大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・002『二年ぶり!』

2019-04-03 19:25:28 | ノベル

・002

二年ぶり!さくら          

 

 

 わたしは意気込んでた!

 

 なんちゅうても、今日からはここの家の子ぉになる。

 むろん戸籍はちゃうけど、おなじ酒井の苗字で暮らしていくんや。いとこのテイ兄ちゃんもコトハちゃんとも兄妹姉妹同然で暮らしていくんや。自慢の笑顔で「よろしく!」とかまさならあかん。

 玄関わきの鏡をチラ見して笑顔のチェック。

 過不足のない笑顔、と、思たら、目尻に緊張感。頬っぺたも微妙に強張ってるし。

 目をゴシゴシ、頬っぺたをペシペシ。

「ただいま~」

 実家だけあって、お母さんは気楽にズンズン入っていく。

「ちょ、待っ……」

 急いで靴を脱いで、上がり框に足を掛け、あかんあかん、靴! 行儀よう靴先を外に向けて揃えて、お母さんの靴よりも壁際に置く。「よろしく!」とかますにしても、この辺のお行儀と遠慮は気にかけとかならあかん。

「いやあ、歌ちゃん、ごめんなさい、お迎えにも行かなくってえ!」

「いえいえ、そんな……」

 奥の方では、おばちゃんとお母さんのご挨拶が始まってる。後れを取ったらあかん!

 ワ!!

 気がせいてしもて、こけてしもた!

 わたしの先祖はお猿さんいうことを思い知らされる。ジワ~っと尾てい骨から痛みが上ってきてジンワリと涙が滲む。

 ササッと尾てい骨を労わって、廊下の先のリビングへ。

「なんか音がしたけど、さくらちゃん大丈夫?」

「アハハ、だいじょうぶだいじょうぶ」

 挨拶もぶっとんで、ヘラヘラと照れ笑い。緊張はほぐれたけど、不細工なことこの上ない。

「今日は、おばちゃん一人なのよね」

 すまなさそうに、お茶を淹れるおばちゃん。

「専念寺さんのご住職が入院されて、旦那は(伯父さんのこと)手助けに出てるし、お父さん(お祖父ちゃん)と諦一は檀家参りに出ちゃって、詩(ことは)は部活だし、ごめんなさいね」

「いいですいいです、なんかお手伝いしましょか?」

「いいわよ、ゆっくりして。荷物とかは、それぞれ二人の部屋に運んであるから、あとで見てちょうだい」

「すいません、お姉さんの手を煩わせて」

「いいえいいえ、男たちがやってくれたから。三人とも、歌ちゃんが帰って来るんで、ちょっとハイなんですよ」

「ああ、アハハ、期待されたら辛いなあ~」

「さくらちゃん、部屋先に見とく? 足りないものがあったら、買って来るって旦那言ってたから、そうしよ、帰ってくる前に電話したらホームセンター寄ってきてくれるから。さ、いこ!」

 サザエさんのように思い立ったらスグの人なので、お気持ちに応えて付いていく。

「ほら、こっちがさくらちゃんの部屋」

「え、こ、こっち?」

 おばちゃんは、予想していた相部屋するはずのコトハちゃんの部屋ではなく、向かいの部屋を開けた。

「使ってもらった方がいいの、閉め切ってると陰気臭くなるでしょ」

 そこは、二階の客間ということになっていたはずや。

「二つも客間つかうことってないしね、コトハも花ちゃんも年頃だしね」

 コトハちゃんと同室と言うのは、かすかな楽しみやったので、ちょっと寂しいんだけど、おばちゃんの好意なんだ「あ、ありがとう、とっても嬉しい!」。よそ行きの喜び方をしてしまう。

 お母さんは、むかしの自分の部屋を使うらしい。

 

 足りないものなんか思いつかなかったので、リビングに戻ってお茶にする。おばちゃんが途中までやっていたお茶の用意はお母さんがやって、おばちゃんは恐縮してる。まだ、ちょっとよそ行きやけど、大人同士、なんとかやっていくやろ。

 

