通学道中膝栗毛・36
『ゴスロリの美少女』
ひょっとしてと思ったら大当たり。
駅向こうのお屋敷と岡持ちを渡された時に、あのお屋敷が目に浮かんだ。
ほら、先週の放課後、駅向こうを探検していて見つけたお屋敷。
学校のグラウンドくらいの敷地に、それだけでもお屋敷って感じの建物が三つも建っている。
その一つが洋館で、そこの窓から女の子が覗いていて、目が合うとプイと姿を消す。居合わせた小学生が「あれ窓女なんだぜ、あいつと目が合うと死んじゃうんだぜ」とか言ってた。
やっぱ、ここだったんだ……だけど、例の窓に女の子の姿は見えなかった。
「芋清の出前お持ちしました」
インタホンに来意を告げると無言のまま門が開いた。開いたと言っても、それだけで学校の正門かという方じゃなくて、脇の小さな方。
いちおう「おじゃましまーす」と言って潜り戸に入る。
『いらっしゃいませ、こちらにお進みください』
なんと、ロボットがいて、器用な両手で洋館を指示した。
ロボットは、スマホショップに居るのに似ているが、ちゃんと二本の足で歩いている。声は合成音声なんだろうけど、違和感のない男性の声だ。
「えと、出前もってきただけなんですけど」
『お代は芋清さんの口座に振り込まれます、お嬢様はお屋敷からお出ましにはなりませんので、どうぞお部屋までお持ちになってください』
小さく会釈しながらロボットはラビリンスかと思うくらい入り組んだ生け垣の路地をエスコートする。
洋館にの前の車寄せを静々と進む。観音開きのドアが開いた中には同じようなロボットが居て、ほんの二秒ほどピポパポとロボット同士で交信する。
『どうぞ、お屋敷の中はわたしがご案内いたします』
屋内用が女性の声で引き継ぐ。ロボット相手に四の五の言っても仕方がないので、大人しく後を付いていく。
緩やかな階段を上がって奥の部屋に案内される。
『芋清さんをお連れしました』
ロボットが告げると、ドアが開いて、ゴスロリって言うんだろうか、フリフリのエプロンドレスに黒髪の美少女が立っていた。
「ようこそ、中へ」
そのまま映画のヒロインが務まりそうな美少女がにこやかに部屋の奥を指し示す。あまりの優雅さに緊張して忘れていたお辞儀を勢いよくやった。
「わ、わたし芋清の……!」
ゴッツン!
目から火が出た。タイミングよく頭を下げた美少女の頭としたたかにぶつかった。
「す、すみません!」
「いえいえ、気になさらずに」の声が足許でした。
「え? えええええええ!?」
なんと、目の前には首のもげた美少女!
でもって、首は足許に転がってにこやかな笑みを浮かべているではないか!?