通学道中膝栗毛・47
アケミさんの頼みにわたしは笑顔で応えた。
はい、もちろん!
だって、アケミさんのお願いは「モナミお嬢様の良いお友だちでいてください」だったから。
アケミさんは、こうも付け加えた。
「簡単にやってらっしゃるようですが、いっぱいいっぱいなんです。栞さまに見ていただくために、お屋敷でも懸命にやっておられます」
モナミは、わたしが興味を持ったゲームを毎日数時間やってはスキルを維持しているらしい。
「こんな頑張りはいつまでも続きません、できれば、栞さまの世界に引き込んで新しい世界を見せて上げて下さい」
「えと、モナミ、学校とかは?」
「アメリカで二つ、イギリスで一つ大学を出ておられます」
「だ、大学!?」
「今は、お屋敷に居ながらお仕事をなさっておられます、IT、AI、片手間に為替やトレーダーのお仕事なども……えと……わたしをお作りになったのもモナミさま……だと言えばお分かりいただけるでしょうか」
そうだ、初めてモナミのお屋敷に行った時、アケミさんの首が取れて、それ直したのはモナミだったもんね。でも、なんだか凄すぎて「あ、そうなんだ」と間の抜けた相槌しか打てなかった。
「ねえ栞、リビングに初期のP3があったけど、使ってないの?」
ハンカチで手を拭きながらモナミが戻って来た。
「ああ、あれ壊れてるよ、もう映像も出ないし」
まだお父さんが居たころ、最初に買ったプレステ3だ。たしか60ギガしかなくって、ファンの音もうるさい。たわんだ棚の支えにいいもんだから捨てずに置いてある。
「じゃ、直してもいい?」
「うん、棚の支えさえなんとかなったら」
「よっしゃー!」
軽くジャンプして、モナミは作業に取り掛かった。こういう仕草は、丸っきりの子どもだ。
ポーチにホッタラカシにしていたプランターを真っ二つにして棚の支えにし、開けたプランターの正面は小物が入るように加工した。この作業が、わずかの十分。
P3は、通電していることを確認すると「お任せお任せ」とニコニコしながら分解、クリーニングをして基盤を取り出した。
「おし、じゃあ、アルミホイルでくるんで……」
「はは、これがお芋だったらオーブンで焼いて食べられるかもね」
「そだよ、これからオーブンにかける🎶」
「オ、オーブンにかけるの!?」
なんと、モナミはプレステ3の基盤をオーブンにぶち込んでしまった!