大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!96『事故とその後始末』

2024-12-22 08:47:50 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
96『事故とその後始末』 





 ググ( `°罒°) 

 思わず歯噛みしながら唸っちまった。


 マユの仁科香奈は無事だったけど、庇った美紀は、落ちてきたライトが左腕から顔にかけて当たって、怪我しちまいやがった。

 出血は少ないけど……どうやら左頬の骨が陥没骨折。左腕にも裂傷を負ってやがる。

「大丈夫か美紀!」

 マネージャーが直ぐに駆け寄ってきて、メンバーの奴らも駆け寄って声をかけやがる。

「だれかぁ! 手当できる人いない!?」

 ルリ子が、美紀を抱きかかえ叫びやがる。

「わたしが診る。元看護師だから」

 ヒッツメ頭のスタッフが、人をかき分けて美紀の側に来た。

「に……仁科さん大丈夫……?」

 美紀が苦しい顔で気遣いやがる。


 マユはグッときちまった(゚⊃ω⊂゚)。


 いつもルリ子の腰巾着というか携帯のストラップみてえな美紀、ルリ子の後ろで意地悪ばっかしてきた美紀が、初対面のオーディション受験生でしかないマユの仁科香奈を気遣ってやがる。

「裂傷は大したことはないけど、ほお骨がどうにかなってる。すぐに病院へ!」

 元看護師のスタッフが上杉ディレクターに言った。

「救急車じゃ、かえって混乱する。事務所の車で、二丁目の足利病院へ!」

 上杉の指示でスタッフが動いた。

 事故の顛末は観覧席の受験者やマスコミに分からないように、熟練のスタッフによって、モニターがすぐに切られ、観覧席の大きなガラスもスモークにされてる。

 しかし、事故直後の様子や悲鳴は聞こえている。観覧席を通って正面玄関から出すことは不可能だ。

「裏口から出ましょう」

 気の利いたスタッフが、裏出口に通じるドアを開け、数人が付いて美紀は足利病院に運ばれた。

 オモクロは、利恵の言うとおり、白魔法の影響を脱して自律的に成長してやがる。ルリ子や美紀もきちんと成長してやがる。


 マユは、混乱しちまった。


 天使のおせっかいは、どこかで必ず歪みが起きてくるものなのに……間違っているのはマユの方か……?

「大丈夫、仁科さんのせいじゃない。これは単なる事故なんだから」

 美しく誤解して、パイプ椅子に座らせてくれる子がいやがった……どこかで、見たことがあるぞ。

「すみません……」

「あなた、歌もダンスもすごかったわ。きっといい結果が出るわ」

 そいつは、そう言うと、スタジオの片づけに戻りやがる。

――あ、こないだまでセンターをやっていた、桃畑加奈子!――

 笑顔でマユに接し、今はテキパキと後かたづけをやっている桃畑加奈子の心は自己嫌悪で濁っていやがる。

――なんで、自己嫌悪……?――

 加奈子の心を読もうとしたが、仁科香奈というアバターは、大石クララとマユ本来のアバターを足して二で割ったものなんだ。

 人間的な技量はともかく、魔法の効きは半分しかねえ。元々オチコボレの小悪魔、正規の悪魔みてえに魔法は使えねえ。それが、その半分になっちまったもんだから、加奈子みてえに心を閉ざされっちまうと、なかなか読むことができねえ。

「さ、オーディションを再開するんで、控え室に戻ってください」

 スタッフに促され、マユは、控え室の観覧席に戻ったぞ。

 そんで、何事も無かったみてえに、オーディションは再会されたぞ。

 ガラスの向こうで、見本の歌を唄い、踊っているのは桃畑加奈子だった。

 そんで……。

 微妙に濁った心が見え隠れする。マユはアバターの中でもどかしく感じながらも、このあたりから調べていこうと、思ったぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!95『オモクロのオーディション・2』

2024-12-21 08:39:45 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
95『オモクロのオーディション・2』 




 エロイムエッサイムムムム……ム……ム……(;`皿´)グヌヌ

 オチコボレ天使の白魔法を解いても、ルリ子たちは受験生たちの前で明るく元気に歌って踊ってやがる。けして学校にいるときの、いじめっ子の上から目線じゃねくてよ! 仲間を迎える喜びと励ましと、自分たちがリーダーであることの誇りさえホトバシらせてやがるじゃねえか(;`皿´)。

――どうかしらぁ~、人間は、キッカケさえ与えてやれば、こんなにも良い方向に変わるのよ~――

 美川エルの姿をした利恵の思念が、効き過ぎた暖房みてえに身にまとわりつきやがる。

 グヌヌ……一見正しそうだけども、何かが間違ってるぞ!

『では、Bグループの人たち、入ってください』

 それを考えている内に、エルたちのグループが呼ばれた。寄りにも寄って、落ちこぼれ天使と同じグループかよ!

 エルの歌も踊りも群を抜いていやがる。ダンスは振りも独創的で力強く優雅でさえありやがる。今のオモクロには無え気品と言っていい魅力がありやがる。

 歌も透明感のあるメゾソプラノでよ、サビで声を張るとこなんか、審査員たちが思わずヘッドホンを外すほどの迫力! 実際、スタジオと観覧席の境になっている大きなガラスがビリビリと振動するほどだったぞ!
 
 エルたちの演技が終わると、スタジオは一瞬シーンとしてしまいやがる。それから満場の拍手になって、それは観覧席の受験者たちの中からも湧き起りやがった(-”-) 。

 エルは満ち足りた顔で、プリマドンナかっちゅうくらいのお辞儀をしやがる。

 輝く瞳、ほの赤く染まった頬……まさに天使の笑顔って、こういうモノなんだろうと、マユは仁科美香のアバターの中で思っちまった。

――フン、これから小悪魔の力を見せてやるからな!――

『では、Cグループの人たち入ってください』

 声がかかって、マユたちはスタジオに入ったぞ。

「じゃ、ダンスから……」

 ダンスは即興だ。最初の二小節だけ聞いて、あとはアドリブ。 仁科香奈はAKRの大石クララとマユ本来のアバター(浅野拓美に貸してある)の合成だ。利恵アバターのエルにも勝るとも劣らねえ!


 それは、課題曲の『秋色ララバイ』が終わって、自由曲を歌っている最中に起こったぞ。


 歌は、他の受験生と違って渋い曲を選んだ。『埴生の宿』である。

「たのしと~もぉ、たのもしや~♪」

 そう、思いをこめて歌い上げたその声は、怪しいまでに蠱惑的(こわくてき)な響きで、エル同様に、スタジオも観覧席の受験者たちの心も揺るがしたぜ!

 そして……スタジオの天井のライトのネジも揺るがしちまった。

 エルの声で緩んだネジが、香奈の歌の響きに耐えきれず、さらに緩んだ! 

 そしてスタッフがうっかり甘くかけたチェ-ンで振り子のように振れて力を増して、香奈めがけて落ちてきやがった!


「危ない!」


 そう叫びつつ、身を投げ出して香奈を庇いに出たのは、ルリ子の妹分の美紀だったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・161『バイトは24日まで延長』

2024-12-20 11:59:11 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
161『バイトは24日まで延長』   





「時司さん、どうだろ、24日までやってもらえないかなあ」

 ネクタイを締めてない方のカチョウ(漢字では科長らしい)に頼まれて続けることになってしまう。新しく来た四人のうち三人が辞めて行ったんじゃ仕方ない。

 郵便の関西弁は、相変わらず鼻歌交じりのマイペース。「チャッチャとやるでぇ♫」「ほら、そこや!」「伝票取ってちょんまげ(^^♪」「口より手ぇを動かせよ!」「ガムテ使ぅたら元に戻す~♪」「スイッチのオン・オフは指さし確認!」
てな具合。さすがに怒鳴りつけることはしないみたいだけど、この言葉の圧は関東の、それも女子高生やら短大生には厳しいよ。

 10円男は、わたしともう一人残ってるチヨちゃん(金田千代子)をガードしようと、さりげなくフォーローしている。道具の置き場に気を配ってるし、チヨちゃんに声をかける時には笑顔を心がけてるし、関西弁が気にしそうなことは、あらかじめ手を打ってるっぽい。

 こんなことがあった。

 チヨちゃんが伝票の箱をひっくり返しそうになって「オットぉ!」と滑り込むようにして受け止めてやり「ニイチャン、ジャイアンツの外野手が務まりそうやなあ!」と関西弁が褒めた。

「え、ジャイアンツ限定ですか?」

「ああ、阪神では務まらんなあ」

「なんでですか?」

 この時代のジャイアンツは阪神なんて目じゃない、圧倒的な日本一なんで、他の人も思わず聞き耳を立てる。

「阪神やったら、どさくさに紛れて、オケツや胸を触っとく」

 プッ( ´艸`)。

 思わず吹き出す人が半分、嫌な顔する人が半分。

 当のチヨちゃんは顔を赤くして俯いて、10円男は気まずそうに持ち場に戻る。戻りながらも――気にすんなよ――という感じでチヨちゃんの肩をたたき「敵わねえなあ安藤さんわぁ(^_^;)」と頭を掻く。

