大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・通学道中膝栗毛・39『足止めを食う・3』

2018-04-07 15:08:49 | 小説3

通学道中膝栗毛・39

『足止めを食う・2        

 

 

 モニターの一つに親近感が湧いた。

 

 プレステ3のメニュー画面になっているんだけど、ツールアイコンがチラチラと動きまくっている。

「あー、これ?」

 わたしの視線に気づいたアラレちゃんは、兎みたくジャンプしてコントローラーを三つもつかんだ。

「プレステ3が三つも?」

「あ、一個はVitaテレビ、コントローラーはP3と共通だから……えと、これだな」

 一つを選ぶとカチャカチャとやり出した。

「アニキに貸してたんだけどね、あいつタバコ吸うし部屋は汚いし、すぐ、こうなっちゃうんだよね」

「そうなると直らないでしょ?」

「直るよ、たいてい」

「え、そうなの!?」

 自分のプレステ3も同じ症状なので声が弾んでしまった。

「そういう反応する人には面白いかも、ちょっと直してみるね!」

 アラレちゃんは「んちゃ!」一声言うと、コントローラーをでんぐり返して五本あるネジをスルスル外した。

「開けちゃって大丈夫なの?」

「ダイジョ-ブダイジョーブ、ほらね、パカッと開けてバッテリーと基盤を出して……ほら、R3とL3のグリグリ……ここにホコリやらナンヤラが……」

「毛が絡みついてる」

「犬飼ってるから、冬毛が抜ける時期はこまめにブラシ掛けなきゃ……おーし」

 器用にホコリや抜け毛を取り去ると手製っぽいポンプを出す。

 

 シュッ シュッ

 

「自転車の空気入れみたいな音」

「みたいじゃなく自転車の空気入れ。ピンポイントでホコリ取るには最適なんだよ……でもって」

 こんどは極細ノズルの缶スプレー。

「油差すの?」

「まさか、これは接点復活スプレー。ホコリとか錆とかで鈍感になったスイッチとかを劇的に回復させんの」

 R3とL3のグリグリにほんの少しスプレーし、グリグリを馴染ませ、裏ブタをカチャ、ネジをキュッキュッ。

「ほら、直った!」

 モニターのメニュー画面は劇的に落ち着きを取り戻した。

「うわー、直った直った!」

「その感動の仕方は、あなたのとこにもP3があって、同じような症状で、こりゃコントローラーの買い直しだと思っていたんじゃない?」

「う、うん、当たり!」

「こういう電子機器ってのは意外に丈夫でね、ちょっとしたことで直せたりするんだ。この部屋の機材って、ほとんどジャンク品だったんだよ。このP3は……ほら」

 本体をひっくり返して、付けたままの値札を示してくれる。

「え、五百円!?」

「うん、クリーニングして、適当にいじってやると復活する。栞ちゃんもやってみな、使いさしだけど接点復活あげるから」

「いいの?」

「うん、満タンでも千円しない。ま、二百円分ほどしか残ってないし」

「ありがとう、チャレンジしてみる!」

 足止めを食ったけど、得難い収穫だ。

 

「再起動しました」

 

 声にビックリして振り返ると、首なしのルイゼがすぐそばに! あやうく気絶するところだ!

 

「ヘッドなしでも起動するようになったんだ!」

「PCのバックアップエンジンで動いています」

「あ、そっか、レストアするときにバックアップとったんだっけ」

 

 にこやかに邂逅を喜ぶ主従ってとこなんだけど、アラレちゃんと首なしメイドさんのツーショットは、やっぱシュールだ。

 

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高校ライトノベル・フケモンGO・02・予感がした

2018-04-07 06:35:12 | 小説5

高校ライトノベル・フケモンGO 02 
 予感がした


 補講を終えたばかりの椿本先生が、困った顔で教室に戻って来た。

 いつもだったら「どーしたんですか先生?」と、ノッチとか気のいい誰かが声を掛けるんだろう。
 でも、そこは夏休み中の進学補講。
 みんな帰ってから遊ぶことやバイトのことなんかに気を取られていて、気にかける者もいない。
 
 水が引くように、みんな帰ってしまい、ワケあってグズグズ残っているあたしは先生と二人っきりになってしまった。
「……ないわねえ……どこいったのかしら……」
 椿本先生は、教卓まわりを探し終え、生徒机の列の中に入り机の中や下も探し始めた。

「あの、なにか探してるんですか?」

 シカトするのも気まずいので声を掛けてしまった。
「わっ!」
 どうやらあたしの存在には気づいていなかったようで、先生は電気ショックを受けたように驚いた。
「びっくりした! 誰も居ないかと思ってたから!」
「あ、えと、先週掃除当番やらなかったんで、今日やるんです」
「あ、そうだった」

 とたんに、先生の目に隠せないサゲスミの色が浮かんだ。

 先週は放課後にカッ飛びの用事があったのでノッチに掃除当番を替わってもらったんだけど、頼まれたノッチはあっさり忘れてしまい、結果的にはあたしが掃除をサボったことになってしまった。事情を説明すればよかったんだけど、すっかり頼まれた事さえ忘れてしまっているノッチの顔を見ると、ことを荒立てるのも面倒で「サボりは来週一人でね」のお仕置きをあっさり受けていたんだ。
「で、なにを探してるんですか?」
 いつまでもサゲスミの目で見られてはかなわないので、話題を戻す。
「定型の茶封筒、中にライブのチケットが入ってるの」
 そう言いながら、次の机の中を探す先生。
 大事なチケットなんだろうけど、生徒の机の中を探すってどうなんだろう。先生は補講の間教壇からは下りなかったんだから。
 ま、考えても仕方ないので、掃除用具ロッカーから箒を出して掃除にかかる。
 真ん中の列を掃いている時に先生とすれ違う。先生は必死で、あたしは眼中にはないようだ。
 窓側の最後の机を探し終えて「ハーーーーーー」盛大なため息をついて教室を出て行った。
 本当は机の上を雑巾がけしなきゃいけないんだけど、アホ臭いのでおしまいにする。
「さてと……」
 箒を治そうとして掃除用具ロッカーを再び開ける。

 オワーーーーー!!

 後ろに二メートルほどぶっ飛んで尻餅をついてしまった。
「オッス!」
 なんと掃除用具ロッカーの中に、あの那比気芳子がニコニコ顔で立っている!
「な、なによあんた!?」
「あ、だからフケモンGO第一番目のキャラ那比気芳子! アミでいいわよ!」
 那比気芳子は無駄に元気だ。
「わたしってチュートリアル兼ねてるから、さっそくやってみよう! スマホ出して!」
 勢いに呑まれて素直にスマホを出してしまう。
「画面を見て。学校の見取り図が出てるでしょう」
「え、あ、うん」
「?のアイコンがピョンピョン撥ねてるでしょ」
 指摘の通り本館二階の真ん中で?マークが陽気に撥ねている。

 画面を見ながら二階に……ガラガラと戸を開ける……?のアイコンはすぐ間近……画面の下にケージと指マークが現れ「ここ打てワンワン」になる。素直に指ではじくとケージは?マークに飛んでいき確保。?マークは茶封筒に変わった。

「あ、ここだ!」
 あたしは積み上げたノートの下になっている茶封筒を発見した。
「あ、白瀬さん?」
 後ろから椿本先生の声がした。

「先生、これですね!………え?」

 あたしはスマホのナビに夢中になっていて、職員室の先生の机の前まで来ていることに気づかなかった。

 あたしはフケモンGOから抜け出せなくなる予感がした。

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