大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・015『パンダ橋で待つ』

2019-04-10 13:49:33 | 小説

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・015

『パンダ橋で待つ語り手・マヂカ     「パンダ橋」の画像検索結果

 

 

 それしかなかったのか?

 

 エスカレーターを上がってきたケルベロスを見て、思わず言ってしまった。

「急ぎだから仕方ないでしょ!」

 人が見たら、待ち合わせの場所にアイドルグループのステージ衣装めいたコスを着てきた友だちを咎めているように見えただろう。おまけに、わたしへの第一声がまるっきり女の子だ。それにルックスが反則的に可愛すぎる。乃木坂46の全員のいいとこどりをしてAKB48で割ったような顔をしているのだ。

 神田明神に恭順の意を示して、ブリンダと善行競争をする羽目になったのだが、自信が無いのだ。

 目付け役のケルベロスに相談したくて――すぐに来い!――と呼びだした。

 話が長くなりそうなので本来の黒犬の姿はNGだ。首輪も付けない犬が長時間女子高生にまとわりついていては、通報されてしまう。ケルベロスは上野の西郷さんに憑依すると言うが、西郷さんに長時間向き合っている女子高生と言うのも不気味だ。それで、上野のパンダ橋の上で約束したら、この格好なのだ。

「東京のあれこれを調べていて、ちょうどサブカルチャーにさしかかったところだったのよ」

「せめて、その喋り方……」

「変えたら……オッサンの声になってしまう

 アイドルのように可愛い少女がいきなりオッサンの声になったので、傍を通ったOL風が、ブッタマゲテいる(^_^;)

「わ、分かった、女の声でいい(-_-;)」

「では、そのように♡」

「って、おまえ、それはアニメ声……それも霞ヶ丘詩羽……まあ、いい……冴えない魔法少女の育て方ってか」

「焦っちゃいけないと思うわ、倫理くん」

「腕をゾゾっと撫でるのやめてくれる、それに倫理くんじゃないし、マヂカ、あるいは渡辺真智香だし」

「ごめんなさい、ちょっと、サブカルにはまり過ぎたみたいね」

「七十二年ぶりの復活は、あくまで休息が目的なのだ。ずっと渡辺真智香でやっていくつもりだった。魔法なんて一切使わずに、数十年は人間として生きていくつもりだった。ちょっとしたミスで人間ではないことがバレそうになり、調理研を作るとかイレギュラーなことをやってしまったが、それもこれも、ひたすら人間としての安寧のためなのだ。日暮里駅の階段でブリンダと出会った時も、最初は分からなかったが、接近した時のヤツの悪戯めいた殺気で分かった。分かった瞬間ブラを取られそうになったので、反射的にヤツのパンツに手を掛けてしまった。あとは、おまえも知っての通り、階段の上と下で見得を切り合いになった。魔法少女の性というか、反射神経の為せる技というかで、あいつと改めて戦おうなどと思っての事ではないのだ」

「分からないでもないわ。この前も、お昼にボーっとお弁当を食べていたら、いつの間にか魔法少女の食べ方(お箸を使わないで、食べ物の方から口に入って来る)してしまって、それをユリに見られて調理研究部を作る羽目になったんだもの倫理君」

「そうなんだ。そうなんだけど、わたし倫理くんじゃないし! 冴えカノじゃないし!」

「ああ、この声だめ。チェンジしなくちゃ……とにかく、時間は巻き戻せないんだから、前向きに頑張るしかないじゃないですか、お兄さん、がんばれ! 頑張ってこそ桐乃のお兄さんです! できなきゃ通報しますからね!」

「今度は『オレイモ』のあやせになってるし!」

「仕方がない、魔界の力を持ってクィーンオブナイトメアを召喚し、直接心に語り掛けるしかないわね」

「それは黒猫だし……」

「爆ぜろリアル! 弾けろシナプス!」

「『中二病でも恋がしたい!』の小鳥遊六花になってるし!」

――魔法少女が魔力を発揮すると、魔波が発せられる。魔波とは電波のようなもので、魔力のある者なら、相当の距離があっても探知されてしまう。日暮里で発した魔波は神田明神が知るところとなり、ついさっき、ブリンダ共々呼び出されて釘を刺されてしまったのだ。それが制御できていない。これは、とりもなおさず、七十余年前の戦時の感覚が抜け切れていないことの現れ、時間をかけて直していくしかあるまい。及ばずながらわたしも協力していこう。これからは、ギリギリまでお前の傍にいるから、おまえも励め――

「ケルベロス、おまえは使い魔だ。恒常的にこちらにいると魔界に戻れなくなるぞ」

――心配するな、おまえの数百倍も魔界にいた身だ。加減は分かっている――

「すまん、面倒をかける」

――橋の真ん中で見つめ合っていると注目され過ぎるな、こちらへ……――

「ああ……」

 ケルベロスは山手線を見下ろす橋の欄干に、わたしを誘った。二人して欄干に頬杖ついていれば、とりあえずの格好は付く。

 あれ、似たような二人組が……?