「せやろせやろ、ワハハハ(ᵔᗜᵔ*) 」

 そして、何事も無かったようにフロアの作業は続いていく。


 
「なんか、学校とは別人だね」

 食堂のテーブルで褒めてやる。

「え、あ……」

 ズルズルズルと蕎麦を掻っ込んでから「そうかぁ」と言葉を結ぶ。

「あんたさあ、労働現場に向いてるよ」

「オレはジャーナリストを目指してんだ」

 ゲフ( >○<)。

「大丈夫かぁ?」

「もう、咽るじゃない! そんなの初めて聞いた、似合わないし」

「初めて言うし」

「ふ~~ん」

「とりあえず、二期校めざす」

「本気ぃ!?」

「ああ、仲間はたいてい一浪してやがるから、入っちまえば同列になる」

 ああ、まだ引きずってやがる……と思うけど口には出さない。

「んだよ……?」

「そう、まあ、がんばって」

「……なんか、バカにしてる?」

「ええ、どうしてそうなんのよ」

「だって、その目がぁ」

「目なんて関係ないでしょ」

「オレは蕎麦なのに、おまえはうどんだしぃ!」

「なによ!」

 ドン

 もうヒトコト言おうと思ったら、目の前にコーラが二本置かれた。

「そうか、君たちはそういう関係やったんやなぁ……ささやかなお祝い、グッとやってちょうだいませぇ~」

「ちょ!」「ちがうし!」

 関西弁は後ろ手でバイバイして、一人納得して食堂を出て行った。

 ヤレヤレ、今日は、これから90分の残業だ。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!94『オモクロのオーディション・1』

2024-12-20 08:50:15 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
94『オモクロのオーディション・1』 






 乃木坂学院を辞めたあくる日、オモクロのオーディションがスタジオで行われたぞ。

 スタジオは広くなっていたぞ。階段を上がったところの部屋はまるまる壁がとりのぞかれ広いフロアーに拡張されていやがる。フロアーはひな壇になっていて、どこからでもガラス越しにスタジオが見られる構造になってやがる。

 そう大した設備投資じゃねえが、運営に自信が出て来た証拠だろうな。

 受験者は、そのひな壇で待たされる。試験は、課題曲と自由曲があってよ。課題曲は、オーディションが始まる前に、オモクロのメンバーが景気づけと、お手本を見せるために、歌って踊ってくれやがる。

 課題曲は、こないだのAKRとの対決で公開されたばかりの『秋色ララバイ』


――あ、ルリ子と美紀がいやがる――


 なんと、お手本を選抜メンバーにやらせやがるぜ! スタジオと云いお手本と云い、自信の表れだ。

 これは侮れねえかもな。

 そんで、選抜メンバーのパフォーマンスは見事だったぞ。受験者は次に自分自身がやらなきゃならねえから、その真剣さは、いつもの観客とは質が違う。

 フリの一つ一つ、ステップの一つ一つに――ここまでやってみなさいよ!――やれるもんならねえ!――って自身が溢れてやがる。

 受験者は、いっしゅん圧倒されそうになりやがるけど、圧倒されっぱなしじゃねえ。みんなハートが熱くなりやがって、その熱が目からほとばしってやがる。

 いっしゅんエフェクト魔法をかけたくなったぜ。エフェクトを付けたら、火花とかスパークとかになってきれいなんだけどな、さすがに止めといた。

 ここは、真剣勝負の場所なんだからな( 。•̀_•́。) 。

 ウウウ……AKRと引き分けになるだけのことはあるぜぇ。特にセンターをとっているルリ子は、ひときわ輝いて見えやがる。

 フフフ……(ΦωΦ)

 でもよ、ルリ子の技量は、雅部利恵が、白魔法を使って身につけさせた天ぷらの衣だ。学校で見栄を張ってる分にゃ、癪に障る程度で見逃してもやるけどよ、こんな真剣勝負の場所でインチキは許せねえぞぉ。

 かわいそうな気がしねえでもねえが、ここは悪魔の本分!

 白魔法キャンセル!

 心の中で解呪の呪文を唱えたぜ……

 ――エロイムエッサイム、エロイムエッサイム……こやつ、指原ルリ子の偽りの技量を無効にさせやがれ……メッタメタにして、その偽りの技に寄る自信の鼻っ柱を折りやがれぇ……――

 あれ?

 ……ルリ子のダンスも歌も、もとのヘタクソにはもどらなかったぞ(;'∀')!


――アハハ……白魔法の効力なんてとっくに消えているわよ――


 その思念は突然飛び込んできやがった。

 うかつだった!

 オチコボレ天使の雅部利恵が、美川エルっちゅう、別のアバターを使って、この受験者たちの中に紛れ込んでいやがった……(# `꒳´ ) 。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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せやさかい 番外・005『お見合い写真はブラックスワン』

2024-12-19 15:51:53 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
番外
005『お見合い写真はブラックスワン』さくら 




 ブラックスワンて知ってますぅ?


 あり得へんことが起こった時に使う、ちょっと高度な慣用句。

 似たような言葉に『青天の霹靂』っちゅうのがあるけど、微妙に意味がちがう。青天の霹靂は、ただビックリするだけやけど、ブラックスワンは、ビックリして、悪いことが起こるんやったと思う。

 我が如来寺に、そのブラックスワンが、まずは青天の霹靂でリビングのテーブルの上に現れた!

「え、これって……」

 まず、留美ちゃんが凍り付いた。

「ま、まさか!」

 その時、頭に浮かんだんは青天の霹靂。

「ちょ、ちょっと!」

 姉妹同然の親友が止める間もなく、うちは青天の霹靂を手に取った。

 青天の霹靂は、白いB4サイズの厚紙に綴じられたお見合い写真!

 開くと、ベールみたいな薄紙が付いてて、その下に和装のベッピンさん。

 薄紙の為に、フワっと滲むというかボケてんねんけど、メッチャ美人!

「あ、ダメだよ」

 薄紙をめくろうとするうちを止める留美ちゃんについさっきの勢いは無い。

 留美ちゃんも見たいんや(^_^;)

 
 神に誓って、いや、うちは真宗のお寺やさかいに、阿弥陀さんに誓ってわざとやない!

 一陣のそよ風(たぶんエアコン)が吹いて来て、薄紙をめくってしまいよった!

「「おお!」」

 現役高校生やけど、いちおう女優と声優の二人は、アニメの主人公が冒険の旅の末の最終回。女神さまに出会った時みたいな声をあげてしもた!

 いや、ほんまに女神さまっちゅう感じ!

 なんと巫女服!

 巫女服て、もう和装の極みやんか! 

 斜め後ろに狛犬を従えて、その後ろには賽銭箱とガラガラの鈴。その上には拝殿の唐破風の裏側が、竜の顎みたいに見えてて、境内の玉砂利がレフ板みたいな働きをして、うりざね顔も麗しく栄える。

 若手女優のプロモ写真みたい。

 うちの宣材写真に比べても軽く10ポイントは上をいってる!

「巫女さんなんだろうか……」

「せやろなあ、この着こなしはレイヤーさんとはちゃうで」

「あ……」

 写真の後ろにはもう一ページあって、白い封筒が頭を見せてる。

「釣書だよ、これ」

「ツリショ?」

「うん、見合いの前に相手に渡す履歴書みたいなもんだよ」

「え、なんか露骨な名称やなあ」

「あ、違うんだよ。釣書っていうのは、掛け軸の別名。ほら、掛け軸って床の間とかに釣るすじゃない。昔は家系図とかも掛け軸の形してて、お見合いの時の身上書みたいなのも釣書って言うようになったんだよ」

「よう知ってんねえ( ゚Д゚)」

「あ、ドラマに出てきたから(^_^;)」

 ドラマとは、留美ちゃんの場合『観たドラマ』じゃなくて『出演したドラマ』やから、すごい。

「封ぅしたぁれへんわ、見たろかぁ( ≖ᴗ≖) !」

「あ、ダメだよ!」

 さすがに選挙権さへ持ってる高3コンビ、中坊の時みたいなアホはやりません。

「せやなあ、早々に送り返さなあかんもんやろしなあ……しかし、今までで一番のベッピンさんやなあ」

 うちの正直な感想には応えんと、留美ちゃんは別の角度から心配する。

「これで、三回目?」

「いや、五回目」

「え、もうそんなに!?」

「まあ、やっと30、そう焦ることもないやろし」

「そ、そうね(^_^;)」


 それから、留美ちゃんはテレビのワイドショーのお仕事。

 うちは、お祖父ちゃんの白内障手術の付き添いで、堺で一番の総合病院へ。


「お祖父ちゃん、ビビってる?」

 白内障の手術は目ぇの中の水晶体が濁ってしまうんで、人口の水晶体と入れ替える手術。

 まあ、70歳を超えると誰でも出てくる眼病で、盲腸の手術よりも簡単らしい。けど、目ぇのレンズを入れ替えるんやから、怖いに違いない。

 せやさかい、かっこうのネタ。待ち時間にお祖父ちゃんを脅かす。

「ああ、目ぇやからなあ」

「せやろなあ、針とかメスとか、目ぇに迫って来るのん見えるやろしなあ(^△^;)」

「あ、それは麻酔とかかかってるさかい、なんも見えへんらしいわ」

「え、せやのん?」

「うん。たいてい上手いこといって、手術前よりもよう見えるらしい」

「ええ、科学の進歩やなあ」

「うん、檀家さんでも何人もやってはるしなあ」

 せや、檀家の大方は医療費二割負担で済む年寄りやった。

「せやけど、左の方は網膜穿孔もやってるさかいなあ」

「え、モウマクセンコウ!?」

 これは聞くのん初めてや。

「うん、網膜に亀裂やら穴が開いててな、めちゃくちゃ見えにくい」

「ええ、なにそれぇ!?」

 テイ兄ちゃんから「祖父ちゃん白内障や」としか聞いてへんかったからビビるのはうちの方や。

「それで、目ぇの中にガス入れてな、そのガス圧で穴を塞ぐんや」

「ええ……」

「いろいろ聞いたんやけど、うまくいっても、かなり視力が落ちるらしい。特に、儂のは焦点のとこやし、字ぃ読みにくなるやろなあ……さくらの顔も見ても、そのつぶらな瞳は見えへんかもしれん」

