大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・44『シンを追っ払う』

2018-04-19 14:19:23 | 小説3

通学道中膝栗毛・44

『シンを追っ払う』 

 

 

 キーリカへの船の中でオオアカ屋に気づく。

 

 大きなリュックを背負った小太りのオジサンだ。

 以前かじったときは単なるモブだと思って、パスしていた。

 見知らぬ人には、なかなか声をかけられないわたしはゲームの中でもメインキャラ以外とは会話しない。モブキャラのことをNPCと略すことをモナミが教えてくれた。ノンプレイキャラクターの略で、本来はオンラインゲームでプレイヤーのアバターではなく、CPのアルゴリズムとかによって一定の動きと言葉しかないキャラ。ま、人の姿をしたオブジェクトのようなもの。

 FFXはオフラインだから、主役のティーダもユウナもNPCってばNPCなんだけど、ストーリーに絡んでこなければ、わたし的にはモブと変わらない。

 このオオアカ屋は行商のショップで、ここでポーションやらのアイテムを買っておかなければ、キーリカまでの最大イベントの『シンとの闘い』を乗り切れない。以前は、このクジラの化け物みたいなシンとの闘いを乗り切れなくってゲームそのものを投げ出してしまった。

 ま、こういう序盤戦で投げ出したゲームばかりで、ろくにコンプリートしたゲームは数えるほどしかない。

 ま、その程度のゲーマーとも呼べない、ライトユーザーであったわけです。

 今回は、モナミの指導もあって、オオアカ屋からポーションを買いまくってシンとのバトルに臨んだ。

 

「バッカじゃない!?」

 

 ポップコーンのバレルを抱えたまま、モナミが罵倒する。

「なんでよ、一所懸命戦ってるじゃない!」

 今夜は「シンをやっつける!」とメールをしたので、モナミはアケミさんの車でポップコーンのバレルを二つ抱えてやってきているのだ。

「シンのこけらは無限に出てくるよ! シンをやっつけなきゃ絶対クリアできないんだから!」

「シンなんてラスボスでしょ、こんな序盤戦で勝てるわけないじゃない!」

「勝てなくても、追っ払わなきゃ、いつまでたってもキーリカに着かないわよ!」

「だ、だって……この!この!この!このーーーー!!」

 

 本日二回目の全滅になってしまった。

 

「ワッカのシュートとルールーのファイアを撃ちまくって、ティーダとキマリはコケラ専門、ユウナはヒーラー専一!」

「わ、わかって……るんだけど、えと……キマリを引っ込めて……」

「ほら、ルールーのターム!」

「ファイアアアアアアアアアアアア!」

「あ、MPがないじゃん」

 MPがなければ魔法は使えない。

「信じらんない!? エーテルなしでバトルに突入!?」

「く……代わりに」

「万能薬使ってもMPは回復しないわよ! ど、どんくさい女やなああああ!」

「う、うっさい!」

 

 あやうく三度目の全滅かと思ったが、ルールーとユウナの活躍で、なんとかシンを追い払うことができた」

 

「や、やった…………」

「やったね、栞!」

 二人手を取り合ってキーリカへの無事な到着を祝福し合った。

「やだ、栞ったら汗びちゃだよ」

「モナミだって」

 

 久々に心地よい汗をかいた二人は、仲良く狭いうちのお風呂に入ったのでした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする