大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・42『プレステ2』

2018-04-13 13:31:17 | 小説3

通学道中膝栗毛・42

『プレステ2

 

 

 学校って案外狭かったんだ。

 

 ちかごろ、フト思うことがある。

 終礼が終わって、部活もしないし、新学年になって親しいクラスメートも居ないわたしは、まっすぐ昇降口に向かう。

 ま、学校出ても友だちいないんだけど。

 あっという間に一階の昇降口。

 下足箱を開けて靴を出す。間違ってもお手紙なんかは入っていない。期待もしていないんだけど、瞬間覗いてしまう。

 ティッシュで鼻をかんだ後、一瞬ティッシュ見ない? 人に聞いたことないんでというか、あんまり人に聞くことでもないので、思ってるだけなんだけど、見ると思うんだよね。それに似ている。

 ま、ちょっとした儀式なのかもね。

 その儀式を終えてローファーに履き替えて、校門を出るのに一分かからないんだよ。

 三年になって教室が三階から二階になったこともあるんだけど、やっぱ早い。

 思うに……やっぱ夏鈴が居なくなったからだ。

 教室からグズグズ喋っていたら、昇降口にたどり着くまで十分を超えることもある。

 

 あーーー引きずってちゃだめだ!

 

 ため息一つ吐いて校門……出たところでスマホが鳴る。

 歩きスマホはご法度なので、葉桜の木陰に身を寄せて着信を見る。

 友だちいないは訂正、友だちになったばかりのモナミのメッセだ。

―― ねー、栞の部屋にP2あるでしょ? ――

 P2?

―― P2ってったらプレステ2に決まってるでしょ ――

 プレステ2……んなのあったっけ?

―― 本棚の一番下 ――

 え? え?

―― もー、自分の部屋でしょ ――

 う、で、でも。

―― えと……帰ったら、一度確かめてみて! ――

 

 なんだか、ちょっと怒っているような勢いに圧倒されて、芋清に寄ることもしないで家路についた。

 

 モナミが言う通り本棚を見渡すがプレステ2は見当たらない。

 ちなみにプレステ2はやったことがない。物心ついたころにはプレステ3があったので、わたし的にはプレステと言えば3のことなのだ。ネットでチラ見したことはあるけど現物を見たことは無い。段違いの黒い箱を重ねたような形になっていて、軽いものなら上に物を載せられる的なことくらいしか分からない。

 ベッドの上に乗っかり、本棚全体が見えるように写真を撮ってモナミに送ってやった。

 ね、どこにもないでしょ。

―― ちゃんと写ってるでしょ、一番下の右っかわ! ――

 え? どこよ、どこ?

 すると写真に矢印がついて帰って来た。

 え、えーーーこれがプレステ2!?

 

 それはピンクの教科書程度の大きさのポート付きの物体だった。

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高校ライトノベル・フケモンGO・08・スマホのロック

2018-04-13 06:57:01 | 小説・2

フケモンGO 08 
 スマホのロック



 スマホのロックってかけてる?

 あたしは、面倒なんでかけていない。
 友だちは……ま。半分もいないかな? ネットで調べたら、やっぱ半分くらいの人がロックしていない。
 ま、めんどくさいってのが一番の理由なんだろうなあ……だってさ、お財布に鍵つけてる人なんかいないでしょ?
 友だちが一人きちんとロックしてて「アミ、あぶないよ!」って言われたけど「あ、うん」と曖昧な返事だけして、やっぱやらない。
 別の友だちがスマホ落っことしたことがあるんだけど。で、三日ほどして無事に出てきたんだけど、なんだか人にいじられたような気がして、いろんなアカウントやパスワードとかを、みんな変えてしまった。むろん、ロックをしていないから。
 その時は「やっぱ、ロックしなきゃ」と思ったんだけど、やっぱ、やらない。めんどくさいことは一日伸ばしになるのがあたしだ。


 人がやっていなきゃいいや。日本人的な不用心さなんだろうけど、そうなってしまう。

 夕べ、寝苦しくって目が覚めた。
 なんだかボソボソ声が聞こえるんで、半開きの目で見まわすと、声は机の上から聞こえてくる。

 あれ…………?

 机の上には、お父さんから巻き上げたスーパーソニコのフィギュアがある。
 そのフィギュアと同じくらいの大きさになった芳子さんと誠女親分。少し離れてネイサンと一馬中尉。
「あ、起こしちゃったわね」
 芳子さんが申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ううん、蒸し暑いから目が覚めたの」
 そう言って、あたしはエアコンの設定温度を下げた。もちろんリモコンで、横になったまま。
「あたしたちも涼みに出てきたの、スマホの中暑いからね」
 誠女親分はキャミソール一枚になり缶ビールを飲んでいる。
「あ、画像フォルダーの中に缶ビールがあったから失敬してる」
 よく見ると、お父さんの誕生日にプレゼントしようと取り込んでおいた外国製のビールだ。
「「…………」」
 ネイサンと一馬中尉は、なにやら机の上に在るものを読んでいる様子だ。

 ……あれは、宿題をやろうとオキッパにしておいたプリントだ。

「自爆テロがカミカゼとは心外だなあ……」

 一馬中尉がため息をついている。あれは社会の先生がくれたプリントだ、ヨーロッパで起こっているテロのニュースが載っている。いまいち興味がないんでホッタラカシにしてるやつだ。
「ああ、カミカゼは違うよな……ちゃんと日の丸付けた飛行機に爆弾抱えて、オレたち軍隊だけを攻撃してくるんだ。こんな卑怯なテロリストとは違うぜ」
 ネイサンが腕を組んで同調している。
「それに、正しくは『しんぷう攻撃』と読むんだ。日本の新聞なのに、こう書かれるのは……なんか外国の新聞の翻訳を読んでいるようだなあ」
 
 そうなんだ……あたしがつまんないと思ったものでも、ネイサンや一馬中尉が読むと全然印象ってか、想いが違うんだ。

「亜美」
「なんですか?」
 長い髪をアップにしながら誠女親分が話しかけてきた。
「よかったらスマホはロックかけないままにしておいてくれないかなあ」
「え……はい」
「ロックされると、こうやって涼みに出てきたりできないからね。その代りセキュリティーは請け負うから。いいでしょ?」
「は、はい」
「あら、なんだか涼しい風が……」
「さっき、エアコンの設定温度下げたから」
「そりゃどうも」「ありがとう」「すまない」「サンキュー」の声がした。

 あたしも、涼しさの中、いつのまにか眠りに落ちてしまった。

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