「お、お祖父ちゃん……」

 東京と大阪の二重生活、やっぱり家族のことは、ちょっとおざなりになってるんやろか……と自責の念。

 こういう時は、話題を変えるに限る。

「テイ兄ちゃんのお見合い相手、めっちゃ美人さんやってんなあ! あんな気合いの入った見合い写真見るのん初めてやったし」

「え、なんで知ってんねん?」

「リビングのテーブルに置きっぱなしやった」

「ジュンサイなやっちゃなあ……あ、ヨダレとか付けてへんやろなあ」

「そら、もちろん、きれいなまま返さならあかんやろし」

「いや、返さんでもええと思う」

「え?」

「相手さんがな、このまま話進めてくれて、言うてくれてはるんや」

「ええ、それてぇ(# ゚Д゚#)!?」

「声大きい」

「ごめん」

「どこを気に入ってくれはったんかなあ、ありがたいこっちゃ」

「せやかて、あの人、神社の巫女さんやろ?」

「ああ、そらかめへん」

「そ、そうなん?」

「神仏習合の観点からは、仏さんも神さんも同じもんやさかいなあ」

「シンブツシュゴウ?」

「ああ、神さんも仏さんも同じいうこっちゃ」

「え、そうなん……」

「ああ、阿弥陀さんは神社では八幡さんと同じいうことになってる」

「へ、へえ……」

 いや、正直、神仏習合はどうでもええんです。

 あんなベッピンさんがテイ兄ちゃんのお嫁さんになるっちゅうのが……青天の霹靂を通り越してブラックスワン。

 来年の日本は、果たして無事なんやろか……(;'∀')

 

 
 ☆・・主な登場人物・・☆

酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校二年生
酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学三年生 ヤマセンブルグに留学中 妖精のバンシー、リャナンシーが友だち 愛称コットン
酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 愛称リッチ
ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍中尉
ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍二等軍曹
月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 酒巻栞(原画) 
声優の人たち      花園あやめ 吉永百合子 小早川凜太郎  
さくらの周辺の人たち  ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん) 瀬川(女性警官)  相野千春(声優の先輩)
 
 

 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!93『乃木坂学院高校』

2024-12-19 08:32:40 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
93『乃木坂学院高校』 






「ねえ、ちょっと日向ぼっこしていかない」


 相談室の鍵をかけながら柚木先生が言った。

「え、あ、はい」

 仁科香奈の姿をしたマユが応える。もう手続きも終わったんで、ちょっと気持ちがつんのめるぜ。

 退学の手続きにきたら、担任に設定してあった柚木先生に最後の説得をされちまった。


 ちょっと意外だったぜ。


 この仁科香奈の姿は、不可抗力で、目の前にいた大石クララと拓美に貸したマユ自身のアバターを足して二で割った姿だ。

 正式に地獄の小悪魔補習規定にのっとて作られた公式アバターじゃねえ。

 だからよ、経歴も関係者の記憶もかなりいい加減な設定にしかできてねえ。
 乃木坂学院の生徒になったのも、それまで入り込んでいた美優が乃木坂の出身で、美優の記憶がそのまま使えるからという便宜上の理由だけだ。

 だから友だちも居ねえし、部活もやってねえし、担任に埋め込んだ記憶もそうとう粗っぽくて、平均的で目立たない生徒という認識でしかねえ。

 だからよ、退学については、ごく簡単な事務処理で済むと香奈の姿をしたマユは思っていたんだ。

 それがよぉ、退学届けを持ってくると、その柚木先生に相談室に呼ばれ、一時間ちょっと説得されちまった。

 意外にも、柚木先生は自分自身を責めていやがった。

――わたしは、この仁科香奈のことについて何も知らない。面談や懇談をやった記憶はある。でも、可もなく不可もない子だったので、ほとんど意識に留めることもなかった。その仁科香奈が、密かにこの乃木坂学院に見切りをつけ、こともあろうに……と、言っちゃいけないんだろうけど、アイドルグル-プのオモクロのオーディションをうけるという。そんなに乃木坂学院は、いや、この柚木学級、柚木という教師には力も魅力もないのだろうか……――

 マユは香奈の心で申し訳なかったぜ。柚木先生は、いわばエキストラっちゅうか、村人1とかのNPCみてえななもんでよ、仁科香奈について細かい記憶なんかはインストールしてなかっんだ。柚木先生は、それが担任としての落ち度のように感じていやがる。

 魔法というものは、白魔法にせよ黒魔法にせよ怖いものだと感じたぜ。

「わたしね、演劇部の顧問やってるの。仁科さんに、そんな気持ちがあるんだったら、入学したときに勧誘しとくんだったなあ……」

「あ、わたしがやりたいのは、演劇じゃなくて、オモクロやAKRみたいなエンタメですから」

「そうなのよね……今の高校演劇は、あなた達みたいな子を引きつける力がないのよね」

「そんなことないです。ただ、わたしがやりたいことが違うだけで……」

「うちの演劇部は、もともと、そういうエンタメ的な力ももっていたわ。もうお辞めになったけど、貴崎マリって先生が、グイグイ引っ張ってらっしゃって、部員も三十人ほどもいてね、歌って踊ってお芝居もできるって、東京でもトップクラスの演劇部だったのよ。それが、ちょっと事故が重なって、貴崎先生はお辞めになるわ、部員は三人にまで減ってしまうわで、一時は廃部寸前までいったの。でも、生徒の力ってすごいのよ。そんな演劇部を復活させて、秋の予選じゃ最優秀。二年生の仲まどかって子が中心にがんばって、その奮闘ぶりが凄くって、本にまでなったのよ」

 柚木先生は、一冊の本を取り出した。

『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』

 一見ラノベの形式だけど、半年にわたる仲まどかたち、演劇部の子たちの奮闘ぶりが書かれていやがる。

「あげるわ。なんかの参考になったら嬉しい」

「あ、ありがとうございます(^_^;)」

「それから、仁科さんと同じように中退した子だけど、坂東はるかって子も、女優になってがんばっているわ」

「え、坂東はるかって、乃木坂の中退だったんですか!?」

 マユも人間界に来て半年あまり。並の女子高生としての知識はある。坂東はるかは、いま売り出し中の若手女優だ。たしか、大阪で現役高校生のまま新幹線で通って女優の仕事をこなしているはず。ネットで自伝的なノンフィクションを書いていやがった。

『はるか 真田山学院高校演劇部物語』

 そんなタイトルだ。

「坂東はるかって子のことだったら、その『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』にも出てくるわ。仲まどかとは幼なじみだから」

 柚木先生は、マユの心を読んだように答えやがる。人間は、時に悪魔か天使のように心を読んだり、勘を働かせたりすることがある。それは、葬儀を済ませたばかりの美優も同じだったぜ。

 マユは、人間界に補習に出された意味が分かってきたような気がしたぞ。

 あ……

 いつの間にか、理事長先生が後ろに立っていやがる。もう九十を超えているってのに、髪の毛以外はカクシャクとしていやがる。

「仁科さん、わたしの目を見てくれんかね」

「あ、はい……」

 優しいが深みのある目をした先生だ。仁科香奈の心で、マユは、そう感じたぞ。

「いい目をしている。できたら、うちの学校でまっとうして欲しかったが、きちんと決心したんだね?」

「……はい」

 理事長先生は、自分の目を見ろと言って、マユの目を観察していやがったんだ。

「もう、今さら、わたしから言うことはない。柚木先生といっしょに見送らせてくれんかね」

 プラタナスの枯れ葉を踏みしめ、仁科香奈の姿のマユは乃木坂を下る、背中に二人の先生の視線を感じながら。

 たまらずに振り返ると、先生は二人で小さく手を振っていやがったぜ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!92『葬儀・2』

2024-12-18 09:21:39 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
92『葬儀・2』 





「真田さん……」

「こんなことで再会するとはね。式が始まったら、お焼香だけさせてもらうよ」

「どうも……」

「……じゃ」
 
 由美子は、真田に教わったたばこを、一口だけくゆらせて控え室にもどりやがった。

 こんなかたちで五年ぶりに真田にあうとは思いもしねえ由美子だ。五年ぶりの言葉が、あれで適切なのかどうかは分からねえ由美子。でもよ、あれ以上の会話は、思いもしねえ感情を心の底から呼び戻してしまっただろう。

 真田は、それからも左手をポケットに入れたまま動かねえ。

 マユは、まだまだ未熟な小悪魔だからよ、関わった全部の人間や出来事が分かってるわけじゃねえんだ。由美子の中では決着もついてるみてえだし、関わるのは止しにするぜ。悪いな真田。

 このご時世、けっこうな有名人が亡くなっても家族葬で済ますんだけどよ。母親以外の係累は、それこそ成り立て亭主の黒羽D一人だけ。

 ところが、親密にしていたお客やヒカリプロの人間がゴマンといやがる。オモクロ対決を実質の結婚式にしてくれたのもそいつらのお蔭だ。

 マスコミが式場に入ることだけは断りやがったけど、今どきの葬儀としちゃ頭抜けた規模だ。
 ふたを開けてみると、その予想の上を行く会葬者で、急きょ場内整理の警備員を倍にしやがったぐれえだ。

『ただいまより故・黒羽英雄、故・小林美優の合同葬ならびに告別式を執り行います 』

 え、服部八重の声だ。

 八重はAKRの最年長、と言ってもたかが25歳なんだけどよ、クララといっしょにAKRを纏めなきゃって気持ちが強い姉御肌だ。式の司会進行を買って出やがったんだ。

 後ろに専門の葬儀社のオッサン……どこかで見た顔だと思ったら、このオッサン、テレビやネットのCMで時々見かける葬儀社の社長……で、八重の親父? そうか、アイドルが葬儀屋の娘ってのは、今の時代でも抵抗はあるのかもしれねえけど、思いきりやがった。

