高校ライトノベル・フケモノGO 04
あ、ああー!
直観でヤバいものだと思った。
ピストルは、誰が見たってヤバイものなんだけど、もっと深い意味で。
だって、あたしのスマホに「フケモンGO」なんてふざけたアプリが入ってて、それに従って校庭の隅までいったらマジもんのピストルを見つけたなんて……人には言えない。
「せ、先生……助けて! 校庭の隅で足を……動けません!」
電話で椿本先生にかました。
「大丈夫、白瀬さん!?」
直ぐに先生は駆けつけてくれた。
「すみません、足をグネってしまって……」
「さ、先生の肩につかまって」
「あ、はい、すみません……ウ、グギ!」
わざとらしくならない感じで倒れこむ。で、その拍子にピストルを蹴り出す。
「え、なにこれ……?」
「「ピ、ピストル!!」」
狙い通り第一発見者は椿本先生になった。
都知事選挙や他の事件に隠れて目立たなかったけど、三日前に、学校から500メートルほど離れたところで暴力団の組長が撃たれて死ぬという事件があった。剛力誠というマッチョな名前だったので、事件だけは覚えていた。
犯人は、巧みに監視カメラを逃れて、手がかりは無かった。
で、もう分かったと思うんだけど、その組長を撃ったのが、このピストルというわけ。
犯人は、巧みに逃れて、外の道路から学校の校庭にピストルを投げ込んだの。
このピストルから足がついて、三日後に犯人はスピード逮捕。
第一発見者である先生は、警察やマスコミに追われ、可愛そうだけどライブに行くこともできなかった。
むろん、ピストルの発見は、生徒(って、あたしのこと)が校庭で怪我したのを救けたから。
「終わったー!」
夏期講習最後の日、校門を出て駅に向かっているとスマホが反応した。
「ん…………?」
画面には、白い夏物のスーツを着たキャリアっぽいオネーサンが映っている。むろん「フケモンGO」らしくアニメ風だけど。
「あなたは?」
「ありがとう、あなたのお蔭で犯人が捕まったわ。一言お礼が言いたくて」
「え……?」
「宇佐軌組(うさぎぐみ)組長……剛力誠よ」
え……てっきりマッチョなオッサンだと思っていた。
「そ、それに発見したのは、椿本先生です!」
「フフフ、白瀬さんが仕組んだことぐらいは分かってるわ。幽霊はなんでもお見通し……」
そう言って誠さんは、あたしのスマホの画面を、スッと指で触った。
「あ、ああー!」
画面の中のケージが、フワリと跳んで誠女親分を捕獲してしまった。
『いずれ、この恩返しはさせてもらうわね』
画面の中で芳子さんと並んだ誠女親分が、手を振りながら、にこやかに言った。