大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・013『兵員食堂の八宝菜ランチ』

2019-04-26 06:44:28 | ノベル2

高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・013
『兵員食堂の八宝菜ランチ』  
         



 サクラとテルミはしげしげとランチを見つめている。

 時空戦艦カワチは海自や旧海軍同様に八時間ずつの三直制だ。
 深夜から午前の三直を終え、二直で自由時間のテルミと兵員食堂にやってきたサクラだ。

 昨日からレプリケーターが休止になり、烹炊所で作られるアナログ飯に切り替わったのだ。
 新任の航海長が烹炊長を兼務し、補給科の乗員を使って日に五食の艦内食を作っている。

「すごいわよ、きくらげの厚みが微妙に違う」
「うん、ご飯粒が最大で15粒も違いがある」
「なると巻きの斜め切りも最大1・5度の違いを付けてある」
「なんか、ワクワクするわね」

 300名の乗員はガイノイドであるが、皮膚や脂肪層は生体組織でできており、人間同様に食事で栄養補給しなければ衰えてしまう。
 勤務に合わせて日に五回の食事が出されるが、レプリケーターが合成したもので、同じメニューであればコピ-した写真のように同じであった。
 だから、同じ八宝菜ランチでも一つ一つ異なっている。
「ん、これなんだろ?」
 しゃくったレンゲの中に柔らかいグミのようなのが入っていた。
「……半溶状態の片栗粉の固まり」
 サクラが成分分析すると、テルミは感動してしまった。
「……すごい、食感と味加減が違って、なんだか得した気分になる!」
「豚肉の脂が多いとこって濃厚な旨味ねえ!」
 一口、一すくいずつ感動する二人である。
 いや、食堂のあちこちで感動やら感嘆の小声が上がっている。

「さっさと食べなさいよ! 冷めてから食べたら不味くなるでしょーが!」

 田中航海長が烹炊長の前掛けをして怒った。
「でも、航海長、出てくる糧食がみんな微妙に違うので、とっても新鮮なんです!」
「夕べのすき焼き定食も並列化の意味がないくらい違いがあって、とても興味深いです!」
「それが食事というものさ。三百人いたら、三百通りの味わいがあっていいものよ。単なるエネルギー補給じゃないからね」
「長い航海、変化がなくちゃ続かないよ……あんたたち、微妙に顔が違うね」
 乗員のガイノイドたちは同一のロットなので、スペックも外見もみんな同じなのだ。
「艦長付き従員になったので、ヘッドだけ換装したんです。生身の艦長のお世話のため個性化です」
「千早副長の指示ね」
「はい」
「これから、他の乗員もゆっくり個性が出てくるわよ。糧食も同じように作って微妙に違うようにね、一昨日まで居た学食じゃ違いが出ないように苦労したけどね、カレーなんか肉は別にのっけて数を合わせたりね。でも肉も一個一個違うから、高校生らしく小さいとか固いとかの不満が出てたけどね」
「まだ、地球の周回軌道からは出ないんですね」
「あ、うん。おかげで航海科はほっといて烹炊に専念できるからありがたいけどね」
 航海長はモニターに映る地球を見ながら腕組みをした。

 男っぽい姿勢だけど、これが航海長のリラックスした時の姿勢だとサクラは思う。

 二重顎で、バストウェストヒップの差が5センチもないオバサン体形だけど、アナライズすると若いころはとてもキュートな女性だったと知れたテルミ。
――その情報は並列化しないほうがいいわよ――
 サクラから思念が届く。
――オッケー、了解――

 あ、わたしたちって並列化をオフにできるんだ。

 八宝菜とは別の感動をしたテルミであった……。    
 
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高校ライトノベル・時かける少女・80『銀河連邦大使・1』

2019-04-26 06:33:11 | 時かける少女
時かける少女・80 
『銀河連邦大使・1』  
        




☆………銀河連邦大使

「嫌なやつと出会いそうやな……」

 チャートを見ながらマーク船長が呟いた。
「誰、嫌なやつって?」
「銀河連邦のオフィシャルシップ。無視してくれたらええねんけどな。バルス、不自然やない航路変更はでけへんかか?」
「1パーセクしか離れてません。航路変更は不自然です」
「無視してくれよな。こっちはイイ子にしてるさかいに……」

 直後、大使船がモニターに映し出された。緑の船体に連邦のマークが描かれている。

「カメラを強制指向させられました」
「ご挨拶で済んだら、ええんやけど……」
 やがて、モニターに絶世の美女が現れた。
「こんにちは、マーク船長。大使のアルルカンです。情報交換させていただければありがたいんですけど」
「敬意を持って……でも、ボロ船ですので、お越し頂くのは気が引けます」
「スキャンしているので、そちらの様子は分かっています。歴戦の勇者の船らしい風格です。ただ、手狭なようなので、私一人でお伺いします。いかがでしょう?」
「大使お一人でですか」
「ヤボな、ガードや秘書は連れて行きません。あと0・5パーセクで、そちらに行けます。よろしく」
「心より歓迎いたします」

 そこで、いったんモニターは切れた。

「切れましたね」
「あ きれましたかもな。みんな、ドレスアップしてこい」
 みんな交代で着替えに行った。
「ミナコのも用意してあるから、着替えてくれ。ポチもな」
「めんどくさいなあ」
 そう言いながら、ポチもキャビンに向かった。
 やがて、みんなタキシードに似たボディスーツに着替えた。体の線がピッチリ出るのでミナコはちょっと恥ずかしかった。
「でも、大使ってきれいな人なんだ……」
「あれは、擬態や。赴く星によって、外交儀礼上替えてるそうやけど、オレはあいつの個人的趣味やと思てる」
「本来の姿は?」
「解放されたら教えたる。予備知識を持つとミナコは態度に出そう……」

 また、モニターに大使が現れた。

「ただ今より、そちらに移ります。タラップの横に現れますのでよろしく」
「お待ち申し上げております」
 全員がタラップに注目する中、大使が現れた。モニターに映る倍ほど美しかった。
「こんにちは、みなさん。連邦大使のアルルカンです。ベータ星からの葬儀の帰りなので、喪服で失礼します」
 大使は帽子を被れば、まるでメーテルのようだった。長いブロンドの髪と切れ長の黒い瞳が印象的だ。
「いっそう艶やかになられましたな、大使」
「ありがとう船長。でも擬態だから……あなたにはオリジナルを見られてるから、ちょっと恥ずかしいですね」
「航海日誌、ダウンロードされますか?」
「いいえ、直接船から話を聞きます」
 大使は、ハンベから直接ラインを伸ばし、船のCPUの端末に繋いだ。
「……そう、苦労なさったのね。マクダラと戦って、クリミアに……この情報は戦歴だけコピーさせていただきます。惜別の星……また墓標が増えていますね……三丁目じゃ、ホホ、いいことなさったわね……コスモス、あなた体を奪われたのね……」
「ええ、でもバックアップで、復元してもらいましたから」
「かわいそうなコスモス!」
 大使は、コスモスをハグした。とても悪い人には見えない。
「ありがとうございます、大使」
「ロイド保護法の改正を連邦に願ってみるわ。もっとも、連邦といっても、まだまだ名ばかり。少なくとも地球での地位向上には努力します」
 それから、大使は再び船との会話を再開した。

「船も、はっきりした目的地を知らないのね……クライアントの情報も無いわ」
「そういう契約なので」
「……このお二人を、私の船にご招待してもいいかしら」

 大使は、ミナコとミナホに目を付けた……。
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高校ライトノベル・せやさかい・011『桜の若葉が見たいなあ』

2019-04-25 14:33:30 | ノベル

せやさかい・011

『桜の若葉が見たいなあ』 

 