 そうだよな、新しい時代を切り開こうってのは、小悪魔だけじゃねえんだな。よくやってくれたぜ、八重。

 葬儀の時間は長かったけど苦にはならなねえ由美子だ。今までの親父の介護や看護のことを思えばなにほどのことでもねえ。

 一般焼香のときに真田の気配を感じやがったけど、あえて、その手に指輪がされているかどうかも見ることはしなかった……。

 マユはよ、美優の命の灯が消えてからは、仁科香奈の姿になってるぜ。

 仁科香奈ってのは、前にも言ったけどマユとクララの姿を足して二で割ったアバターだ。自分の本来のアバターは拓美に貸してあるんで、これ以外はケルベロスのポチの姿しかねえ。ポチの姿でうろついていたら、すぐに外に放り出されっちまうからな。

 由美子と真田のことは気づいていた。あの清純で献身的な看護を続けてきた由美子に、こんな過去があるとは思いもしなかったぜ。駐車場で二人が再会した時に、由美子の過去が思念といっしょに分かってしまったけど、二人の心が、きちんとケリのついた話っぽいんで、安心しておく。

 焼香の間、二人は意識の片隅でお互いを捉えていやがったけど、それ以上になることは無かった。ただ会葬者の中に四歳ぐらいの子どもを連れた女性を見たときに、一瞬由美子の心が揺らめきやがる。

 真田との間にできた子を産んでいたら、ちょうどその子と同じくらいの年格好になっていた……グ……由美子の人生もどこまで深けぇんだ。


 出棺の直前、親族で棺を花で満たしてやるときに、いろんな思念がいっぱい飛び込んできちまって、マユは一瞬クラッとしちまったぞ。

 あたりめえだけど、美優の母親、美智子の悲しみが黒羽と並んで一番大きい。その美智子をいたわる気持ちは、ポーカーフェイスの光ミツルが一番だった。探ってみてえ気持ちになったけど、もういっぱいいっぱいだから止しておくぜ。

 黒羽は、美優の顔を見て、美優と、ちゃんと通うところがあったんだろう。小さくうなづいて、黒羽自身の手で棺の蓋をしてやったぜ。

 小悪魔の悲しさ。人間や、幽霊、妖精のたぐいの姿や思いは分かるけど、天国に行く魂は見ることも感じることもできねえ。
 スタジオで美優の魂はオチコボレ天使の雅部利恵の手の中でエメラルドグリーンに輝いていやがった。それが、美優の魂が見えた最後だったぜ。

 美優の棺を閉じて、それから由美子と二人で親父の棺を閉じやがる。

 親父にも美優の葬儀を見届けさせてやろうって気持ちなんだ。

 
 パアーーーーーン


 二台の霊柩車のクラクションが長く響いた。

 あとは大丈夫だろう。

 人間たちは、苦悩を乗り越え、支えながら生きていきやがる。

 マユの仁科香奈は乃木坂学院高校の制服を着ている。明日には退学届けが受理され、週末にひかえたオモクロの研究生のオーディションを受ける。

 なんせマユのでっちあげだからな。周囲のやつらの記憶や記録を、一から用意なんかできてねえ。簡単に乃木坂学院の退学生としての仁科香奈しか用意ができちゃいねえんだ。

 とにかく、これでよ、脳天気なオチコボレ天使の雅部利恵が作った想色クロ-バー、オモクロをなんとかしなければなんねえ。そう思い定めた、仁科香奈姿のマユだったぜ。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・160『バイトのトラブル』

2024-12-17 11:11:23 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
160『バイトのトラブル』   




 手がカサカサになる。

 一日中、紙に触っているからだ。伝票や商品の包装紙に触れまくりなんで、指先だけじゃなくて手の脂も持っていかれる。特に右手の小指側の側面は伝票のインクなんかも付いて悲惨な状況。

「これつけるといいわよ」

 腕カバーの手がオロナイン軟膏の小瓶を進めてくれる。

 腕カバーの主はパートの安藤さん。

「あ、ありがとうございます(^_^;)」

 ありがたくオロナインをすり込んでいる間に、わたしの三倍くらいの速さで伝票を書いていく。

「さすがですねえ」

「慣れよ慣れ、業界特有の略字とか崩し字があるからねぇ……あなたたちは、普通の字で丁寧を心がけてくれるといい。ちゃんと着くことが大事だから……」

 この間にも二枚仕上げてる。大したもんだ。

「時司さんは、宮之森なんだって?」

「あ、はい。郵便の加藤君に頼まれて、一週間だけ」

「いやぁ、助かるわ、女の子みんな辞めちゃったからねぇ」

「アハハ、みたいですねえ……」

 あれから四人入って来てなんとか回ってる。こないだまでは八人いたらしい。

『ボケ! どこに目ぇ付けとんじゃ!』

 関西弁の怒鳴り声がして、女の子たちの「ヒ」「キャ」って悲鳴が続く。

『一人の不注意が事故に繋がるんじゃ! 気ぃつけさらせ!』

「もうッ」

 安藤さんはサッと立ち上がると、サンダルの音を響かせて郵便の方に速足で行った。

『ちょ、浩一!』

『なんや、オバチャン!?』

『ちょっと、こっち……』

 柱の陰から覗いて見ると、安藤さんがオッサンをワゴンの陰に連れて行く。

 いいかげんに!  せやかて!  言ったでしょ!  注意してるだけや!  怒鳴るんじゃない  いや、オレは!  ほら、怒鳴ってる  怒鳴ってへん! ちょ、もぅちょっとこっち……

 なんか安藤さんはオッサンを奥の発送ホームの方まで引っ張って行った。あそこは、二階だけど地方発送のトラックが上がって来るんで、少々の怒鳴り声でも聞こえない。

 10円男がショックで顔色の無くなった女の子を休憩所までエスコートしていくのが見えた。あんなに優し気なところは初めて見る。

「また、やっちまったのかぁ」

 すぐそばで声がして、振り返ると、フロアでたった一人ネクタイを締めている課長が立っている。

 ハァ~(*´Д`)

 溜息一つついただけで、そのまま回れ右して事務所に戻って行ってしまう。

 女の子は戻ってこなかったけど、五分後には何も無かったように作業が再開される。

「時司さん、ちょっと郵便の方回ってくれる?」

 安藤さんがすまなさそうに手を合わせる。

「あ、はい、分かりました」

 
 郵便の方は、事務所から女子事務員の人が来て、もう一人のバイトの子と並んで……というか、オッサンから守るようにして伝票を書いている。この事務員さんも安藤さんみたいに作業が早い。

「グッチはこっち……」

 10円男にオイデオイデされて着いた配置はベルトコンベア。

「上の方から商品が流れてくるから、地方発送の奴をハネて、こっちのワゴンに積んで」

「あ、うん、分かった」

 納品された商品は三階以上で包装され、市内も地方もゴタマゼで流されてくる。それを目視でチェックして地方発送の商品を回収というか取り込む仕事。

 いちいち住所を読んだりはしない。左上に何種類かの記号があって、それを見て分別するんだ。

「取り切れないのは、そのまま流してしまえばいい」

「どうなるの?」

「あとで、一階の担当がワゴンで運んでくる」

「あ、うん、分かった」

「万一、商品が溢れたり、事故が起こった時は、このボタンを押して」

 コンベアのガードのところに赤と緑のスイッチが付いている。

「じっと見てると酔うから、商品が途切れたところで視線を外すといいよ。なにか質問は?」

「いまのところ無い」

「じゃ、がんばって」

「うん」

 返事をすると、コンベアがグニっと曲がったもう一つのチェックポイントに行ってしまう。どうやら、この郵便発送セクション周辺のあれこれを任されてるっぽい。

 こんなのバーコード付けて機械に読ませれば一発なのに……と思ってしまう。人件費は1/10ぐらいになるだろうし、さっきみたいに関西弁がキレることもないだろうし、これで時給330円……ありえん……と思ったら、さっそく目が回ってしまった(^_^;)。 


 お昼は安藤さんが五階の食堂に連れて行ってくれる。たぶん、課長なんかと相談してフォローにまわってくれてるんだ。


 お昼は外に行く人と食堂で済ませる人と半々。学食の半分も無いフロアだけど、値段が安い。ランチなんて100円で学食の五割り増しくらい。ご飯の大盛りはびっくりするくらいで、値段は並と同じ。

「浩一(関西弁のオッサン)、じつはわたしの甥なのよ」

「あ、ああ……」

 あの素早い反応、遠慮のない注意の仕方、タダモノではないと思ってたけど、お身内だったんだ。

「あの子、大阪でしくじってね、それでうちを頼ってやってきて、それで……ここに、身分は、一年更新の準社員。なんとか落ち着いて欲しいんだけどねぇ。明るくていい子なんだけど、気が短くって……それに、関西弁というのはきつく聞こえるでしょ」

「あ、ああ……」

 安倍晴天との関わったり、万博で大阪に行ったりで、必ずしもきつくはないと思うんだけど、そんな傾向はあるのかもしれない。

「まあ、時司さんは、他の子より慣れてるみたい……あ、ごめん、失礼な言い方しちゃったかな」

「あ、いいえ。そう言われると、ちょっと嬉しいかもです」

 まあ、この二年、いろいろあったしね。

「わたしね、宮之森にお茶とお花教えに行ってたのよ」

「ええ!?」

「一時はお琴も教えてたんだけど、高校も予算とか厳しいみたいで、この二年ほどはご無沙汰してるの」

「ああ、そうだったんだ」

 茶華道部の根城の作法室はMITAKAでも使うんで、少しは知ってるけど、お師匠さんが来てのお稽古は話だけで見たことがない。

「今は年に二度ほどお免状持ってる若い人に行ってもらってる。まあ、学校の部活じゃ上手になってもお免状は出せないからね」

「安藤さんて、お師匠さんだったんですね」

「うん。でも、家でお弟子とってやるところまではしないし」

 まあ、いろいろ事情はあるんだろうけど、知り合って三日目のバイトが踏み込んでいい話でもないだろう。

 ランチのエビフライを尻尾の先まで食べて、安藤さんは先に行ってしまう。

 ポリポリ

 わたしも尻尾の先をかじっていると10円男。

「さっきは、ありがとな」

「え、あ、うん」

 こいつも一人前に気を使ってくれる。まあ、自分が無理を言って引きずり込んだんだから当然か。

「コーラでも奢るよ」

 というんで、隅の自販機に連れて行ってくれる。

「え、ええと……」

 知ってる自販機と違う。小さな縦型の窓が付いていて、ビンのコーラが少し斜めになってギッシリ詰まってる。

 ドン ゴロン

 すごい音がして取り出し口に、そのまんまのビンコーラが落ちてくる。

 プルトップとか付いてないから、どうしていいか分からん。

「あ、ここが栓抜きだから」

 縦型窓の横に楕円形の窪みがあって、そこにビンの王冠を噛ませる。

 ガキ!