「おお、さくら、来たかあ!」

 玄関の靴で分かったんだろう、お祖父ちゃんは、ドシドシとリビングに入ってくると、いきなりハグしたかと思うと、頬っぺたを合わせてスリスリする。

「あ、ちょ、あ……」

 嫌だとも言えず、為されるままになっておく。お祖父ちゃんにとっては、いつまでも可愛いくて可哀そうな外孫のまま。

 やっと解放されて、ソファーに座ると尾てい骨に響く。

「なんや、涙ぐんでからに……そうかそうか、さくらも中学生や、困ったことがあったら、なんでもお祖父ちゃんに言うんやでぇ」

 今度は、髪の毛をワシャワシャされる。

 お祖父ちゃんが衣(ころも)を脱いで寛いだころに、伯父さんとテイ兄ちゃんが帰って来る。

 テイ兄ちゃん見て、ビックリした。衣姿のテイ兄ちゃんは、二年前のグータラな大学生と違て、立派な坊主。

「お、おう、さくら、今日からやってんな」

 ドギマギするとこは昔のまんま。

 そんで、もっとビックリしたんは、部活から帰って来たコトハちゃんを見た時やった……。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら   この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌     さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観    さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一    さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩     さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保    さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・19『たこ焼暴れ食い』

2019-04-03 06:15:29 | 小説6

ひょいと自転車に乗って・19 『たこ焼暴れ食い』     
 

 

 大阪府立千塚高校(ちづかこうこう)っていうんだ。
 

 いうっていうのは、あの中河内中学校の元になった高校。

 年末にあれだけ通っていたのに知らなかった。 中河内中学校の近所じゃ、いまでも千塚高校のほうが通りがいいらしい。
 で、千塚高校は、お知り合いになったばかりの輝さんの母校でもある。
 

「ホー……ホー……」

 マウスを操作しながら輝さんはホーホーばかり言ってる。 我が家に来るのは三回目の輝さんだけど、ヤードの戦車に感心したり、お母さんやお父さんと話し込んでしまって、なかなか話が出来なかった。 で、今日はやっと、わたしの部屋に来てもらった。そして、千塚高校のあれこれをマップを見ながら話している。

「敷地とか校舎とかは変わってないのねえ、この外階段のとこで、よくタバコ喫ってたんだよね~」

「え、輝さんがですか?」

「アハハ、悪たれの男子らがね~」

「えと、ここです、この体育館の横っちょで最初に見かけたんです」

「やっぱし……」

 そう言うと、輝さんは椅子の背もたれに背中を預けて腕と足を組んだ。  

 お母さんたちと話している時は、きちんとした大人なんだけど、わたしの部屋に入ってくると、ものの五分ほどで高校生のアネゴみたくなってしまった。ちなみに、京ちゃんも居るんだけど、京ちゃんはお使いに出ている。

「体育館の下にはお墓があったんよ」 「あ、方形周溝墓とか言うんですよね」

「ミッチャン詳しいのね!」

「あ、えと、たまたまです」

 心合寺山古墳でソンナワケさんに教えてもらったとは言えない。

「学校建てる前に調査とかはしたらしいねんけどね……」

 言葉を濁すと、椅子に座ったままクルリと回転。向き直った時には胡座なんかになっていて、牢名主の貫録になって来た。

「買ってきました~(^^♪」
 

 京ちゃんがたこ焼の匂いとともに戻って来た。

「ご苦労! お、半分はお母さんに……」

「入れ違いで出かけられて、三人であがってくださいということですねん」

「あ、そうなんだ」  

 そうだ、お母さんは知り合いが入院したのでお見舞いに行くって言ってたんだ。お父さんもシゲさんも仕事だし、いま家にはわたしたちしか居ないんだ。

「よーし、じゃ、気合い入れてたこ焼きをやっつけよう!」
 

 で、以下は二千円分のたこ焼きをやっつけながらの輝さんのお話し。
 

 輝さんは、こう見えて、在学中は茶道部だった。

 ある日、一番で活動場所の作法室に行くと、輝さんより早く来ていた一年生が、顔色を変えて飛び出してきた。

「ちょ、ちょっと、どないしたんよ!?」  

 パニクッテいる一年生の肩を掴んで問いただした。

「へ、部屋に、ざ、ざ、座敷童がああああああ!」  

 それだけ言うと、一年生は輝さんを振り切って、女子とは思えない速さで逃げて行った。

「も~、なにをチャラいことを……」

 怖いものなしの河内少女であった輝さんは、そのままガラリと戸を開けると、ズイズイと作法室に乗り込んだ。

「も~、誰もおらへんやんか、あのビビりは」

 二間ある和室にも、控えの部屋にも人影はなかった。

「そんで、とりあえずはお稽古の用意をしよと思てね……ちょ、手ぇ止まってる、食べることに集中しよ」

 輝さんは、たこ焼にはこだわりがあるようで、冷めてから食べるのはもちろんレンジで温め直すのも邪道。

 三人はハフハフやりながら、暴れ食いをしたのでした。
 

 そして、お話は、ますます佳境に入ってくるのでした……。
 

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・19(年の初めのエロイムエッサイム)

