通学道中膝栗毛・40
『結果オーライ』
モナミで覚えてくれたら嬉しい。
ルイゼ、アケミ、コマツの三人(三台?)のロボットと共に見送ってくれて、カラリとアラレちゃんは言った。
「あ、そうだね。なんだか、イメージがまんまだから、あやうくアラレちゃんで覚えてしまうところだった」
「大久保萌奈美というのが戸籍上の名前、でも画数多すぎだからモナミ。ちおう番号の交換とかしといていいかなあ?」
「うん、もちろん」
スマホとパソコンのアドレスを交換して門を出ようとした。
「タロウとハナコも紹介したいんだけど」
「ロボット?」
「うちの番犬、慣れておいた方がいいし」
「モナミさま、二頭ともメンテですが」
「栞さまのことでしたら、あとで情報を並列化しておきますが」
「うん、犬の方は、それでいいんだけど、栞にも慣れておいてもらったほうがいいし」
「そうですか、それでは……」
アケミさんがこめかみに手をやる。通信するときの姿勢のようだ。
やがて、日本家屋の方からガチャガチャと音が近づいてきた。
「わ!?」
動きは普通の中型犬なんだけど、前進金属のスケルトン、でもってコアになってる頭は歯がむき出しで、正直おぞましい。
ワンワンワンワン!
スケルトンが犬がましく尻尾を振るのも、ちょっと不気味。
「今日は外皮のメンテなもので……日ごろは、ちゃんと毛皮を着ておりますので」
カチャカチャカチャ……。
二頭のスケルトンがプリンターのような音をさせながら口から紙を吐き出した。
「えと……」
「あら、新機能。名刺みたい、受け取ってあげて」
二頭はソレソレというふうに首振って促すので、恐る恐る受け取る。
「わ、ホログラム!?」
ちゃんと毛皮を装着した姿が3Dで浮かび上がる、二頭とも秋田犬のようで、尻尾がクルリンと巻いて立ち上がっているサマなど、今日からでも渋谷の駅前で銅像になれそうだ。
岡持ち持って芋清に戻ると、オイチャンもオバチャンもちょっと済まなさそうな顔をしている。
「楽しかった、夏鈴が居なくなって、ちょっぴり寂しかったけど、近所でいい友だちができたって感じ!」
そう答えると、二人とも正直にホッとした笑顔になる。
どうも、この出前は二人に仕込まれたような気がした。
でも、結果オーライ。
いそいそと家に帰ると、さっそくプレステ3のコントローラーの修理にかかるのであった。