 けっこうな音がして、10円男の王冠は無事に外れる。

 カキ コキ クキ

 三回失敗して、四回目で成功。

 いつもの10円男なら「ブキッチョめ」とか言うんだろうけど、今日は穏やかに見ている。

 少しは成長したかと、二人でグビグビコーラをあおった。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
 
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くノ一その一今のうち・96『世田谷ボロ市』

2024-12-16 16:21:07 | 小説3
くノ一その一今のうち
96『世田谷ボロ市』そのいち 




 まあやと二人で『世田谷ボロ市』に来ている。


 ロケ先が京王線沿いだったので、そのまま電車に乗って下高井戸で世田谷線に乗り換え四つ目の上町で降りる。

「うわぁ、けっこうな人だねぇ」

 ロケ先もけっこう賑やかなショッピングモールだったんだけど、この売れっ子女優は改まって驚く。

「え、おかしい?」

「ううん」

「ウソ、いま笑ったでしょ」

「いや、そんなことは……(^_^;)」

 明けて三年の付き合いになるまあやに嘘は通じない。

「いや、無邪気に驚いてるからさ」

「だって、仕事はさ、体力も気力も本番にとっておかなきゃだからさ」

「なるほどぉ」

 追及はしない。ペース配分を覚えたってことで、スルーしておく。

「すごいねぇ、この人波が上町まで続いてるんでしょ。2キロぐらいかなあ」

「そうねえ、直線だと1キロほどだけど、枝道にも出店が出てるから、合わせたらそれぐらいあるかもね」

「渋谷とかアキバは、人も店もすごいけど、なんだろ、このボロ市がすごいと思うのはさ」

「400年、いや450年の歴史だろうねぇ、始まりは戦国時代の楽市だっていうからねぇ」

「450年かあ……」

 遠い目をするまあや。

 450年前、まやのご先祖の秀吉はまだ織田家の家臣で、苗字を木下から羽柴に切り替えたころだ。

「ソノッチは知ってるよね、羽柴の苗字の由来?」

「うん、丹羽長秀と柴田勝家の苗字から一字ずつもらってつけたんだよね」

「うん、信長さんは大笑いして、丹羽も柴田も苦笑いして喜んだんだよね」

「苗字をゴマすりの種にするなんて思いつかないよね、ふつう」

「豊臣って、元来は平和主義なんだ……」

「そうだね」

 現代の豊臣家は、秀頼の子や孫の代で分裂して二十代あまり。木下家と鈴木家に分かれたまま対立している。草原の国のクーデター騒ぎが頓挫して最悪の事態になることは避けられた。今は停戦状態だけども両家が存亡をかけた対立状態にある。そのことに、この豊臣家嫡流(木下の方も自分こそと思ってる)のお姫さまは心を痛めている。

『よう、ソノッチじゃねえか!』

 人ごみの中から声が上がったかと思うと、古本屋の親父だ。

「え、忍冬堂さんも出店してるんですか!?」

「ああ、モチよ。世田谷が北条の領地だったころから店は出してる。楽市ってのは忍びにとって大事な情報源だからなあ」

 人が聞いたら、忍者オタクの痛い話だと思うだろうけど、この忍冬堂は百地流忍術使いの上忍の家系らしい。

「こっちは、今を時めく――鈴木まあや(声を潜めてる)――のお忍びだな」

「アハハ、別に忍んでませんよ(^_^;)」

「そうだ、社長から言付かってたんだ」

「え、うちの社長?」

「ああ、代官所の手前に神棚の出店出してるジジイがいるから、そこで神棚もらってくるようにって。お代は済んでるはずで『甘味喫茶とどろき』っていや分かるってさ」

「あ、うん。ありがとう」

 お礼を言って人波に戻る。渋谷とかとは違って年配の人が多い。といってもとげぬき地蔵ほどではなくて赤パンツを売っているような出店は無い。

「神棚って?」

「ああ、去年、お店の近くの木が倒れて、その衝撃で神棚が落っこちたままなの……でも言付かっていたって……」

「フフ、読まれてるわね( ´艸`)」

 ウウ、油断がならない。

「あら、いい匂い」

「あ、代官餅!」

 代官餅のお店を見つけ、まずは腹ごしらえ。神棚なんか持ったらお店に入れないからね。

 まあやはきな粉餅、わたしは大根おろしのを買って半分こ。

「できたてだから、アツアツ……」

 二人でフーフーやりながら、お茶まで頂いて、アンコのもおいしそうなんで、それも買ってしまう。

「ウウ、ボロ市450年の味がするぅ~」

「そうだね~」

 機嫌よく食べたけど、スマホで検索したら意外と新しく昭和50年からだとあった。まあ、美味しければなんでもいい!

「あ、手作りアクセ!」

 間口一間くらいのところで、オッサンが器用に真鍮線を曲げてアクセの実演販売をやっている。

 この手のやつは、あちこちでやってるけど、ボロ市でやってるのは微妙に場違いで、かえって面白い。

「オーダーメイドもやりますよぉ、八文字以内なら税込み1000円ですぐにできますよぉ」

 オッサンが意外に若やいだ声で宣伝しながら、ラジペンをクネクネ、あっという間に一個こしらえて女の子に渡した。

「うわぁ、かわいい!」

「「…………たしかに」」

 たしかに、アルファベットのくねらせ方が独特で、ちょっとイカシてる。

 で、オッサンの策略に乗って、SonoichiとMayaのアクセを頼んでしまう。

「ちょうど100番目のお客さんなんでオマケです」

 そう言ってデザインリングをくれた。

「「おお!」」

 喜んだんだけど、一個だけだからどうしようかと思う。

「あ、それ、トワエモアなんですよ」

「トワエモア!」

 まあやは喜ぶけど、わたしはお祖母ちゃんが口ずさむ「あ~る日とつぜん……」という歌い出しの懐メロしか出てこない。

「そこを捻ってもらうと……」

「「おお……」」

 それまで五弁の花だったのが二つに分かれて、別々の指輪になった!

「いいんですか、こんなに手の込んだものを」

 まあやはゆかしい子だよ(^_^;)

「ほんの手すさびです」

「ありがとう」「大事にしますね」

 二人で一人前の返事をして、代官所前に。

 場所を聞いていなかったらぜったい見つけられなかった出店からブツを受け取って代官所を横目に殺して世田谷駅に急いで、とりあえずはタクシーを拾って等々力の店に戻る。

 等々力渓谷は倒木や落石があって、その調査と復旧工事で遊歩道が閉鎖されて、店もほとんど開店休業。来年には調査や復旧工事も終わって再開できそう。

 それで、それまでは、まあやの付き人兼友人。少しはピンの仕事とかもね。

 来年は、ちょっと波乱の気配……いや、考えたら本当になってしまうかも。

 だから、もうしばらくはノホホン少女。

 春には活動再開の予感。では、またいずれ……。


☆彡 主な登場人物
  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
  • アデリヤ         高原の国第一王女
  • サマル          B国皇太子 アデリヤの従兄
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!91『葬儀・1』

2024-12-16 09:17:16 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
91『葬儀・1』 





 意地悪なくらいの秋晴れ……その青空に一点の黒いシミが見えたら――え、なんだ、あれ?――って見ちまうだろ。

 まあ、普通の人間なら、そのシミが自分の上に影でも差さねえ限り見ることはねえだろうがな。小はついても悪魔、たとえ影を落とさなくても見ちまう。


 その影が黒羽Dの妹の由美子だ。


 遺族控え室にいたたまれなくなっちまいやがって、あと五分で葬儀が始まろうってのに、由美子は葬儀場の駐車場に出てきやがった。

 親父の死は覚悟していやがったけど、自分より年下の義姉の葬儀をいっしょに出すとは思わなかった由美子だ。

 兄の黒羽Dも、美優の母親であるローザンヌのマダムも落ち着いていやがる。でも、悲しみに耐えているのは痛々しいほどよく分かる由美子だ。

 兄の英二にはクセがある。悲しみや怒りを堪えているとき、表情は穏やかなんだけど、背筋が伸びやがる。
 人が見て分かるほどじゃねえんだけど、兄妹だからよく分かる。針でつつけば破裂しそうなほどに兄は悲しいってことがな。
 
