ!」

 モナミはバッグの中からニ十本ほどのソフトを取り出した。

「これあげるから、ちょっとやってみ。ほら、メモリーカードも二つつけとく。えーと、まずはFFX!」

 FFXはプレステ3のリマスターを持っているんだけど、せっかくのモナミの熱意に付き合うことにする。

「やっぱ、ゲームは本来の筐体で本来のゲームをやってやらなきゃね」

 

 その夜、わたしとモナミは、ユウナが召喚士になってビサイド島をティーダたちといっしょにザナルカンドを目指して出発するところまで頑張ったのでした……。

 

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高校ライトノベル・フケモンGO・11・ビックリした!

2018-04-16 06:21:16 | 小説・2

フケモンGO 11
 ビックリした!


 カフカの『変身』て知ってる?

 男の人が目覚めると、大きな毒虫に変身しているのでビックリするって話。
 えと……読書感想の課題図書の話じゃないの。あ、『変身』は課題図書ではあるんだけど、宿題の話じゃないの。

 妙に体が軽い。朝起きた時の感覚がね。

 小さいころにインフルエンザをやって、一晩ウンウン唸って二十時間ぐらい眠って目が覚めた時の感覚……あれに近い。
 一晩で三キロ痩せたから、そりゃ体も軽くなる。
 でも、あの時は布団もシーツもビチャビチャになるくらい汗をかいて、起き上がったらフラフラだった。

 でも、今朝は違う。

 病み上がりの気だるさが、ちっともしなくて爽やかなんだ。
 パジャマを脱いでキャミとショートパンツに、髪を手櫛で撫でながら姿見に我が身を映す、いつもの習慣通り。
「え……………?」
 姿見に映ったあたしは、そこはかとなく……その……可愛い。
 全体にほっそりしていて、それでいてバストはしっかり自己主張している。起き抜けなのに目元が涼しく、唇もプックリと魅力的だ。
「え……あたしだよね?」
 変身したっていうほどじゃない。なんちゅーか、補整がかかったプリクラ写真みたいだって言ったら分かるかなあ?

―― 早起きしないと、間に合わないわよ! ――

 一階から、いつも通りのお母さんの声が急き立てる。
「分かってる! いま起きたー!」
 反射的に言い返すが、なにに間に合わないんだろ? とくに予定なんかなかったはずだけど……。
 顔洗ってキッチンへ行く。
「あ、朝ごはん作ってくれたんだ」
「間に合わないといけないからね」
 なにが間に合わないんだろ? 瞬間思ったけど、17歳の胃袋は、久々に手の込んだ朝食に向かっている。
「あれ、お母さん、なんでよそ行き?」
 朝ごはん平らげたところで、エプロン外したお母さんのナリに気づく。お母さんは、中学の時にあたしがピアノの発表会のときにあつらえた若草色のワンピを着ていた。で、そのとき以上に念入りにメイクまでしていた。
「なに言ってんの、亜美もさっさと着替えるのよ。十分もしたらタクシー来るんだから」
「タクシー?」
「そうよ、今日は特別でしょ。汗みずくで行くわけにいかないんだから……やだ、あたしも慌ててる、ほら、これが今日着ていくワンピだから」
 お母さんが紙袋から出したのは、とても上品なパープルのワンピだ。こんなの衣装負けしてしまう。

「……でもないか」

 着替えて姿見に映った姿は、我ながらイカシテいた。
「ほんとは美容院に行かせてやりたかったんだけどね」
 姿見に映りこんだお母さんがため息ついた。
「髪はそのままにしておくって話だからね」
「お母さん、いったいどこに出かけるの?」
「なに言ってるの、今日は……あ、タクシー来たわよ!」
 表の自動車の気配に、お母さんはすっ飛んで行った。
――早くして、亜美!――
「ね、どこに……!?」

 表に出てビックリした。タクシーの周りにはカメラ構えたマスコミ関係者がいっぱいいたのだ……。

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