2019-04-03 06:05:56 | 小説4

秘録エロイムエッサイム・19

 (年の初めのエロイムエッサイム)
 

 

 真由のヘブンリーアーティストは年末の二日で危なくなった。

 人が集まりすぎるのだ。
 

 

 大晦日は、比較的に広い上野公園だけでやったが、三万人の人が集まり、他のアーティストが出来ないばかりか、通行の妨げになるというので、警察から申し入れがあったのである。  あの山田プロディユーサーのオジイチャンも、地下鉄の男子高校生も観に来てくれていたが、警察の言うことももっともなので、その場で山田プロディユーサーと話して決めた。

「他のアーティストさんや通行の妨げになるので、今日は、これで終わりにさせていただきます。その代り、うちの大江戸放送で流させていただきます……」

 オーディエンスの人たちから残念なため息が、いっせいに漏れた。ため息も三万人分になると、まるで上野の山全体がため息をついたようだ。

「むろん、ライブもなんとかいたします。お客様と直接交流していただけるような機会を、できるだけ早く大江戸放送が責任をもって行いますので、よろしくお願いいたします」

「みなさん、ごめんなさい。そしてありがとうございます。朝倉真由を、たった二日で好きになっていただいて、本当にありがとうです。急なことなので、あたしもビックリ、シャックリです。ヒック!」

 真由は、ほんとうにシャックリが出てしまった。これでオーディエンスの人たちが和んだ。

「ヒック! そういうわけなので、ここは解散します。ご通行のみなさん。他のアーティストのみなさん、ほんとに、ヒック! ごめんなさい。すみませんでした。ヒック!」

 「がんばれ、ビックリシャックリ!」

 オーディエンスの中から応援の声がして、大晦日は、なんとか無事に乗り越えた。
 

 それからが大変だった。
 

 急きょ、元日の放送をやりくりし、番組の中や間に真由の歌を入れる工夫がされた。そして、スタジオからではあるが、動画サイトでライブで流し、ネットでリクエストされた曲を次々に歌っていった。間のMCも曲のアナウンサーと二人でこなし、延々六時間もぶっちぎりでやり遂げた。
 

「おい、視聴率の幅が、こんなに揺れてるぞ……」

 紅白の後始末をしていたNHKのエライサンたちが首を捻った。いつも歌手によって時間ごとの視聴率は上下するのだが、その関連性もなかった。むろん裏番組の『ガキの使い』との関連性もなかった。

 NHKのコンピューターは優秀である。 二十分ほどで結論が出た。紅白の視聴率が落ちた時間は、大江戸テレビが、番組をやりくりして、真由の曲を流した時間帯と重なることが分かった。

「恐るべき新人が出てきたものだなあ……」

 紅白の総合ディレクターは、その結果を見て、ため息をついた。

「特に男性に人気があるようです。昨日の白組優勝も、男性視聴者を持っていかれた気配があります」

「来年は、この子を呼ばなきゃならないかもしれないな……」

 統計係から結果を聞かされたNHKのエライサンたちは頷きあった。
 

 

「いつの間に、こんなブログが出来てんの!?」

 元日の昼に帰宅した真由はパソコンを点けてびっくりした。『真由のビックリシャックリ』というタイトルで、ブログが出来ていて、アクセスが十万を超えていた。
 

「あたし。がんばって前に出なきゃ!」
 

 振り返ると、炬燵でミカンの皮を剥きながらウズメさんが、こともなげに言った。

「ヘブンリーアーティストのつもりだったんだけど……」

「あたしも、そのつもりだったんだけどね。真由、あんた元々才能っちゅうか、魅力があるのよ。芸能の神さまが言うんだからほんとだよ」

「でも、いいのかなあ……なんだか乗せられた気もするんだけど……」

「これが、回りまわって日本を救うことになるんだ」

 清明さんが、ウズメさんの口を借りて喋った。

「と、いうことで、がんばろう」
 

 ウズメさんが、きれいに剥いたミカンを真由に差し出した。なんだか白雪姫に毒りんごを渡す魔女のように見えた。

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高校ライトノベル・時かける少女・57『耳なし芳一か!?』