 女なら悲しいだけ泣けばいい。しかし、男は、たとえ身内の葬儀でも涙を見せちゃいけない。

 母親が亡くなった時。当時、まだ元気だった親父が由美子と英二に言った言葉だ。

 まだ中学生だった由美子は、人目もかまわずに泣いたが、兄は泣かなかった。ただ、いつもより少しだけ背筋が伸びていやがる。それに気づいたのは、骨揚げの時だった。

――あ、姿勢を崩したら、お兄ちゃん泣いちゃうんだ――妹の直感で、そう思いやがった。

 高校生の時、ローマ法王が「こんなに悲しい姿はありません」と世界に示した写真がある。

 大空襲の後、亡くなった赤ん坊をオンブして火葬の順番を待っている少年の写真。

 少年は、まるで天皇陛下のご来臨を待って気を付けをしている兵隊みてえだった。少年は、それこそ近衛兵みてえに真面目な表情なんだけど涙は見せちゃいねえ。少年は、こうしていないと背中の赤ん坊を抱きしめて身も世も無く慟哭しちまう。不甲斐ない兄きとして、ここで泣いちゃいけねえ、泣いたら背中の弟妹の後生に障る。

 あの少年に兄きはそっくりなんだ。

 二人分の喪主として控え室にいる兄は、母の骨揚げの時と同じくらい背筋を伸ばしてる。もう口やかましい父もいないんだから、美優ちゃんのために泣いてやってもいいのに。あんなにお父さんに反抗ばかりしていたくせに、こういうところは、どうして親子似ちゃうんだろ。由美子は思っちまう。

 でも、ふと気づくと涙していない自分にも気がついた。気づくと、間欠的に悲しみが胸にせきあげてくる。ひょっとしたら、自分が最初に崩れてしまうかもしれない。また、崩れない自分も予感され、それはそれで、いたたまれなく、控え室を抜け出てきやがった。

「あ……」

 自分もバカなのに気付きやがる。

 タバコを吸おうとして、タバコを持ってきたのにライターを忘れてやがる。指にタバコを挟んだまま、どうしようかと思っていると、すっと横から火の点いたライターが差し出された。

「わ……」

 テレビドラマの抜けた三枚目の脇役みたいな声が出てしまった。

 ライターを差し出したのは、三年ぶりに顔を合わせたアイツだった……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 由美子      英二の妹
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・159『伊勢半配送センターでバイト』

2024-12-15 15:04:49 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
159『伊勢半配送センターでバイト』   




 というわけで、大浜線谷口(やとぐち)駅で降りて、伊勢半デパート配送センターを目指して歩いている。


 というわけと言うのは、おとついの帰りのホームで十円男と出くわしてバイトの助っ人を頼まれたから。

 谷口は大浜市に三つある駅の一つで大浜高校に通う生徒の半分はここで乗り降りするらしい。配送センターは大浜市の東の外れ、令和の谷口に足を踏み込んだことのないわたしは「ああ、大浜市の田舎なんだ」という感想。

 大浜市は近在では大きな街だけど、東京や横浜とは比べようもない地方都市。だいいち大浜に伊勢半デパートは無い。地価の高い京浜地方を外して物流センターを持ってきたというのが正直なところなんだろうね。

 でも、名にし負う天下の伊勢半、五階建てのビルの上には営業店と同じ『伊勢半』のロゴマークが掲げられ、マークの下の『配送センター』の文字に気づかなければ買い物客が入って来そう。

「ああ、それは無いなあ」

 昨日事務所に連れて行ってくれた10円男はあっさり言う。

「デパートというのは、都心とか繁華街にあるだろ。ここは、そうじゃないから、看板に気づいても――ちょっと違う――と思う。建物も色気が無いから、すぐに営業店じゃないことに気づく」
 
 色気が無いというところで、わたしの顔を見たけど、それには触れないでおいてやる。

 ブロロ ブロロ ゴゴ ゴゴゴゴ ブィーン ブブブ 

 角を曲がって建物の搬送口が見えてくると、出撃前の軍事基地かと思うような騒音と車の臭い。

「ガソリン臭~い」と言ったら「トラックはディーゼルだからガソリンじゃない」と奴は訂正する。女子にはどっちもいっしょ、ただただやかましくて臭い。

 ガッチャン

 タイムレコーダーがカードに刻印する時の音と手ごたえは面白い「おう、たしかに確認したぞ」ってベテラン守衛さんが言ってる感じがする。

 ブワアアアアアアアー

 車の音が中にまでぇ……と思ったら、ごっつい空調の音。それに、機械や油の臭い、紙や梱包材の臭いが混ざって、いかにも昭和の職場って感じ。

 青春の全てをここに掛けろと言われたらごめん被るけど、一週間限定のバイトだと思えば面白い。

 パンパン! パンパン!

「さあ、始業時間やでえ、みんな、チャッチャと持ち場に付けよー!」

 元気よく手を叩きながら関西弁のオッサンの声が響く。

 いちおう会社のロゴの入った作業着は着てるけど、頭にねじり鉢巻き、耳にボールペン、手には指先ちょん切った軍手、腰に手拭いぶら下げた姿は伊勢半のイメージからは程遠い。

「おう、メグリィ、仕事は覚えたかあ!?」

「はい、ボチボチ!」

「さよか、はよ慣れて小包の方に来いよお~」

「はい、そのうちに~!」

 適当に返事しておく。

 大阪弁のオッサンは、正規の職員じゃないけど、郵便小包のセクションを任されていて、事実上、二階の発送場のボス。さっきの号令でも分かる通り、フロアの仕事の差配をやっている。本物の課長は別に正規の社員のおじさんがいるんだけど、このおじさんは事務所の方に居るらしくて、現場にはあまり顔を出さないんだとか。

 わたしの持ち場は、貨物と呼ばれていて、大型の商品や梱包や取り扱いにコツがいる酒類なんかを扱っていて、わたしは、そこでひたすら伝票を書く仕事。

 伝票を手書きなんて、令和じゃ考えられないんだけど、ここで扱う商品のほとんどは手書き。それで、一般的に男よりは字の綺麗な女子があてがわれる。

「三枚の複写だから、強いめに書いてね」

 日ごろは三人で伝票書きをやっているおばさんが最初に注意してくれる。

 なるほど、四枚つづりの伝票の三枚は裏にカーボンインクが付いている。

 建物の上の階はよく分からないんだけど、納品された商品を包装してコンベアでうちの二階に下ろしてくる。近隣の湘南や京浜地方はそのまま一階に送られて、それぞれの営業所に送られる。それ以外の地方便をうちで引き受けて、郵便や小包に仕立てて、二階の発着場から地方に送り出すという仕組みになっている。

『アホンダラ! どこに目ぇ付けとんねん、そんなとこ置いたらけ躓くやろが!』

 また関西弁が怒鳴ってる。

 実は、この関西弁の当たりがきつくて、伝票係りの女子がみんな辞めてしまって困っていたらしい。

 高校生らしい男の子がビビっちゃってるけど、それをオッサン込みでなだめに行ってるのは、なんと、あの10円男だった。


 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!90『スパーク!』

2024-12-15 10:43:21 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
90『スパーク!』 




――美優、聞こえってっか?――

――え、だれ?――

――ええと……ワ、ワクチンの精だ! おめえも、さっきお礼を言ってたじゃねえか(''◇'')――

 正体ばらすわけにはいかねえ、かと言って神さまとか、神の使いとか言うのは利敵行為だしな。悪魔なんて言ったら腰を抜かすかもしれねえ、いや、ショックで即死かもしれねえ。で、もともと一週間だけ命を伸ばすワクチンを注射したってことにしてたから、ワクチンの精ってことにした。文句あっか!

――ワクチンの精?――

――ああ、すっげえワクチンだから、こうやって話もできんだ。おめえも、さっきお礼とか言ってたからよ。そ、そのぉ、以心伝心ってやつだ(''◇'')――

――そ、そうなんだ――

――ああ、薬とかワクチンはよ、何百何千て人間の努力と実験動物の命を使った結果に生まれるものなんだ。だからよ、そういう情熱や命が凝って妖精みてえになるんだ。文句あっか!?――

――ううん、信じる。それで、なんの御用かしら、もうじき死ぬから、あんまり時間がないわよ――

――美優の気持ちと、みんなの励ましとか好意で、マユ、あ、あたしの名前な。マユは超絶進化しちまって、ガン細胞をやっつけられるようになったんだ。スゲエだろ<(`^´)>!――

――そうだったんだ、どうもありがとう――

――それで……ごめん。ガン細胞が一個だけ残っていやがって、魔法の効き目がきれたとたんに増殖し始めやがった。がんばってやっつけてるけど……ううん、がんばってやっつけるからな――

――…………――

――美優?――

――もういいわ、マユさん。本当は、夕べで尽きる命だったんだもん。たった一日だったけど、十分に満ち足りていたから――

――弱気になんな! マユもがんばるからよ!――

――うん。じゃあ、痛みと苦しさだけ、なんとできるかなあ。この番組が終わるまででいいから……――

――わ、分かった!――

 悪魔ってのはよ、自分の怒りとか想いで動くもんでよ。あんまり人からお願いされるもんじゃねえ。だ、だからよ、思わず力が入っちまったぜ!

――エ! エロイムエッサイムッ(``>▭<``)!!――

 そのとたん、美優の痛みと苦しさが無くなり、顔色ももどってきやがった。

――な、元気になっただろがあ!――

――ほんとだ、楽になった……死んで楽になったってことじゃないでしょうね――

――だったら、ほっぺたでもつねってみやがれぇ(´⚰︎` )――

――あ、だいじょうぶみたい――

――って、つねってねえじゃねえか――

――いま、英二さんの温もり感じたから――

 あ、そういや、黒羽Dの奴、肩に手を回して密着してやがる!

――ありがとうワクチンさん。オモクロ対決の結果だけは見て逝けそう――

 よし、これでいい。

 そんで、ここまでだ。

 落ちこぼれ小悪魔、限界を突き抜けて美優の痛みを取ってやったけど、命そのものを助けてやることは……ひょっとしてできるかもと思ったけどよ、やっぱり無理だ。

 イテテテ……こういう人間的な反省も違反なんだろーな、カチューシャがギリギリ締め上げてきやがるぜ。

 分かってるよデーモン先生、もうこれ以上はやらねえよ、力も残ってねえし……やりたけりゃ、一気に締め上げて、マユを締めつぶせばいい。文句なんか言わねえからよ……

 ピカ!