 

 体育の時間が自習になった。

 

 体育は苦手なんで、正直嬉しい。

 教室でノンビリしてられるのか思たら「体操服に着替えてグラウンド集合! やて」。体育委員でもある瀬田が教壇の横で不貞腐れたように言う。

 着替えてグラウンドに行くと、学年主任の春日先生が立ってた。

「宇賀先生がご出張なんで、この時間は草むしりをやる。草むしるとこはマーカーで印ががつけてある。どこが当たるかはくじ引きや」

 そう言うと、先生は、どこから持ってきたのか本格的なおみくじを引かせた。

「終わったら報告にくること。ちゃんとチェックしてるからサボったらあかんで」

 そして、順番にくじを引いて、軍手とゴミ袋を渡される。

「ゴミ袋に、なにか付いてますけど?」

「お御籤や。楽しみが合った方がハリがあるやろ」

 おみくじを開いてみると――中吉―土に近きところに福あり――と書いてある。

 他には――中吉―草むしりに幸あり――とか、――中吉―草むしっても髪むしるな――とか、なんや変なんばっかり。

「中吉いうのは、中学生になって吉いうことや」

 どうも、先生が作ったダジャレくじのよう。本格的なおみくじの紙に書いたあるから、一瞬ほんまもんかと思たんですけど。

 

 ニ十分ほどで草むしりを終えると、グラウンドで自由時間。

 

 ボールを貸してもろてバレ-ボールやらサッカーをやる子もおったけど、さっきも言うた通り体育は苦手。

 留美ちゃんといっしょに先生の横で日向ぼっこ。

 話題が部活の事になったんで頼子さんのことを聞いてみる。

「うん、なかなかの奴やで。部活の条件を三人にすんのん学校に認めさせよったもんな」

 先生は楽しそうに話してくれはった。

「頼子は先生やらクラスメートと仲良しになるとこから始めよった。それから文芸部。五人集めなら部活にはでけへんねんけどな、頼子はこう言いよった『先生の人数って、六十年前と比べて、どのくらいなんですか?』」

 校長先生の話を思い出した。ほら、昔は体育館のフロアに収まらんくらい生徒がおったって。

「『今の倍くらいはいてたやろなあ、教師の数は生徒数に比例して配当されるからなあ』と答えてやった。するとな『部活の要件になってる五人というのも比例で考えなきゃいけないんじゃないでしょうか? 五人と言うのは体育館に入りきらないほど生徒がいた時代の基準ですから』。とっさに反論でけへん。『ま、そやなあ』と答えてしまう」

 そうやって、あっさりと五人を三人にすることを認めさせた。えらい人やなあ……。

 

「桜の若葉が見たいなあ」

 頼子さんがけったいなことを言う。

 入部して四日目。留美ちゃんが得意な読書の話を振って、頼子さんが答える。すると、話題を広げて文学に興味の薄いわたしでも入っていける話に膨らませてくれる。

 今も、留美ちゃんが西行法師の――願わくば 花の下にて春死なん その如月の望月のころ――なんちゅう難しい和歌の話をしたとこから膨らんだ。

「そだ、『八重桜』ってあだ名の意味知ってる? たしか漱石だったかの小説に出てくるんだよ」

「八重桜ですか?」

 う~ん……乏しい知識を振り絞ってみる。で「八重桜ってどんなんですか?」と正直に聞き返す。留美ちゃんがコロコロと笑う。この子の笑いには悪意が無いんで、言うたわたしも笑う。

「ほら、中庭の、あそこにある、遅咲きの」

 頼子さんが指差したところに普通の桜よりも濃いピンクの桜があった。

「八重桜って、花が開く前に葉っぱが開いちゃうんだよ」

 なるほど、花と葉っぱがゴージャスにワッサカと茂っている。

「花……葉っぱが先に……」

 留美ちゃんが真剣に八重桜を見つめる。

「分かりました! 出っ歯のことです!」

「ピンポンピンポン! 大正解!」

「え、なんで?」

 あたし一人が分からへん。

「ハナ(花と鼻)よりも前にハ(葉と歯)が出るからよ!」

「え? え?」

 数秒遅れて分かった――鼻より前に歯が出てる――ちゅうダジャレですわ!

 そこから「桜の若葉が見たいなあ」という話題になっていったというわけなのだ。

 

 それで、我が家の門の前に三人で立っている。

 

 ほら、留美ちゃんのことを榊原さんと呼んでいたころに、彼女が感激した桜を探しに行ったら、うちの境内にある桜だったってことがあったでしょ!

「うわ~スゴイ!」

 一目見て感動する頼子さん。留美ちゃんは、自分の感動が伝わったことに感動し、葉桜もいいもんだということを理解した。

「さくらちゃんちって、お寺さんだったんだ!」

 桜に感動しすぎて、お寺とわたしんちが結びつくのに時間がかかる頼子さん。

「如来寺って言うんだね!」

 留美ちゃんも改めて感動。

「あ、山号(さんごう)が学校と同じだ!」

 うちのお寺は『安泰山 如来寺』という。

「あんたいさん にょらいじ?」

 ちょっと違う。安泰山と書いて――あんたさん――と読む。

「あんたさんって読むんだ!」

 頼子さんの好奇心が感動と共に膨らんでいく。こういうときの頼子さんは不思議の国のアリスになってしまうようだ。

「あら、さくらちゃん、お友だち?」

 ちょうどコトハちゃんが帰ってきて、門前で大感動のあたしらを見つけた。

「あ、おんなじ文芸部の夕陽丘先輩と部員の榊原さん。こちら、従姉の詩(ことは)ちゃんです」

 

 ……………………!!

 

 黒髪と金髪の美少女が互いに感動した瞬間でありました。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
  • 榊原留美        さくらの同級生
  • 夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
  • 瀬田と田中       クラスメート
  • 菅井先生        担任
  • 春日先生        学年主任
  • 米屋のお婆ちゃん
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高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・5

2019-04-25 08:14:01 | 戯曲
連載戯曲ノラ 
バーチャルからの旅立ち・5

  
 
 
※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。   

 そばを自動車が通る音(マイクで里香子とチャコ)

ロボ: レトロナタイプダッタネ。
好子: 日産フェアレディーZロードスター。超クラッシックカー。レプリカだけどね。
ロボ: チガウヨ。
好子: え?
ロボ: 助手席ニ乗ッテタアンドロイド……型オチダケド、イイ男ップリ。
好子: そうだった?
ロボ: 赤イブルゾンガ粋ダッタ。
好子: うそ。赤いチョッキ。ブルゾンは運転してた女の人。
ロボ: フフ、シッカリ見テタンダ。
好子: たいしたアンドロイドじゃないわよ。
 型オチだし。だいいち目鼻立ち整いすぎて、あれじゃ、冗談のひとつも言えないよ。
ロボ: 好子はイイ子ダネ。
好子: ロボ……。
ロボ: コノ先イクト、ロボットアーカイブス……ダネ。
好子: ……知ってたんだ。
ロボ: 新型ロボット、アンドロイドノ展示販売。オヨビ、中古ロボット、アンドロイドノ引キ取リト解体リサイクル。
好子: 言うな!
ロボ: イソゴウ。
好子: 待って、もうちょっと待って……。
ロボ: 風邪ヒクヨ……ハックション!(ティッシュを出し、大きな音をさせて鼻をかむ)
好子: ロボくん、芸がこまかい。
ロボ: オッ、オイルガモレテル(ティッシュを見る)サ、オイルガキレナイウチニイコウ。