2019-04-03 05:57:10 | 時かける少女
時かける少女・56 
『耳なし芳一か!?』        

  
 こないだ亡くなったばかりのひなのが、何冊も文学書を積み上げて……一心不乱に読んでいた。
 
「ひなの!」  
 そう声を掛けると、ひなのの姿は、フッと消えた。まるで幽霊だ。
 浄土真宗においては幽霊は存在しない。死んだら、善人も悪人もみんな往生して極楽にいく。まあ、その是非はともかく、光奈子には、ひなのが見えてしまったのである。
 
「それはね、心理的な残像よ」
 
 気にしながら家に帰り、玄関を開けようとすると、後ろから声がかけられた。
「美保……」
 振り返ると、美保姿のアミダさんが立っていた。
「着替えたら、本堂に来て」  
 そう言って、さっさと消えてしまった。
「なによ、心理的残像って」
「光奈子、須弥壇のお明かし(ろうそく)点けてくれる」
「いいわよ、そろそろ日没偈(にちもつげ)の時間だから」
「その、お明かしをじっと見て……そして内陣の暗いとこに目を移して!」
 「あ……」
「どう、ろうそくの火が、まだ見えてるでしょ」
「ああ、これが残像ね」
「そう、じっと見ていないと残らないの」
「人間にも、こういうことがあるってこと?」
「そう、日頃から光奈子は、ひなののことを気に掛けていた……ライバルとしてね」
「え、ただの友だちよ。むろん良い意味だけど」
 「お父さんの、お仕込みね。邪心を持って人を見るべからず」
「でも……」
「ひなのが居たから、楽しかったし、がんばれもした」
 「う、うん……」
 「簡単に言えばライバル。だから他の人より、ひなののことはよく見ていた。それにね、空間や時間だって、人や事件を記憶する……残像として残すことがあるの。ひなのは、よく図書室にも通っていた」
「……だから見えたのか。ただの幻かあ」
 光奈子は、お明かしに火を点けたマッチをもてあました。
「人の残像は、時に意思を持っている。だから、ときどき残像なのに生きてる人間に影響することがあるの」
「ひなのが?」
「キザな言い方だけど、ひなのは光奈子の中では、まだ生きている」
 それは、何となく分かる。火葬場で、ひなのの骨拾いをしたとき、その灰のような遺骨にひなのを感じることはできなかった。すぐ後ろにいるような気がしたものだ。
「じゃ、またね……」
 美保が行きかけた。
「ねえ、いつまでその女子高生のナリでいるつもり?」
「当分。気に入っちゃったから」
「アミダさんて、そういう趣味?」
「この格好だから、友だち言葉で話せるんじゃない。でしょ?」
「ん、まあ、そうだけど、そこまでカワイクする必要あんの?」
「あなたたちの努力目標になってあげてるの。ウフ、じゃあね」
 正直、ふざけたアミダさまだと思った。
 
「わあ~、こんなの覚えられないよ!」
 
 五回目のトチリで、碧が音を上げた。 台詞が多いのである。50分近い芝居の90%が、碧演ずるところの、クララの台詞である。
「紙に書いてみようよ」  
 光奈子は、思わず口にした。心の底で、ひなのが言ったような気がした。
 「これ、全部!?」
「うん。だって作者は、何もないとこから、それ書いたんだよ」
 
 で、みなみと美香子に手伝ってもらって、交代で音読し、碧が、一人で紙に書き写した。
「こうすると、覚えにくいところが、分かってくるよね……」
 最初はプータレていた碧だが、それなりに意義を感じ始めていた。
「これを、コピーして、部屋中に貼っとくの。そうしたら覚えられるから」
 で、明くる日稽古場に行くと、碧が、こう言った。
「あ、光奈子の体中に台詞が書いてある!」
「あたしは耳なし芳一か!?」
  確かに、残像効果はあるようだ……。
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