 その時、目の前が真っ白になって、消えかけの美優の心に光るものがあったぞ。

 いいや、光じゃねえ。スパークだ、気がかりのスパークだ。

 超ご先祖のサタンがルシファーって大天使だったころ、神の逆鱗に触れて天界から堕ちる時、天界や神の事を心配した時に全身からほとばしったスパークみてえだ!
 
――お義父さんは……?――

――あ、元気だよ――

 グロッキーだったし、平然と言ったつもりだったけど、美優には分かっちまった。

――お亡くなりになったのね……――

――……昨日、黒羽Dが電話した直後。お父さんの言いつけで、この番組が終わるまでは、言っちゃいけないって、みんなには言ってるみてえだ――

 夕べも病院に行こうかと、黒羽は妹の由美子に電話した。持ち直して元気になったそうで、「今夜は二人で居ろ!って言ってる」と由美子は明るく言っていた。けどよ、スマホから漏れてくる由美子の声が、少し明るすぎるように聞こえやがった。でも、自分たちの幸せの明るさにひっぱられて、すぐに忘れた。それが、自分が、こういう状態になって、また気になりだしやがった。

 そんなことで自分を責めんじゃねえ!

――そう……――

――でも、二人のことは本当に喜んでたみてえだぞ。このこと、旦那にはナイショだぜ――

 旦那の親父のことを思いだしただけで、少し持ち直しやがった。

 美優ってやつは……

――うん……あ、足の感覚が……立てない――

――ちょっと待って――

 マユは、大急ぎで脊髄のガン細胞をやっつけた。全部じゃねえけど、慣れてきて、どこから攻めたらいいか分かるようになってきたみてえ。我ながらがんばれるもんだぜ。

 ギリギリギリ……

 カチューシャが締まってきて、マユの頭は瓢箪みてえにくびれてきやがった。根性で声は出さねえぞ!

 それで美優は歩けるようになって、化粧室に行きやがる。身を整え、メイクをやり直そうと思いやがったんだ。

「ちょっと化粧室行ってくる」

「すぐ戻ってこいよ。もうじき本番だからな」

「うん」


 化粧室から戻って、席についたとたん、また足の感覚がなくなっちまいやがる。


 で、ぞいよいよ本番が始まった。


 スタジオの左右にひな壇が組まれ、それぞれAKRとオモクロのメンバーが陣取る。センターには、大きなステージが組まれ、その奥が審査員席になっている。観覧席の者にも、審査ボタンが渡され、曲ごとに投票できる仕組みになっている。そして、視聴者もテレビのリモコンで投票できる仕組みにもなっているぞ。

 二曲ずつのメドレーで、トークが入り、投票することになっている。

 八曲目までは、伯仲のシーソーゲーム。

 九曲目、オモクロの『秋色ララバイ』で998点のポイントがついた。1000点満点なんで、ほぼカンペキだ。それまで、AKRはオモクロに2点の差を開けられていたので、苦しいところだぜ。

 緊張とむき出しの闘志で、メンバーがステージにあがった。

――力みすぎてる――

 黒羽は、ディレクターの勘で、トチリを予感しやがる。

 そして、予感は曲が始まる前のMCとの会話のところで現実になったぞ。

 キャ!

 張り切りすぎた知井子がジャンプしてバランスを崩し、ステージから落ちてしまいやがった。それも、助けようとした矢頭萌を巻き込んで……で、結局、この知井子のドジでスタジオは爆笑になり、メンバーはリラックスして『コスモストルネード』を歌い上げることができた。知井子もただでは転ばなくなったみてえだ。

 得点は999点。オモクロとの差は1点にまでつまった。

 そして、いよいよラストの曲。

 オモクロは再結成のときの『この道を行け!』をぶつけてきた。オモクロは、この曲で路線を変更、おもしろクローバーから想色クロ-バーにグループ名を変えた大ヒットした記念の曲だぜ。
 
 点数は998点。AKRは次の曲で満点を出さねえと優勝できねえ。999点で、かろうじて同点。AKRは最後に、この曲を選んだ!


『オーバーザレインボウ』


 むろんアレンジしてやがる、古さは否めないけどよ。思い切った選曲だぜ。この選曲は、会長が黒羽から、美優の父のオルゴールの話を聞き、急遽ラストに加えたんだと。

 前奏はオルゴールそのまま。美優は、頭の中が、懐かしさと、愛おしさで一杯になりやがる。

 曲の主題に入ると、とたんに曲はビビットになりやがる!

 振り付けも激しさの中に、品の良いチャーミングさがありやがる。振り付けの春まゆみは会長にドヤ顔、それを受けて会長は、方頬で笑いやがった。

 得点は……998点……しかし、観覧席のボタンが一人だけ押されていねえ。そして、ほんの一秒遅れて、それは押されたぞ。

 999点、総合で同点。AKRからも、オモクロからも、スタジオのみんなからも歓声が上がった。黒羽も思わずステージにあがり、メンバーのみんなとハイタッチ、カタキのオモクロのディレクターの上杉とも肩を叩き合って握手した。


 ……そして観覧席……笑顔のまま美優は息絶えていやがった。


 美優は、最後の力を振り絞ってボタンを押しやがった。

 一秒かけて全身の最後の最後に残った力でよ……。

 マユは、美優の中で慟哭したぞ。とうとう美優を、やっぱり美優を、助けることができなかった……。


――よくがんばったよ、マユ――
 

 その思念は、突然飛び込んできた。

 それは……オチコボレ天使の雅部利恵のだ。そして、スタジオの隅にいる利恵の手の上には、今肉体から離れたばかりの美優の魂が乗っていやがった。
 
 それは美優らしい上品なエメラルドグリーンに輝いていやがる……おいしいところを持っていきやがるぜ、天使ってやつめえ!



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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やくもあやかし物語2・084『デラシネが来てくれた』

2024-12-14 10:35:51 | カントリーロード
くもやかし物語 2
084『デラシネが来てくれた』 




『なにかお困りですか?』

 ああ~なんか落ち着く(^_^;)。

 交換手さんの声は聞いているだけで落ち着くような気がするよ。いっそ送話器の穴に吸い込んでくれて学校の自分の部屋、いっそ、日本の自分の家に連れて行ってくれたらとか思ってしまう。

『あいにく、そういう技能は持ち合わせておりませんので』

 ああ、読まれてる(^△^;)。

『デラシネがこっちに来てくれたんだけどね、別次元化したみたいで、こっちはデラシネのこと見えてるんだけど、あの子からこっちは見えないし、話もできないなの。同じ砂浜なんだけど、ちがう砂浜になってて、へのへのもへじを描いたら切れ切れになって……』

「ああ、それじゃ分かんねえと思うぞ」

 ハイジがすごく真っ当なことを言う。

『いいえ、長い付き合いですから分かりますよ』

「「ほんと!?」」

『きっと、あの日の真岡のようなんですね……』

 あ……そうだった。交換手さんはソ連軍が攻めてくる真岡の電信局で、海の向こうの日本を思いながら死んでいったんだ。

『ミチビキ鉛筆さんは居ますか?』

「グタっとして使い物にならねえ」

 ハイジが先に応える。

『受話器をミチビキさんの耳もとに持って行ってください』

「あ、うん」

 一センチあるかないかの受話器を指でつまんでミチビキ鉛筆の芯の下に持っていく。

「そこが、こいつの耳なのかぁ?」

「たぶん……」

『…………………』

 場所は合っていたようで、ヒソヒソと交換手さんの声がする。

『……………だけでいいんです』

『…………………』

『はい、よろしくお願いします……話はつきました。ミチビキ鉛筆をオモイヤリの先っぽに載せて、鉛筆の芯が光った方角に進んでください。それじゃ、ミチビキさん、よろしくね』

 そこまで言うと、受話器は『ツーツーツー』と任務終了の音がして、御息所のポケットに戻しておく。

 オモイヤリの穂先の上で二三度回ったかと思うと、ピタッと二時の方角……一時の方角……六時の方角……と向きを変えて、その都度その方角に進む。

「あ、デラシネ来るぞ!」

 タタタタタタタタタタタタタタタタタタ!

「デラシネ!」

 フワ

 思わず声に出て、正面から掴まえようとすると。風圧だけを残してすり抜けていくデラシネ。

「風を感じた、もう少しだぜ!」

「うん、がんばろ!」

 オモイヤリのミチビキ鉛筆をかざして、さらに二度三度と次元の狭間を超えていく。

 ドッシン!

 右の肩に衝撃! と、思ったら、デラシネがタタラを踏んで三メートルほど先でひっくり返る。

「やったぜ!」 「やっと会えた!」「やっぱり居たんだ!」

 砂を払って立ち上がるデラシネ。

「あきらめないでよかった(#^▢^#)!」

 あんなに愛想のなかったデラシネ。やっと小さな声で、そっけなく喋るようにはなったけど、こんどはハイジに負けないくらいピョンピョンしておっきい声で叫んだよ!