 歩き出す二人。例の二人、マイクの地声で電車と遮断機の音。
 この間、ロボと好子は互いに声高に言いあっているが、電車の轟音で聞こえない。やがて、踏切が開く。


ロボ: ナニ言ッテタノ?
好子: ……べつに。ロボクンは?
ロボ: ベツニ……デモ、少シ伝ワッタヨウナ気ガスル。
好子: そう……?
ロボ: ココヲ渡ッテ、スコシ行クト、コノ町モオシマイダネ。
好子: あ、今度は下りだ。

 再び、警報機が鳴り、電車が通過する。再び怒鳴るように会話する二人。電車通り過ぎ、踏切が開く。肩で息をする二人。

好子: ……とってもパワフルな会話だったわね。
ロボ: モッカイヤル?
好子: よーし!
ロボ: ヨーシ!
好子: 三回もやったらバカでしょ。
ロボ: ズコ(ずっこける)

 踏切を渡る二人。二三歩進んでどちらともなく立ち止まる。

好子: この街から出たくない。
ロボ: イツマデモ、居ルワケニハイカナイヨ。
好子: (ポッドを取り出し)ロボくんのパルスってダサイんだよね。
 古典で習ったスナップの「宇宙に一つだけの花」みたいなんだよね。
ロボ: ボク二世代前ノ、アンドロイドトモイエナイロボットダカラ。コンナ、アームバンドミタイナパーソナリティーモジュ-ル。
好子: このモジュール、耳をあてるとかすかだけど聞こえるんだよね。
 ポッドでモニターしたのより、ずっと……(ロボのモジュ-ルに耳をあてている)
ロボ: ヤサシイ?
好子: ダサイ。
ロボ: ズコ(ずっこける)
好子: 小さいころから聞いてるから、もう耳についちゃった。
 わたしって、かわいすぎるから。これくらいのダサイパルスで中和すると、ちょうどいいんだよね(n*´ω`*n)  
二人: ハハハ……。
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高校ライトノベル・時かける少女・79『スタートラック・19』

2019-04-25 06:29:47 | 時かける少女
時かける少女・79
『スタートラック・19』     
       




☆………コスモス星・2


「コスモンド抽出開始。アブストラクター(抽出機)インサート」

 軽い衝撃があった。不安な顔をしていたんだろう、マーク船長が説明してくれた。
「大昔の注射針刺すようなもんや。コスモンドっちゅう鉱石が、この船のエネルギーでな。そのコスモンドをミクロン単位のサイズに砕いて、船の燃料庫に備蓄するんや」
「アブストラクターには、何重にもフィルターが付いているから、ソウルなんかは、入ってこないわ」
 ミナホが答える。
「ソウル?」
「アブストラクトチェック」
「オールグリーン」
「スタート」
 微かに音がしたが、それもすぐに消えた。作業は、とても静かに流れている。
「ソウルというのは、このコスモス星の精神のようなもの」
「星の精神?」
 星に精神があると、話が飛躍したので、ミナコは思わず声をあげた。
「そうや、この星には心がある。えらい寂しがり屋でな。この星に降りた船の多くが逃がしてもらわれへん。せやから、パッシブは全て切る。関心があると思われるさかいな」
「船長、重量変化に微妙な変化があります」
「……僅かに減っとるなあ。船体の熱膨張との差し引きは?」
「まあ、誤差の範囲です」
 船長は安心した顔になったが、ミナコは不安だった。
「どのくらい、違うんですか?」
「1グラムちょっとやな……気いになるか?」
「なんだか胸騒ぎ……」

 それは、突然やってきた。

「アブストラクター停止……あ、再起動しました」
「船長、重量マイナス47キロ。異常です!」
「47キロ……コスモスのキャビンの閉鎖解除。モニターに出せ!」
「やられました、コスモスさんがいません!」
「星に取り込まれたか!?」
「解析……最初の1グラム減少は、コスモスさんを分子分解したときのものです。今アブストラクターが緊急停止したときに、分子分解したコスモスさんを一気に取り込んだようです」
 
「そんなことって……」

 ミナコは愕然とした。そして、ミナコの家に迎えに来てくれてきてくれたときから、今までのコスモスの思い出が、懐かしさと共に蘇ってきた。
「全員、コスモスに関するメモリーをブロックせえ!」
「あ……!」
 ミナコは怖気が走った。自分の指先が透け始めてきた。
「ミナコ、火星のコンサート記録のチェックと解析をしろ! 観客一人一人のデータまでな!」
「なんで、今!」
「言うこと聞け!」
 船長は、古典的なヘッドマウントアナライザーをミナコに付けさせ、火星ツアーのデータバンクに直結させた。奔流となってデータがミナコの頭に流れ込んできた。
「あと何分かかる」
「アブストラクト、80%。あと一分です!」
「アブストラクター緊急停止!」
「アブストラクターから、何かが上がってきます。圧縮情報のようです。フィルターが破られます!」
「ミナコ、目えつぶれ!」

 コックピットにコスモスの3D映像が現れた。ニコニコ笑いかけながら、みんなに近寄ってくる。

「ミナコちゃん……」
 ホログラムは実体化して、ミナコのヘッドマウントアナライザーに手を掛けた。
「アブストラクト完了」
「アブストラクター引き抜きました!」
「緊急発進!」

 ファルコンZは、磁石が同極同士で反発しあうような早さで、コスモス星を離れた。
 実体化していたコスモスは3Dに戻り、星の重力圏を離れる頃には消えてしまった。

「ミナコ、ヘッドマウント外してええぞ」

「ああ、頭パンクするかと思った」
 ミナコは、解析情報を振り払うかのように頭を振った。
 
「コスモスの情報、各自インストール。バルス、コスモスのバックアップデータ復元」
「船長、コスモスさんは?」
「再生する。ちょっと時間はかかるけどな」
「船長、コスモスの外見は以前のままでいいですね」
「ああ、あれが完成形やさかいな」

 そして、十時間ほどして、コスモスがキャビンから現れた。

「ああ、よく寝た。船長、異常はなかったですか?」
「全て順調。次いくぞ」

 ファルコンZは、次の宇宙を目指した。
 
 コスモスは……考えてはいけない気がして、ミナコはコンソールに目を落とした……。
 
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・012『航海長は田中素子』

2019-04-25 06:15:31 | ノベル2
時空戦艦カワチ・012
『航海長は田中素子』                      



 転送パレットに立ったオバチャンは意外に冷静だ。

「あ……なんでわたしが?」

 カワチに転送されてきたことは理解できているようだが、なぜ自分なのかが分かっていないようだ。
「田中素子さん、あなたが航海長です」
「え……副長の千早中佐……そちらが艦長の小林大佐……なんで知ってるんやろわたし?」
「ちょっと常識では理解できない状況なので、転送時に一定の情報はインプットしてあります」
「あ、そ……でも、これから仕込みせなあかんよって」
 学食の営業は十二時からだが、仕込みは九時にはかからないと間に合わない。
「とうぶん、その必要はないですよ」
「あ……えと……そうやってんね」

 オバチャンは転送室のモニターに目を向けた。
 モニターには、大阪城の上空で炸裂直後の火球になったX国のミサイルが映っている。
 その眼下にはストップモーションのまま車や人波が豆粒のようになって大阪の街が広がっている。

「イージスもパック3も効かへんかってんね……Jアラートでは逃げてる暇もあれへんもんね」

 オバチャンはシートに腰掛けるとモニターを操作した。
 ミサイルが、このまま炸裂しきった時の被害状況がシュミレートされていく、炸裂直後の死者は40万人をさし示し、カワチのAIが予想被害を3Dの映像で見せている。
 いろんな予想被害状況を確認してオバチャンはため息をついた。
「わたしでよろしいんでしょうか、護衛艦に乗ってたころは給養員でご飯ばっかり作ってましたから航海のことなんかは分かりませんけども」
「ノスタルジックなスタイルですけど、カワチは時空戦艦です。並の航海術は通用しません。田中さんの潜在的な能力が航海長の任務に向いているんです」

