ノラ バーチャルからの旅立ち・4

時 百年後
所 関西州と名を改めた大阪
登場人物
好子 十七歳くらい
ロボット うだつの上がらない青年風
まり子 好子の友人
所長 ロボットアーカイブスの女性所長
里香子 アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ アシスタントディレクター
好子: その電柱の脇に積んであるダミーのゴミ袋なんか、中味までちゃんとその時代のゴミが入ってんのよ。 はみ出してる割り箸とか、カップ麺のカップとか、このためにわざわざ作ったんだって。
ロボ: ソコマデシテ残サナケレバナラナイモノ?
好子: ぬくもりがいるのよ人間には……。
ロボ: ヌクモリ?
好子: たとえば……使い古したカバンを捨てずに残したり。
こわれた人形や、片方しかないピアスをとっといたりするじゃない。
そういうものって一見無駄なんだけど、自分のアイデンティティーを持ち続けるためには必要なのよ。
ロボ: ソウナンダ。デモ、ココ、モウジキ閉鎖サレルンダヨネ。
好子: うん、去年の事業仕分けで決まっちゃった。
ロボ: デモ、イボジ、キレジ、ダッコウ、ダッコウ……(壊れたレコードのようにバグるロボ。好子、ロボの頭をたたき回復)ハナヂ、アカジ、赤字ナンダロ、ココ。
好子: 赤字でも、残さなきゃならないものだってあるよ。
ロボ: ソウナノカイ?
好子: ロボットだってそうでしょ。ほんとうは歩いたり、しゃべったり、それにふさわしい機能さえあればいいのに、ことさら人間風に皮膚をつけたり髪の毛つけたりして、疑似感情まで持たせてアンドロイドにしたじゃん。それは、その方がぬくもりがあって安心……どうしたの?
ロボ、身をよじるようなバグ、キューキューと悲しげな音がする。
ロボ: コレジャ、ヌクモリモ安心モ感ジナイヨネ(自分のボディーを示す)
好子: そんなことないよ。そんなこと!
ロボ: ジョーダン、ジョーダン。チョットスネテミセタダケ。
好子: もう!
ロボ: チョット、ソンナニ速ク歩ケナイッテバ。
好子: だって、ロボットでしょ!
ロボ: ポンコツナノ。
好子: ポンコツだってロボットでしょ!
ロボ: アノネ……。
好子: わたし、すねたり、弱音はいたりするやつだいっきらい! 人でもロボットでも!
ロボ: 好子ォ……。
好子: くやしかったら、わたしを追いこしてみなさいよ!(駆けだす)
ロボ: チョ、チョット、好子!
好子: ポンコツの意気地なしロボット!
ロボ: 好子!
好子: あいた!(転んで膝をすりむく)
ロボ: 一人で起きられる?
好子: 子どもじゃないわよ……アタタ。
ロボ: ジャ、先イソゴウカ。
好子: ちょっと、そんなに早く歩けないってば……。
ロボ: ハハハ、ドウダ、サッキトサカサマ。
好子: ハハハ、ほんとだ。ここ、地道のままだから、石ころなんかむきだしなのよね。
ロボ: 道のセイニシテル。
好子: じゃ、なんのせい?
ロボ: 重心ガアガッタセイジャナイ?
好子: 重心……?
ロボ: 足の裏ノ単位面積アタリニカカル重量ノ増加トイウカ……。
好子: 失礼ね。太ってなんかないわよ。わたしってば……このごろ、なんでもないとこでつまづいたりするのよね。
ロボ: それって……。
好子: ヘヘ、わたしって悩める乙女だもんね。
ロボ: 悩メルオカメ……。
好子: こいつ!
ロボ: 好子怒ッタ!