「ブ、ブリンダ!?」

「「お、おまえたち!?」」

 

 それは、わたしたち同様にタソガレていたブリンダと、モテカワ美少女に擬態していた使い魔のガーゴイルだった。

 

 

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高校ライトノベル・JUN STORIES・1《男? それとも、女?》

2019-04-10 07:06:12 | 小説4

JUN STORIES・1

《男? それとも、女?》
 

 

「あ、女の子なんだ……」

 その一言で純はクラブへの入部をためらった。

――調査書に書くとき、やっぱクラブ名があった方がいいな――三者懇談で担任に言われたので、あたしはほどほどのクラブがいいだろうと演劇部を訪ねた。

 演劇部は、先日の県大会で二等賞である優秀賞を獲っていた。で、まあ上り坂のクラブがいいだろうと、演劇部を訪ねたが、顔を見るなり部長の三年生に言われてしまった。

 確かに演劇部は女子ばかりだ。男子部員も一人いたが、女装が趣味と噂のあるC組の歌川貴美だった。

 こいつもややこしい。貴美と書いて「たかみ」と読む。で、れっきとした男子で、貴美だと言われているネットの女装写真を見ると、あたしよりも数倍可愛い。 間近で貴美を見て、噂は本物だと思った。
「今日は、優秀賞のビデオ見て反省会やるから。田部さん(あたしの苗字)は、まあ、県下二位のお芝居をゆっくり観てちょうだいよ」
 部長が自信ありげにプロジェクターに写した芝居は、正直退屈だった。こんなもので二位が獲れるなんて、わが県の高校演劇ってどうなってるんだ?

 一つ驚いたのは、歌川貴美が女性役で出て、なんの違和感もないこと。

 幕間交流で「実は男なんです」と言った時の観客席のどよめき。で、貴美は個人演技賞を獲っていた。  

 そのことだけじゃないんだけど「これでドーヨ!」って、クラブ全体にある自己陶酔が嫌だった。だいいち舞台には5人の役者が出ている。照明や音響などのスタッフを考えれば、最低でも9人は居なきゃ、この芝居はできないだろうと思った。

「4人は臨時部員よ」

 なるほど、稽古場にしている視聴覚室には純を含めて5人しかいない。で、その一人が貴美だ。純は、偏見かもしれないと思ったが、貴美が、自分の女装の演技に恍惚となっていることにキショクワルサを感じた。

 速攻、演劇部への入部は止めにした。

 幼稚園からこっち、時々男と間違われることには慣れていたが、今日ほどの屈辱感はなかった。 ためしにネットで調べてみた。日本の女性で一番多い名前は和子。そのあとに幸子、恵子、洋子とあって、幸子の後に「ジュン」という男女どちらにも点けられる名前とあった。

「どうして、純なんて名前つけたのよ!?」
「ああ、男女どちらでもいける名前ってことで、生まれる前から決めてた」

 お父さんは、カウチに横になりテレビを見ながら答えた。

「もう……」

  プ~~~~ 

 お父さんはオナラで返事した。

 数日後、半端な付き合い方をしていた二年の神崎君に思い切って言った。

「ねえ、もうお互いの関係はっきりしたいんだけど」 「ううん……今のままじゃダメ?」 「なんか半端でさ。あたし、他のカレとかつくってもいいわけ?」

 他のカレの予定などなかったが、ハッタリをかましてみた。

「それは……純の自由じゃん」

 逃げを打ちやがった。

 あくる日、食堂でランチ食べていると、後ろに神埼と、ヨッコが座ったのが分かった。

「……でもさ、神崎さんて、純のカレじゃないですか」 「ああいう男だか女だか分かんないのは、苦手でさ。もう、別れる寸前」

 振り向きざま、神崎をはり倒した。

「名前なんか、理由にすんなよ!」

 神崎は、ひっくり返ったランチをかぶったまま、言った。

「名前じゃなくて……お前の、こういうとこ!」

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高校ライトノベル・時かける少女・64『スタートラック・4』