「分かった! 少しでも希望が持てる道を選ぶしかないんよね」

「はい」
「よろしくお願いします、田中さん」
「ところで、この艦の糧食調理はどないなってますのん?」
 やっぱり本職の給養のことが気にかかるようだ。
「艦内の食堂にレプリケーターが備わっています」
「レプリケーター?」
「自分も初耳だな」
「えと、分子合成でご飯を作る機械です。電子レンジに似ていて、十秒足らずで料理を合成します」
「すごい、一回見せてもらえますか!?」

 千早の案内で兵員食堂に向かう。

「これがレプリケーターです」
 食堂に入って左側の壁面にレプリケーターが25台埋め込まれている。
 一度に25人、1分間で百人以上の食事をまかなえる。
「食べたいものを言えば用意してくれます」
「ほー」
「へー」
 間の抜けた感嘆のあと、それぞれ寿司の上握りとカレーライスをオーダーした。
 十秒後チンと鳴って、寿司とカレーが出てきた。
「これは便利だ!」
 喜一は、寿司桶を持ったまま中トロをつまむ。
「……うん、これはミシュランの三ツ星がとれるぞ!」
「どれどれ……」
 田中航海長はテーブルに座って、カレーをしゃくった。
「一口いいかい?」
「あ、どうぞ」
「……う、美味い! 専門店以上の味だ!」
「ですね……五つ星がとれるかも」
「気に入って頂いてなによりです」
 千早もニコニコと気をよくした。

「でも、あきませんなあ」

 航海長が意外の一言。
「だめですか?」
「これは艦内食とはちゃいます。艦長、わたしに糧食調理もやらせてください!」

  田中素子航海長は烹炊長を兼ねることになった。
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高校ライトノベル・時かける少女・78『スタートラック・18コスモス星・1・』

2019-04-24 06:12:02 | ノベル2
時かける少女・78 
『スタートラック・18・コスモス星・1』         

 
 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になってしまった……目覚めると、今度は西暦2369年であった。ファルコン・Zでの旅、今度は「コスモス星」だった。


☆………コスモス星・1

 三丁目星を出て一週間になる。コスモスに元気がなくなってきた。

「コスモス、ちょっと寝てるか?」
「コスモスさん、具合悪いんですか?」
「……寝ても無駄かもしれません」
「大丈夫や、シールド張っとくよってに」
「シールドも無駄かもしれません……」
「起きてたら確実に危ないで」
「ですよね……では失礼します」

 コスモスは、ため息一つつくと、キャビンの一つに入っていった。

「バルス、コスモスのキャビンを封鎖しとけ」
「了解……封鎖」
 一階下のキャビンブロックで、重々しくキャビンを封鎖する音がした。むかし検索して知った火葬場の二重の扉をしめる音に似ていた。
「ミナホ、コスモスの変わりにシートについてくれるか」
「はい、準備はしておきました」
「次の星まではオートやさかい、特別にすることは無いと思うねんけどな」
「一応、コスモスさんのスキルとメモリーはコピーしてあります」
「いつの間に?」
「船長が、悩み始めてから……」
「見透かされてたか。ほな二日前からやな」
「いいえ、五日前から……」
「そんな前からか……」
「船長は、自覚なさっている以上に、クルーの心配してるんですよ」
「さいでっか……」
「言っておきますけど、コスモスさんが過去にやった判断や行動はとれますけど、それを超える事態には対応できないかも……」

 マーク船長は沈黙してしまった。

「どうしても寄らなきゃならない星なの?」
 沈黙を破って、ミナコが咎めるように聞いた。
「次のコスモス星で、エネルギーを補充しないと、目的地に着けねえんだよ」
 ポチが、人の言葉で喋った。
「じゃ、その目的地ってのは……?」
「分かんねんだよ。1000光年や、そこいらは飛べるけど、おいらの予感も、船長の勘も、もっと先だって言っている」
「この先、800光年は、燃料を補給する星はあらへんよってな」
「じゃ、なぜコスモスさん、閉じこめちゃうの?」
「あいつの素材はコスモス星の鉱石からでけてる。着いたら出て行って帰ってけえへんからな」
「コスモス星の勢力圏に入ります」
「シールド、全周展開」
 バルスがシールドをマックスに張った。

「シールド言うのんは、外からの影響は防げるけど、中から出て行くのは阻止でけへんよってにな」
「中から?」
「見ろよ、ミナコ。コスモス星の部分拡大だ」
 ポチがアゴをしゃくった。モニターには、何百隻という宇宙船が着地しているのが分かった。中には、相当古い船もいて、半ば朽ち果てていた。
「十分後周回軌道に入ります」
「よし、全パッシブ閉鎖、各自のCPUも全てのアクセスを切れ、みなこ、ハンベも落としとけ……」
「え、ハンベまで……」
「これだけの人数や、必要もないやろ」
 ハンベはハンドベルト型携帯端末で、昔のスパコンの十倍の能力がある。この時代の人間にはケ-タイのような必需品である。ミナコは不承不承ハンベを外した。

「コスモスの機能はスリープしてるやろな?」
「動力ごと落としています。再起動には丸一日はかかりますね」
 周回軌道に入り、ファルコン・Zの着陸に向けてのチェックが行われる。みなパッシブ閉鎖しているので、チェックはいちいち口頭で行われた。

 そして、ファルコン・Zは着陸態勢に入った……。
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・011『リクルート始め』

2019-04-24 05:50:55 | ノベル2
時空戦艦カワチ・011
『リクルート始め』              




 赤坂城本丸物見櫓の梯子段を下りると……足裏の感触はチーク材の甲板。

 前に司令塔、後ろに第一煙突、左右両舷は二番三番の主砲に挟まれて谷底のようになっている。

――そうか、カワチの最上甲板に繋がっていたのか――

 夢から覚めたような感じがしたが、司令塔上の艦橋を見上げると艦長の感覚が戻ってきた。
「艦長もどられました」
 戦闘艦橋に入ると当直士官が声を上げる。こちらを向く者は誰も居ない。
 艦橋に居る要員は見張りや操舵などそれぞれの役割があり、役割が義務付けている機器や方向を見ているので、たとえ艦長であろうと礼を返されることはない。海自でも旧海軍でも時空戦艦でも変わりはないようだ。喜一は艦の空気の中に自然に収まってしまう。
「後姿は区別がつかんなあ」
 カワチの乗員は全て同じタイプのガイノイド、載っている首以外に個性は無い。
「失礼しました、各員のIDを表示します」
 当直が言うと全員の頭の上にデジタルIDが現れた。なんだか友子が凝っていたオンラインいゲームの世界を思い浮かべる。

「お帰りなさい艦長、これからリクルートにかかります」

 遅れてきた千早が元のセーラー服で現れる。
 千早のデフォルトはこの姿のようだ。他の乗員のように役割は無いようだし、頭の上にIDも付いていない。
「地球から呼ぶのかい?」
「もちろん、それも大阪、旧分国の河内からリクルートします」
「どのようにやるのかね?」
「六人リクルートします、航海長・砲雷長・機関長・船務長・補給長・飛行長でいかがかと」
「海自の艦内編成なんだね」
「はい、馴染みのある方がいいでしょう」
「それと、副長の配置はないのかな」
「副長ですか」
「正成における恩地左近のような存在がいると嬉しんだけど」
「こんな感じですか?」

