八十神(やそがみ)と言っても八十人の神さまというわけではありません。たくさんの神さまという意味です。
で、八十神はオオナムチ(オオクニヌシ)の兄たちです。
悪い神さまたちで、末っ子のオオナムチに大きな袋(自分たちの荷物)を持たせて因幡の海岸を急いでおりました。
なんで急いでいたかと言うと、因幡のヤガミヒメという女の子を口説きにいくためです。
「アニキ、因幡にヤガミって可愛い子がいるってさ、いっちょ突撃してみねーか?」
「お、まぶい女の話か! よし、そーいうのは機会均等の精神だぜ、兄弟くり出して行こうじゃねーか!」
「じゃ、手荷物はオオナムチに持たせてやろーぜ!」
こんな感じですなあ、
八十神たちが因幡の海岸にさしかかると、皮を剥かれて赤裸になった兎がウンウン唸って転がっておりました。
「なんで、こいつ赤裸?」
「いっちょ、からかってやろーぜ」
「おい、ウサギ、その赤裸は辛いだろ。俺たちゃ心優しい八十神さまたちだ。治療法を教えてやるぜ」
「あ、ありがとう、このままじゃ身動きもできず、この海岸で衰弱死するところでした。その、治療法とは?」
「それは簡単なことだ」
「「「「「「「「「「「「「「「「そーそー」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「海水に浸かってな、寝っ転がってお日様で乾かせば元にもどるぜ」
「「「「「「「「「「「「「「「「そーだそーだ」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ウサギは言われた通りに海に浸かって、八十神たちは笑いをこらえながらヤガミヒメの家を目指します。
「こ。これは……図られたか!?」
海水に浸かってお日様で乾かしたウサギは地獄の苦しみです。
日光で乾いた皮はツッパラかって、あちこちで裂けてしまいます。そこに海水の塩分が浸みこみます。
「く、くそー! い、痛い~痛いよー! いっそ殺せえええ!」
そこにオオクニヌシが大きな袋を背負って現れます。
「いったい、どうしたんだ!?」
「は、はい……じつはかくかくしかじか……なんですよ~(´;ω;`)」
「……それは可哀そうに、わたしが、本当の治し方を教えてあげよう」
「そういう、あなたは?」
「オオナムチっていうんだ」
「オオナムチ…………」
「あ、おまえ、いま漢字に変換しただろ!?」
「え、あ、いえいえ、とんでもない!」
ウサギの顔には「大な無知」の四文字が点滅している。
「まあ、いい。いいかい、急いできれいな水で洗って蒲の穂を敷き散らした上でゴロゴロ転がって花粉を身にまぶすんだ」
「えと……なんか、そのまま油で揚げたらウサギのフライになりそうな(^_^;)」
「大丈夫だって。おまえ……やっぱり漢字に変換しただろ?」
「いえいえ」
「仕方のない奴だ、治るまで付き合ってやるから、それでいいか?」
「あ、ま、それなら(〃´∪`〃)」
かくして、オオナムチ付き添いのもとで言われた通りにやってみると、完全に元の白兎に回復したのでした!
「ありがとうございます、やっぱ、オオナムチさんの言うことは正しかったです! 感謝感激ですううう!!」
「それは、よかった。じゃ、そろそろ行くよ」
「あ、いましばらくお待ちください!」
オオナムチを引き留めたウサギは、ある予言をするのでした……。