2019-04-10 06:20:36 | 時かける少女

時かける少女・64 

『スタートラック・4』         

 

 

  火星は近日点距離なので早く着くとは思っていたが、2時間で着いたのでびっくりした。
 

 並の反重力船なら5時間余り。そのつもりでミナコは、このファルコンZを探検しようと思っていた。

 とにかく、この船は怪しい。

  船内いっぱいに積まれたガラクタ。400年前の軽自動車。誠実そうだが、なにか隠している様子のコスモスとバルス。ハンベ(ハンドベルト型情報端末)にポチから送られてきた膨大な情報。そして船長室で見つけたH系ガイノイド。
 

 ハンベは、ミナコが一番知りたがっている圧縮情報から解凍していく。

 なんと、最初に出てきたのは、例のH系ガイノイド。思わず顔が赤くなる。身長・体重・3サイズから始まり、マーク船長がセッティングした、その……H系のスペック。もういい! そう思うのだが、ミナコの深層心理が知りたがっているので、情報は具体的なイメージでミナコを刺激する。
 

「なに赤い顔してんだ?」

 コクピットの補助席から動けずにいるミナコを、船長が冷やかす。

「なんでも!」 「ポチ、大事なショーのオペレーターなんだ。イタズラはするなよ」 「ワン!」 「ち、都合が悪くなると犬になりやがる」
 

 最後にガイノイドの名前がミナホと分かって、むかついた。自分と一字違いの名前。そう言えばスペックの最初に出てきた身長・体重・3サイズはミナコのそれといっしょであった。合成骨格も95%ミナコと同じである。
 ミナコは決めた。このバイトのあいだ、船長の2メートル以内には近づかないでおこう!
 

「その心配ならいらん。おれはデジタルショーの間は、他の仕事をやってるから」

 見透かされたように言われ、ミナコは息が止まりそうになった。

「ボス、間もなく火星の周回軌道に入ります」

 「もう、着いたの!?」

「こいつは並のジャンクシップとちゃうねん……しかし、バルス。デリケートにチューンしすぎやな。大気圏突入時のショックが大きそうや!」

「その分、早く着きます」

「半周分早く着いたって仕方ないやろが!」

「先々のために、いろいろ試してるんです」

「ち、嫌なこと思い出させてくれるやおまへんか……ミナコ、揺れるぞ。舌を噛むなよ!」

「……気絶してます、船長」
 

 気づくと、一番マシなキャビンに寝かされていた。
 

「ここは……」

「マースキャピタル宇宙港よ。よかった、宇宙酔いにもなっていないようね」

 コスモスが、ずっと付いていてくれたようだ。

「船長、ミナコちゃんが目覚めました……ええ、大丈夫です。いま船長が来るわ」

 ミナコは、目を三角にしてブランケットを目の下まで引き寄せた。

「嫌われたもんやなあ。ほなら、お互いさっさと仕事にかかろか。おれ、2メートル以内には近づけないんで。コスモス、あとはよろしく」

 そう言うと、船長はコクピットに戻っていった。

「さあ、ミナコちゃん。わたしたちも行きましょうか」
 

 火星の地球化は、六分の仕上がりといったところである。地球並みの大気があるのは赤道から南北に20度ぐらいまで。海は凹部を利用して、やっと地中海程度の広さしかなく、まだ大気循環させるほどの力は無い。水は地球からの輸入と、地中の岩石に含まれるものや、南北の極にある二酸化炭素の氷に水素を反応させ合成したものをパイプで赤道方面に送っている。ここ10年でやっと自給できる水が輸入を上回ろうとしている。 

 そんな火星の中心がマースキャピタルで、人口は1000万人ほどである。火星移住が始まって150年。ほんの5年前に地球から独立。
 その独立5周年行事の一つが、このデジタルアイドルショー……だということは、ファルコンZが飛び立つのを見送りながらコスモスが教えてくれた。
 

「え、そんなビッグイベントだったの!?」

「そうよ、それだけのギャラは、支度金名目で振り込んであるでしょ」

「え……3の下にゼロが……6個も付いてる!」

「じゃ、行きましょう。あと5時間でマースアリ-ナが、2万人の観客で一杯になるわ」

――こいつら、いったい……!?――

 喜びとも怒りともつかない感情で、体が震えるミナコであった。  

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