 指を鳴らすと千早の首が恩地左近になった。

 艦橋の乗員が一斉に笑い出す。当直士官が見たものが瞬時に並列化されたようだ。

「……それは気持ち悪いから」
「では……」
 再びゆびを鳴らすと元の友子そっくりな千早に戻った。
「それでは、わたしが副長を務めます」
 ニッコリ笑うと、服装が艦長と同じ第二種軍装に変わった、階級章は中佐になっている。
「髪もショートにしてみます」
 セミロングがショートヘアに変わった。
「あ…………」
「どうかしましたか?」
「右のここに……」
 喜一が指したのと同じ右の側頭部を触ってみる。
「あ、ヤダー、ハゲてる!」
 また艦橋が笑いに満ちた。
「気づかなかったのかい?」
「これ、友子さんにもありますよ。わたしの体は友子さんのコピーですから」

 ツンツン尖がってばかりの娘だが、やっぱり心を痛めていたのかと思う喜一である。

「なんだか野党第一党の党首みたいだなあ」
 艦橋の一同が―「あ~~~~~~」と思い当たる。
「ハハ、ブーメランが飛んできそう」
 元のセミロングに戻した。
「副長、転送室より完了の知らせです」
「早いわね……艦長、わたしより優れた航海長のリクルートができたようです。転送室に向かってください」
「転送室?」
「第二中甲板にあります、ご案内します」
 千早は元のセーラー服に戻ると喜一を案内した。

 恩地左近のようなオッサンだったらどうしようかと心配しつつ第二中甲板に下りて行った。

「飛行中に地上と連絡するための転送を行う部屋です。乗員でない者を転送した場合は、こちらに収容します」
 千早が示したのは、転送室とは強化バリアで隔てられた一角だ。

 いかにも学食勤務と思われるオバチャンが目をつぶったまま立っていた……。
   
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高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・4

2019-04-23 19:46:32 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・4
 

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。


時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター



好子: その電柱の脇に積んであるダミーのゴミ袋なんか、中味までちゃんとその時代のゴミが入ってんのよ。 はみ出してる割り箸とか、カップ麺のカップとか、このためにわざわざ作ったんだって。             
ロボ: ソコマデシテ残サナケレバナラナイモノ?            
好子: ぬくもりがいるのよ人間には……。
ロボ: ヌクモリ?
好子: たとえば……使い古したカバンを捨てずに残したり。
 こわれた人形や、片方しかないピアスをとっといたりするじゃない。
 そういうものって一見無駄なんだけど、自分のアイデンティティーを持ち続けるためには必要なのよ。
ロボ: ソウナンダ。デモ、ココ、モウジキ閉鎖サレルンダヨネ。
好子: うん、去年の事業仕分けで決まっちゃった。
ロボ: デモ、イボジ、キレジ、ダッコウ、ダッコウ……(壊れたレコードのようにバグるロボ。好子、ロボの頭をたたき回復)ハナヂ、アカジ、赤字ナンダロ、ココ。
好子: 赤字でも、残さなきゃならないものだってあるよ。
ロボ: ソウナノカイ?
好子: ロボットだってそうでしょ。ほんとうは歩いたり、しゃべったり、それにふさわしい機能さえあればいいのに、ことさら人間風に皮膚をつけたり髪の毛つけたりして、疑似感情まで持たせてアンドロイドにしたじゃん。それは、その方がぬくもりがあって安心……どうしたの?

 ロボ、身をよじるようなバグ、キューキューと悲しげな音がする。

ロボ: コレジャ、ヌクモリモ安心モ感ジナイヨネ(自分のボディーを示す)
好子: そんなことないよ。そんなこと!
ロボ: ジョーダン、ジョーダン。チョットスネテミセタダケ。
好子: もう!
ロボ: チョット、ソンナニ速ク歩ケナイッテバ。
好子: だって、ロボットでしょ!
ロボ: ポンコツナノ。
好子: ポンコツだってロボットでしょ!
ロボ: アノネ……。
好子: わたし、すねたり、弱音はいたりするやつだいっきらい! 人でもロボットでも!
ロボ: 好子ォ……。
好子: くやしかったら、わたしを追いこしてみなさいよ!(駆けだす)
ロボ: チョ、チョット、好子!
好子: ポンコツの意気地なしロボット!
ロボ: 好子!
好子: あいた!(転んで膝をすりむく)
ロボ: 一人で起きられる?
好子: 子どもじゃないわよ……アタタ。
ロボ: ジャ、先イソゴウカ。
好子: ちょっと、そんなに早く歩けないってば……。
ロボ: ハハハ、ドウダ、サッキトサカサマ。
好子: ハハハ、ほんとだ。ここ、地道のままだから、石ころなんかむきだしなのよね。
ロボ: 道のセイニシテル。
好子: じゃ、なんのせい?
ロボ: 重心ガアガッタセイジャナイ?
好子: 重心……?
ロボ: 足の裏ノ単位面積アタリニカカル重量ノ増加トイウカ……。
好子: 失礼ね。太ってなんかないわよ。わたしってば……このごろ、なんでもないとこでつまづいたりするのよね。
ロボ: それって……。
好子: ヘヘ、わたしって悩める乙女だもんね。
ロボ: 悩メルオカメ……。
好子: こいつ!
ロボ: 好子怒ッタ!
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高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・018『江ノ島・1』

2019-04-23 14:54:24 | 小説

魔法少女マヂカ・018  

『江ノ島・1語り手・友里 

 

 

 残念な顔をするのに苦労した。

 

 お父さんの仕事の都合で日帰り旅行に変更になったんだ。ほんとうは鬼怒川に一泊二日の予定だった。泊りで、ずっといい子にしているのは気が重かったから、言われたとたんにフッと胸が軽くなる。

「いいよ、これからもずっと家族なんだし、旅行なんていつでも行けるよ」

 言ってからしまったと思う――これからもずっと家族なんだし――という言い方は、なんだか家族であろうとすることが意識的すぎて、家族であろうとすることが重荷になっているような響きがある。でも、返事するのに間が空くよりはよかった。

 行先は江の島だ。

 これは素直に喜べた。子どものころから何度も行っている。遠足で二度ほど、家族でも数回行っている。

「お弁当持っていこう!」

 お母さんの一言で、小田急で行くことに決まる。

 電車的には江ノ電に乗っていきたいんだけど、江ノ島でお弁当を食べるなら、水族館前の海辺と決まっている。

 水族館は小田急江ノ島駅が最寄りの駅だからだ。

 夏場は海の家が一杯並ぶ湘南の代表的海水浴場。この季節は、うち同様にお弁当を広げる家族連れのメッカになる。

 江ノ島水族館と言っても江ノ島にあるわけじゃない。江ノ島の対岸、江ノ島弁天橋を左に据えて江ノ島と湘南の海岸がパノラマみたく臨める場所だ。

 水族館と砂浜の間、大階段になったところでお弁当を広げる。

 死んだお母さんとお弁当食べたは砂浜だった。お父さん、微妙に場所をズラしている……ま、当たり前だよね。

 

 お弁当は、夕べ作った。シェフはお母さんだけど、わたしも妹と一緒に手伝う。

 お母さんのお弁当は真智香が「美味しい!」と叫ぶほど出来がいい。あのお弁当があったから真智香と友だちに成れた。

 いわば来福のお弁当。

 それを広げて、お父さんに「ここはお母さん、そこが友里で、こっちが茜里(妹)が作ったんだよ」と解説する。

「腹ごなしに走るぞ!」

 茜里に声を掛ける。

 姉妹で犬ころのように砂浜を駆ける。大階段ではお父さんとお母さんが砂浜のわたしたちを見ている。背景は湘南の海と江ノ島と青い海! 家族を感じるには絶好のロケーションだろう。

