通学道中膝栗毛・42
『プレステ2』
学校って案外狭かったんだ。
ちかごろ、フト思うことがある。
終礼が終わって、部活もしないし、新学年になって親しいクラスメートも居ないわたしは、まっすぐ昇降口に向かう。
ま、学校出ても友だちいないんだけど。
あっという間に一階の昇降口。
下足箱を開けて靴を出す。間違ってもお手紙なんかは入っていない。期待もしていないんだけど、瞬間覗いてしまう。
ティッシュで鼻をかんだ後、一瞬ティッシュ見ない? 人に聞いたことないんでというか、あんまり人に聞くことでもないので、思ってるだけなんだけど、見ると思うんだよね。それに似ている。
ま、ちょっとした儀式なのかもね。
その儀式を終えてローファーに履き替えて、校門を出るのに一分かからないんだよ。
三年になって教室が三階から二階になったこともあるんだけど、やっぱ早い。
思うに……やっぱ夏鈴が居なくなったからだ。
教室からグズグズ喋っていたら、昇降口にたどり着くまで十分を超えることもある。
あーーー引きずってちゃだめだ!
ため息一つ吐いて校門……出たところでスマホが鳴る。
歩きスマホはご法度なので、葉桜の木陰に身を寄せて着信を見る。
友だちいないは訂正、友だちになったばかりのモナミのメッセだ。
―― ねー、栞の部屋にP2あるでしょ? ――
P2?
―― P2ってったらプレステ2に決まってるでしょ ――
プレステ2……んなのあったっけ?
―― 本棚の一番下 ――
え? え?
―― もー、自分の部屋でしょ ――
う、で、でも。
―― えと……帰ったら、一度確かめてみて! ――
なんだか、ちょっと怒っているような勢いに圧倒されて、芋清に寄ることもしないで家路についた。
モナミが言う通り本棚を見渡すがプレステ2は見当たらない。
ちなみにプレステ2はやったことがない。物心ついたころにはプレステ3があったので、わたし的にはプレステと言えば3のことなのだ。ネットでチラ見したことはあるけど現物を見たことは無い。段違いの黒い箱を重ねたような形になっていて、軽いものなら上に物を載せられる的なことくらいしか分からない。
ベッドの上に乗っかり、本棚全体が見えるように写真を撮ってモナミに送ってやった。
ね、どこにもないでしょ。
―― ちゃんと写ってるでしょ、一番下の右っかわ! ――
え? どこよ、どこ?
すると写真に矢印がついて帰って来た。
え、えーーーこれがプレステ2!?
それはピンクの教科書程度の大きさのポート付きの物体だった。