 走り疲れて、砂浜で大の字になる。茜里は貝殻を拾っている。

 潮騒が心地よく、いつの間にかウツラウツラしてくる……これくらいの距離感がいい……両親の視界の中で自由にしていられて、妹の茜里が近くで遊んでいる。不器用なわたしには、これくらいの距離感が……。

 ふいに、誰かが前に立った気配がした。

 お母さん?……待って、いま笑顔になるから。

 目を開けて顔をあげると……ほとんど裸の女の人が立っている。

 すぐ近くには茜里がストップモーションになっている……いや、視界に入る人たちや、空のトンビさえフリーズしている。ただ、波だけが規則正しく打ち寄せている。

 女の人は青い髪をお団子に結って、薄衣をなびかせ、手には琵琶を抱えている……肌は抜けるように白く、優し気に微笑んでいる。どこかで会ったことがある……。

 

 この人は……江ノ島の弁天様だ。

 

 思い至ると、弁天様は微笑みのレベルを上げて、ポロロ~ンと琵琶をかき鳴らした。 

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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・010『風雲赤坂城!』

2019-04-23 06:36:43 | ノベル2

時空戦艦カワチ・010

『風雲赤坂城!』          

 

 

 要は人なんや

 そう言うと、正成は喜一を本丸の櫓に連れ出した。
 

「これは……」  

 眼下の風景に驚いて身を乗り出した。 外から見た限りでは、城中に人の気配は希薄だった。 季節的にも農繁期の真っ盛りなの秋なのだからと納得していた。 喜一は幹部自衛官だったので、防衛大学で一通りは日本の戦史については学んでいる。

 それが、外からは窺い知れないところで兵どもが立ち働いているのである。 

 織田信長が職業軍人として足軽部隊を組織するまで、日本の戦は農閑期に行われていた。戦場で棟梁とか御屋形様と呼ばれる武士の親玉が活動できるのは、日ごろは畑や田んぼで地を這っている百姓たちが居るからだ。だから百姓たちが忙しい秋には戦は行われない、行われたとしても、ごく小規模なものに終わる。
 

 だから、この季節に百姓たちが城に籠って戦支度をしているのは常識に反する。 赤坂城の外からは窺い知れないが、城中は煮立った鍋の中のような活気なのだ。
 

「稲刈りなどはどうしているんですか?」

「人を雇うてる」  常識じゃないかというような顔で正成は答える。

 喜一の知識と感覚では、日本の百姓が人を雇って稲刈りをさせることは考えられない。 稲刈りは百姓の本業であり、一年の農作業の総仕上げであるのだ。
 

「稲刈りは誰でもでける。せやけど、城の守りは気心が知れて息の合う家人や郎党やないとでけへん。普通この時期に止む無く戦するときは、人を借りるか雇うかや。借りても雇うても銭がいるし、そういう者は気心が知れん。せやから、稲刈りにこそ人を雇うて、百姓を城に入れるんや」

「なるほど……」  目から鱗の喜一である。

「艦長、あそこの郭見てみい」  正成は、城の外郭を指さした。

「あ、あれが二重の城壁……」

「せや、外の城壁に敵が食らいつくのを待って縄を切るんや」

「城壁ごと敵は麓に真っ逆さま……この戦法はわたしの時代にも伝わっていますよ」

「それは嬉しいのう……せやけど、あれを思いついたんは馬借の若いもんや。任せてみたら三日で仕上げよった。ああいうことは雇うた奴は言わへん、我が領民ならこそや」
 

 おやかたーーーー!
 

 下の郭からのだみ声は恩地左近だ。

「なんじゃ!? おのれがオヤカタ言うと親方に聞こえる、様を付けろ言うてるやろ、御屋形様と!」

 気にもしないで左近は続ける。

「ユルフン一丁では親方じゃ。百姓の女房どもが押しかけてきとりますぞ、どないしまんのんじゃ!」

「わいが集めたんじゃ! 作事も一段落、今夜は宴会じゃ!」

 なるほど、さっきのフンドシ信号は女房どもに召集をかけたものであるようだ。
 

「人というのはこういうもんやと思う。アンドロイドは優秀やろけど、やっぱりブレーンには人間を集めた方がええと思うで」
「痛み入ります」

 喜一は答えを得たと思った。一礼して櫓を下りようとしたら正成が付けたした。

「千早のこと頼んます。なんの因果か時空なんたらもんを超えて企みの多い娘やが、託してみてもええだけのもんは持っとる女子や、よろしゅうにな」
 

 秋風になぶらせている正成の横顔は寂しげにも人を食ったようにも見えた……。  

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高校ライトノベル・時かける少女・77 『スタートラック・17・三丁目の星・5』

2019-04-23 06:24:09 | 時かける少女

時かける少女・77 

『スタートラック・17・三丁目の星・5』        
 

 

☆……三丁目の星・5
 

 ミーシャが狙撃されてしまった……!
 

 ミーシャは、ソ連のスナイパーによって心臓近くの動脈を撃たれ、即死状態だった。

「コスモス、ナノリペア! バルスはスナイパーを追え! ただし殺したらあかんど……」 マーク船長は河内弁で怒鳴った。            

 即死でも、脳は数分間は生きている。マーク船長は、ミーシャの胸に直接電子注射でナノリペアを注入した。それも周りの人間には気づかれずに。

「……マーク船長、ミーシャの鼓動が戻ってきた!」

「オレの処置は内緒にな。この三丁目星の医療技術じゃ治されへん傷やったからな」
 

 ミーシャは病院に搬送され、奇跡的に命を取り留めた……ということになった。
 

 スナイパーの方は、ロイド犬のポチが先導し、バルスが人間離れした能力で(もともとアンドロイドである)追いつめ、腕をへし折り、奥歯に仕掛けた自殺用の毒薬を奥歯ごと抜いて掴まえた。 「殺されるより、痛い!」  スナイパーは泣き言を言った。
 

「モロゾフ君。君の仲間は何人ぐらい日本に潜伏してんねん?」 「……!?」 「名前当てたんで、びっくりしてるんか。おれはな、顔見ただけで、お見通しなんや……メンバーは……分かった」

 マーク船長は、アナライザーで、スナイパーの心を読み取ると、コスモスのCPUを通して日本中にいるアンドロイド、ガイノイドに指令した。

――全ての工作員を確保し、後楽園の会場まで連行せよ―― ――腕の一本ぐらい、へし折ってもいいか?―― ――あかん、無傷で連れてこい――

 そして、十時間をかけて(なんせ、新幹線も無い時代である)米ソ中の工作員三百名あまりが後楽園に集められた。所持しているピストルはモデルガンに、ナイフはゴムに変えられていた。むろん歯に仕込んだ毒薬は龍角散に、所持している毒薬はグラニュー糖に変えてある。

 では、ミーシャを狙撃したモロゾフが、なぜ、腕をへし折られたか?

 バルスは「急を要したので」とシラっと言ったが、バルスがミーシャをオシメンにしていることは明らかだった。
 

 そうして、連行された工作員と米ソの大使(なぜか、その日のスケジュールをSJK観覧に変えられていた。中国は、まだ国交がないので工作員のボス)同席の中、SJKのコンサートが行われた。

 むろん一般席も一人百円という格安で、一般客に開放され、数万人がひしめいた。
 

 その日は、特別に米ソ中の国歌から始まり、それぞれの民族音楽を含め、二十曲余りの曲を歌いあげた。

「ほら、みなさん、こんなに良い笑顔をなさっています。わたしたちは、難しい政治のことは分かりません。でもみなさんは音楽を通じて、こんなに一つになりました。ステキです。ありがとうございました!」

 後楽園球場は満場の拍手になった……。
 

 それからJポップは世界中に広がり、派生系を生んだ。ロック風、コサック風、京劇風、さまざまなものが生まれ、人々の心は、世界的規模で多様化しながら一つになった。

 そして、二年後には核兵器が廃絶され、冷戦は終わり、銀河連邦でもまれに見る平和な惑星になった。
 

「ほんなら、あとは、あんたらで上手にやりぃや」

 そう一言残し、ファルコン・Zのメンバーは三丁目星を後にした。
 

 むろん、ミナコとミナホの卒業公演は世界中三十カ所で盛大に行われ、数千万の人々が直接に、数十億人の人がラジオやテレビ、レコードで、それを聞いた。

「あとは、陽子。あなたに頼んだよ!」

 陽子とミナコ、ミナホが抱き合う像はお台場に高さ三十メートルの像になって『友愛の三天使』の名を付けられた。

 除幕式は、元内閣総理大臣鳩山一郎がテープを切った。
 

「まあ、鳩ぽっぽで幕がしめられたんだ。ちょっと緩いけど、めでたいこっちゃ」
 

 ファルコン・Zは、次の星をめざした……。

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高校ライトノベル・連載戯曲・ノラ バーチャルからの旅立ち・3

2019-04-22 17:12:22 | 戯曲
連載戯曲
ノラ バーチャルからの旅立ち・3

※ 無料上演の場合上演料は頂きません。最終回に連絡先を記しますので、上演許可はとるようにしてください。
  


時      百年後
所      関西州と名を改めた大阪

登場人物
好子     十七歳くらい
ロボット   うだつの上がらない青年風
まり子    好子の友人
所長     ロボットアーカイブスの女性所長
里香子    アナウンサー(元メモリアルタウンのディレクター)
チャコ    アシスタントディレクター


ロボ: ナツカシイマチダネ……。
好子: うん?……メモリアルタウンだからね。
ロボ: エ?
好子: 二十世紀の街の姿が、わりによく残ってるんで、二年前に大幅に手を加えて野外博物館にしたの。 あの電柱とかブロック塀とか……ほら、あのお店とかあっちのお店のバリアーね「シャッター」っていうんだよ。 鉄でできてて、開け閉めのときは、ガラガラってレトロな音がするんだ。 道ばたの大きな箱みたいなのは自動販売機っていってね、お金入れないと商品がでてこないんだ。 だから、ここに入るときは百年前のコスプレ。
ロボ: ワカッテルヨ、ソウジャナクテ……(自販機で缶コーヒーを二つ買う)
 チャリン、チャリン。ポン、ゴトゴト。ポン、ゴトゴト。ン(缶コーヒーを渡す)
好子: ありがと。
ロボ: プシュツ。ココ、野外博物館ニナル前ニ……好子ト初メテ歩イタ道ダヨ。
好子: ほんと? プシュツ。
ロボ: ……忘レタ?
好子: えーと……。
ロボ: オ母サンモ、イッショダッタ。ソノトキボクニ名前ツケテクレタンダヨ。 オ母サンハ、タケシニシヨウッテ言ッタンダケド。好子ガ、マワラナイ舌デ「ロボクンガイイ」ッテ決メタンダ。 即物的デ、マンマノ名前。ナンテ想像力ノナイガキ……子ダト思ッタ。
好子: 悪かったわね。
ロボ: デモ、今ハ気ニイッテル。 人型ロボットノ出ダシノコロダッタカラ「ロボクン」テ名前ニハ、好子ノ夢ト憧レガ詰マッテルンダ。
好子: そうだったんだ。ずっと子供のころのことだからね。
ロボ: マアネ……アノトキハ、今トハ逆ニ、ムコウカラコッチニ歩イテキタンダケドネ。
好子: ……むこうから、こっちへ……。
ロボ: 思イ出シタ?
好子: うん……。

 上手からエキストラになった里香子とチャコがキャーキャーいいながらくる。  

里香子: ようし、ここでジャンケンだ!
チャコ: ええ、まだ電柱一本分あるよ。
里香子: ちゃんと数えてたんだからね。
チャコ: もう一本あるって!
里香子: ちゃんとGPSで数えてんだからね。
チャコ: あ、それ反則!
里香子: ちがうよ、これ二十一世紀のスマホなんだからね。
チャコ: ちぇ、仕方ないなあ。
里香子: いくぞぅ!
二人: 最初はグー。ジャンケンポン!
チャコ: わあ、勝った!
里香子: くそ、やぶ蛇かよ。
チャコ: よろしくね(二人分のカバンとサブバッグを渡す)
里香子: 最後に負けたら、タイ焼きおごるんだからね!
チャコ: はいはい、負けたらね。

 二人下手に駆け去る。見送る二人。

ロボ: カシャン(空き缶を捨てる)
好子: 少し……カシャン(空き缶を捨てる)思い出した。 ……きっといいことがあった後なんだよね。夕日を背に受けて、ながーい影を踏みっこしながら……家に帰ったんだ。
ロボ: ソウダヨ。
好子: 入院かなんか……してたんだっけ、わたし?
ロボ: 思イダシタ?
好子: ……だめ、そこまで。だって、とっても小さいときのことなんだもん。でしょ?
ロボ: ウン……マアネ。
好子: わたし無意識のうちにこの道を選んでいたのね……ほかに近道もあったのに。
ロボ: ドウシテ?
好子: さあ……。
ロボ: サア?
好子: だって、わかんないから無意識って言うんじゃないよ!

 下手端、里香子とチャコが現れ、チャルメラと、犬の遠吠えを器用に口で真似る。

ロボ: コノ街ヲ維持スルノ大変ナンダロウネ。
好子: そうよ。あの犬なんて、純粋の雑種なのよ(皆ずっこける)なにがおかしいのよ。
ロボ: 純粋ノ雑種……非論理的ダ。
好子: 想像力のない頭してんのね。 
ロボ: 安物ノCPU使ッテルンダモン。

 再び、犬の遠吠え、チャルメラの音。里香子、チャコ去る。
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高校ライトノベル・せやさかい・010『夕陽丘・スミス・頼子』

2019-04-22 13:38:42 | ノベル

せやさかい・010

『夕陽丘・スミス・頼子』 

 

 

 夕陽丘・スミス・頼子さんというらしい。

 

 らしいというとこにわたしのビックリぶりが現われてる。

 同年配の外人さんを、学年上とはいえ、同じ学校の生徒として見るのは初めてで新鮮!

 せやさかい、頭のどこかが、しっかり受け止められんくて「らしい」てな言い回しになる。

「エディンバラから帰ってくるのが遅れて、学校はきのうからなの」

「エ……エジン?」

「エディンバラ。イギリスの北の方で、お父さんの家があって、お母さんは日本人なんだけど、ミテクレはお父さんの血が勝ってて、こんなだけど、中身は日本人よ。いちおう三年生だから、夕陽丘さんとか頼子先輩とかが呼びやすいと思う」

「「は……はあ」」

 好奇の目で見られることが多いんやろか、十秒ほどの自己紹介は手馴れてる感じや。

「あなたたちは?」

「あ、はい! 一年一組の酒井さくらです!」

「素敵な名前ね、この季節にピッタリ! あなたは?」

「え、えと……榊原留美です。クラスは同じ一年一組、留美は……こんな字です」

 榊原さんは生徒手帳を出して頼子先輩に示した。

「素敵ね、美しさが留まる!」

「いえ、そんな(*´ω`*)」

「お茶淹れるわ、ゆっくりしてってね」

「あ、お構いなく」

 反射的なお愛想が出る。榊原さんは頬っぺたを赤くして俯いてしまう。

「ワン フォー ユウー  ワン フォー ミー  アンド ワン フォー ザ ポット」

 なんか呪文みたいなん唱えながらポットにお茶ッ葉を入れる頼子先輩。榊原さんがガバっと顔をあげる。

「それ、紅茶を入れるときのお呪いですよね!」

「そうよ、よく知ってるわね?」

「小説で読みました! たしか、シャーロックホームズです!」

「そうね、他にもいろんな文学作品に出てくるわね、わたしは紅茶屋さんの陰謀だと思ってる」

 なるほど、ポットの分だけ消費量が増えるもんね。

 でも、淹れてもらった紅茶は本当に美味しかった。美味しがりながらも、生徒が勝手お湯沸かしてお茶淹れてええのんかと思たけど、突っ込みません。

「文芸部って看板だけど、サロンみたいなもんだと思って。放課後のひと時を、気の合った仲間とゆったり過ごすための部活。ま、たまには本の話もね、しないこともない。他の部活と兼ねてくれてもいいのよ」

「いえ、入部します!」

 榊原さんはキッパリと宣言した。

「ありがとう、酒井さんは?」

 どないしょ……思ったら、横から榊原さんの強力視線。ま、こういうもんは直観やなあ。

「はい、わたしもお願いします」

「「ヤッター!」」

 仕組んでたんとちゃうかいうくらい、頼子先輩と榊原さんの声が揃う。

 なんや、三人で拍手になったあと、頼子先輩は廊下に出て文芸部の看板を外してしまった。

「なんで外すんですか?」

「三人いたら十分よ。部活成立の要件は『部員三人以上』だしね」

 なるほど、そういうもんか……と、納得。

 それから、お互いの呼び方を決める。

「名前は、ティーカップの取っ手と同じ。気持ちのいいものじゃないとね、呼ぶ方も呼ばれる方にも」

 そう言えば、いま飲んでる紅茶のティーカップは手にしっくりきてる。

「じゃ、榊原さんは留美ちゃん。酒井さんはさくらちゃん。わたしのことは、どう呼んでくれる?」

 どうもなにも、さっき指定された。

「「頼子先輩」」

「ちょっと長いかなあ……七音節だよ」

 って、自分で指定したと思うんですけど。

「頼子さんにしてくれる? 苗字の夕陽丘も長すぎるから」

「「はい」」

 ヨッチーいうのんも頭に浮かんだけど、却下されるに違いないので言わへん。

 

「安泰中学の部活って、五人が最低やよ」

 

 家に帰ってコトハちゃんに言うと、部活の最低人数は五人だと否定された。

「そやかて……」

 生徒手帳をめくってみると――部活は三人以上をもって成立する――と書いてある。

「あれーー?」

 不思議に思ったコトハちゃんは引き出しから自分の生徒手帳を出した。

「中学のん、まだ持ってるのん!?」

「うん、書き込みとかしてるしね、とっとくにはええ大きさやし……ほら、二年前のは五人になってる!」

「やあ、ほんまやわ!」

 

 明くる日学校に行って分かった。

 去年、頼子先輩が提案して部活成立要件を三人に改正させたそうやった。

 なんや、頼子先輩、いや頼子さんはスゴイ人のようですわ……。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公 安泰中学一年 
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主
  • 酒井 詩        さくらの従姉 聖真理愛女学院高校二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
  • 榊原留美        さくらの同級生
  • 夕陽丘・スミス・頼子  文芸部部長
  • 菅井先生        担任
  • 春日先生        学年主任
  • 米屋のお婆ちゃん
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高校ライトノベル・時空戦艦カワチ・009『楠正成のフンドシ』

2019-04-22 06:57:28 | ノベル2

 時空戦艦カワチ・009

『楠正成のフンドシ』          

 

 長官室のドアの向こうは山の中であった。
 

「どこでもドアを潜ったみたいだなあ……」
 

 会社の事務所に千早が現れてから驚きっぱなしだが、これは驚きの次元が違う。

「どこでもドア以上です。場所を移動しただけでなく時間を超えています。ここは七百年ほど昔の金剛山地です」  

 千早の出で立ちは朽葉色の直垂に緋縅の胴丸だ。

「いつの間に」

「この時代のわたしは、こういう出で立ちでした。艦長も時代に合う装束を着てもらっています」

「お……?」

 喜一自身も朽葉色の直垂に沢瀉縅(おもだかおどし)の胴丸姿だ。

 振り返った時にカチャリと抵抗があった。腰に黒鉄の太刀をはいており、その鞘尻が小梢に当たったのだ。
 

「これから父に会います」
 

 山中の獣道を千早は軽々と登っていく。都で育ったとは言っていたが、やはり楠正成の娘ではある。

「速いなあ……」

 感心しているとまたしても鞘尻をぶつけてしまう。視線を戻すと千早の姿が無い。

「あれ……?」

 千早……呼ばわろうとして止めた。自衛官の感覚で、この状況で声を上げるのは危険だ感じたのだ。
 

「すみません、つい気配を消してしまいました」
 

 意外な近さに千早は居た。

 朽葉色の直垂に緋縅の胴丸は意外にも山中の景色に溶け込んでいる。むろん気配を消したことが大きいのだろうが。

「秋の山中では、この出で立ちは意外に迷彩の効果があるんです」  

 なるほど、千早も喜一も紅葉の山中に溶け込んでいる。

 

   「赤坂城跡」の画像検索結果

 

 それから一町ほど進み、千早が二度鳥の声そっくりの口笛を吹いて赤坂城に入ることができた。

 落ち着いて観察すると、あちこちの茂みの中に弓を構えた鎧姿が見える。口笛は味方の合図であったに違いない。

「姫、よう戻っておいでじゃ」

 櫓の上から降ってきた声を見上げると髭もじゃのオッサン武者が出迎える。

「いま戻った、客人を連れている。父上のところに案内(あない)せよ」

「承知!」

 意外な身軽さでオッサン武者は櫓を下りて行った。

 門を潜ると、もうオッサンの姿はない。陸自のレンジャー並の美濃軽さだ。

「……あの人は恩地左近さんではないか」

「知ってるんですか?」  

 千早が目を丸くした。事務所で現れて以来驚かされっぱなしだったので、ちょっぴり嬉しい。

「あの人の何十代目かの子孫が同じ顔をしている」

「ハハ、おっちゃんの個性は強烈ですから」
 

 どこをどう通ったか分からないうちに本陣に着いた。しかし、本陣の中は囲炉裏が燻っているばかりで人が居ない。
 

「そろそろ来る頃やと思てた」
 

 屋根からユルフンの尻が下りてきた。これには千早も驚いたようだ。

「もう、ビックリするじゃないのよ!」

「すまん、フンドシの替えが切れたんでな、まとめて洗濯して干したとこや」

「替えるのはいいけど、フンドシはきちんと締めて、中身がこぼれてるわよ」

「こぼれてもええやんけ、おまえらこさえた種イモやぞ」

「もー、下品すぎる!」

「まあ、下品かどうか、ちょっと見てこいや」

「ん…………」

 なにか思い当たったのか、千早は本陣を出て、広場から屋根の上でたなびいている洗濯物を見に行った。
 

「お父ちゃん……!」
 

 感極まった一声を上げると駆け戻ってきて、親父の胸倉をつかんだ。

「吹き流しの暗号をフンドシでやるかーーー!?」

「ワハハ、ミッドウェーは暗号読まれて失敗したさかいなあ、小林艦長」
 

 このオッサン食えない……フンドシを締め直す喜一であった。  

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