「ありがとう、デラシネも手伝いに来てくれたんだね!」

「ううん、手伝いじゃない!」

「「え?」」

「じつは、もう解決したんだ」

「「ええ?」」

 ハイジといっしょにビックリすると、どこかであいつらも息をのむような気配がした。

「こないだ、ナザニエル卿と露天風呂で話しただろ」

「あ、うん」

 あの露天風呂で、ナザニエル卿はやつらのことや、学校を森や敷地ぐるみ包んでしまう大結界の話をしてくれたんだ(044『露天風呂のナザニエル卿』)。

「あの温泉は性質がいいんで魔法の効きがいいって言ってただろ」

「あ、うん」

「敵もそれに気づいて、キーストーンを露天風呂に隠したんだ」

「「ええーーー!?」」

「派手に暴れまわって持ち逃げしたように見せかけて、露天風呂の岩の隙間に隠して、後で取りに行く……マジックみたいなことを狙ったんだ」

「そうか、あそこは隠れるにはもってこいだから、秘密の話しもできたわけで、つまりはモノを隠すにももってこいなんだ!」

「ここにいたら、果てしない消耗戦が続くだけ。さっさと戻って、破れ目は封印してしまおう! そういうことになった!」

 ザワザワザワザワ!

 デラシネが言い切ると、海の上や砂浜の上の空が騒めき始めた!

「早く逃げなきゃみてえだぞ!」

「簡単に言うけど……」

 ここまでの道のりを思うと、走り終えたマラソンをもう一度やれと言われたみたいで腰砕けになりそうだよ。

「ちょっと貸して!」

「え?」

 返事も効かずにオモイヤリごとミチビキ鉛筆を取ると、グッと念を籠めるデラシネ!

 ビビビビビビ!

「セイ!」

 帯電したようにスパークを放つミチビキ鉛筆を投げると、ミチビキ鉛筆はオモイヤリの上で激しく回転すると三人の目の前を指した!

 ピシ!

 鋭い音がして、さっきとは比べ物にならないほどハッキリした脱出口が現れた。脱出口の向こうには露天風呂が見えてる!

 飛べええええ!!

 そう念じると、脱出口がググっと迫って来て三人を包んだ。

 ドッコーーン

 瞬間、後ろでくぐもった音がして、間一髪であいつらの攻撃を避けたことが分かったよ!


 ドッポーン!


 水しぶきを上げて露天風呂に落ちた。

 ちゃんと服も脱衣場の籠に収まっている。

「ああ~助かったんだぜ~~」

 ハイジが瞬間でくつろいで、オッサンみたいに岩を背に大の字になる。

「もう、寛いでる場合じゃないよ、みんなに報告しないと」

「あ、でも……」

「「ああ……」」

 籠がフワフワ浮いて、脱衣場の洗濯乾燥機の方に行ったかと思うと、中身を放り込んで洗濯が始まってしまった。

「洗濯が終わるまでは仕方ねえみてえだなあ」

「だね」

「そうねえ(^_^;)」


 開き直って、デラシネと並んで岩に背を預けて寛ぐ。

 かけ流しのお湯の音や森の木々が戦ぐ音……そうだ、もうそろそろ年の瀬なんだ。

 シミジミしかけると、脱衣場の方で人の気配。

 カラカラとガラス戸が開いた。

「あ、戻っていたんだ!」「ヤクモぉ!」「おかえりぃ!」

 ドップーン! ザッパーン! ジャッブーン!

 目をへの字にしてネル! そしてオリビア! ロージー! クラスの女子たちが次々に湯船に飛び込んでくる!

 まだ敵をやっつけたわけじゃないけど、勉強もまだまだこれからだけどね。

 みんなに助けられて、やっとここまでって感じ。

 
 中学入学と同時にお爺ちゃんちに越して、妖まみれの三年間。

 このヤマセンブルグ王立民族学校……中身は魔法学校に来て一年。


 いろんなことがあったけど、なんとかここまで来たよ。


 いつか、また出会ってあれこれお話ができるといいね。

 見上げた空は、いつの間にか暮れて、フルムーンにもうちょっとというお月様が顔を覗かせていたよ。



 やくもあやかし物語2   おしまい

 

☆彡主な登場人物 
  • やくも        ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド  メイソン・ヒル  オリビア・トンプソン  ロージー・エドワーズ  ヒトビッチ・アルカード  ヒューゴ・プライス  ベラ・グリフィス  アイネ・シュタインベルグ  アンナ・ハーマスティン
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫 間人皇女 マーフォーク(半魚人) トバル(魔王子)  トバリ(魔王女)
 
 

  

 

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!89『二転三転のトルネード!』

2024-12-13 08:44:23 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
89『二転三転のトルネード!』 






 ガン細胞、みんなやっつけた……ぞ。

 美優の中でひっくり返るとガン細胞をカウントしていたカウンターが、小数第二位の『0』をヒクヒクさせながら明るく輝きやがる。もう疲れ切って、視界の中にそれしか見えねえ……スクショ撮って落第天使に見せてやりてえぜ……

 カシャ

 あ、撮れた。

「え…………うそ、奇跡がおきた!」

「美優……!?」

「わたしの体の中のガン細胞が、みんな死んだ……みたい」

「え?」

「頭の中にガン細胞カウンターが現われて、ヒクヒクしながら0.00が輝いてる!」

「ほ、ほんとうか!?」

「うん、ぜんぜん感じが違う、ガン細胞が居る気がしないよ!」

「よ、良かった! ほんとうに奇跡は起きたんだ!」

 二人の大声で、マダムも部屋に入ってきた。娘の最後の瞬間に立ち会ってやりたかったけどよ、新婚夫婦二人だけにしてやろうと、リビングで、じっと我慢をしていやがったんだ。

「お母さん、見て! わたし、予定時間を過ぎても生きてる。どこも痛くない、どこも悪くないんだもの!」

「美優……よかった! よかったね!」 

「うん!」

「やっぱり、ここはあの人の部屋だったからね、お父さんも助けてくれたんだ」

「そうね、早く死んじゃったから、残った自分の時間をくれたのかも」

 あ……マユがやったんだけどな、ま、いいけどよ……

「美優!」「お母さん!」

 今度は、母子で抱き合い、黒羽は会長に電話をした。会長の光ミツルも大感激で、明日の『AKR VS OMOKURO』の生放送に美優を誘うことを提案しやがった。

「お義母さんも、いっしょじゃいけませんか?」

 黒羽は、そう提案したが、会長と義母のマダムの両方から断られた。なにか二人の間には秘密のタクラミがあるみてえだったぜ。


――くたびれたので、しばらく美優の中にいたまま休憩するぞ――


 聞こえるはずもねえんだけど、なんだかシャクで、マユは美優の心に、そう告げて眠ったぞ。体は、もう一体、拓美とクララを足して二で割った仁科香奈というアバターを持ってんだけど、そいつは研究生に応募させて向こうに送り込んであるからな。

 もっともアバターがいくらあっても、考える頭は一つだし、美優のことでいっぱいいっぱいだったし……「無駄なことをやりおってからに」……デーモン先生の声が聞こえてきそうだけど、もう、どーでもいいし。

――どうぞ、ごゆっくり。ほんとうにありがとう――

 え?

「え?」

 美優は、あまりの感激と、マユへの感謝の気持ちで、半分声になって出てしまいやがった。

 正体までは分かってねえみてえだけど、なにかが自分の中で奇跡めいたことを起こしてるものが居るって分かってやがるみてえだ。

「あ、なんだか世界中の神さまにお礼が言いたい気持ちになって……」

「あらら、いつから美優は信心深くなったのかしら」

 ウフフフ( ´艸`) アハハハハハ(* ´▢`) ハハハハハ(⌒▽⌒)

 母が、そういうと、自分でもおかしくなって、三人で笑いやがる。

 神さまはねえだろうと思うんだけどよ、まあ、サタンも堕は付いても元々は天使だ。まあ、良しってことにしておこうぜ。

 笑い声は一階の店まで響き、ちょうど出勤してきたバイトのサエちゃんを驚かせた。


 あくる日は、文字通り目の回るような忙しさだったぞ。


 事務所に集まったAKRのメンバーは、会長から檄を飛ばされ、テレビ局のスタジオに行くまでに、振りやフォーメーションの確認をやった。テレビ局と事務所のスタジオでは尺がちがう。テレビ局のほうが広く、小さくまとまらないように、両サイドのやつは、立ち位置を念入りに確認したぞ。


『秋色ララバイ』は想像以上にすごかった。癪だけどな!


 いままで、レッスンを含め、この曲はメンバー以外には秘密にされていたけど、リハーサルで、その全貌が明らかになったぞ! マユのもう一個のアバターも仁科加奈って名前で、けっこう生き生きやってやがる! クソ、ご主人さまがこんなに大変だっちゅうのに。生成AIってやつに文句言う人間の気持ちが分かるぜ!

「やるわねぇ……」

 最年長の服部八重さえ唸っちまいやがる。知井子なんか口を開けたまま圧倒されてやがる。こら、ヨダレガ垂れてるぞ!

「わたしたちだってできてるわよ。相手がすごいと思えることは、自分たちも同レベルにはできている証拠なんだから!」

「円陣組もう!」

 AKRのリハになったので、マユの姿をした拓美は、ハッパをかけたぞ!

「AKR47、この日のためにがんばってきた。みんながんばるぞ!」

 リーダー大石クララのかけ声に、みんなが応えやがる!

「「「「「「「「「「 オー!!! 」」」」」」」」」」


 特急電車 準急停車と間違えて ボクはホームで吹き飛ばされた♫

 二回転ショック♪! ショック♫!!

 手にした花束、コスモストルネード! トルネードォー♪!


 体中に力がみなぎってきやがる。心配していたフォーメーションもバッチリきまったぜい!

 ニシシシ(*`艸´)

 今度は、オモクロのメンバーが、スタジオの隅で圧倒されていやがる。むろん、圧倒されっぱなしじゃねえ、ルリ子たちオモクロのメンバーの目は燃えてきてやがる……。

「ここまでこられたのは、メンバーもがんばったけど、ロ-ザンヌの衣装もすごかったからだよ。ほら、会長とお義母さんが、ファッション誌の記者にとりまかれているよ!」

 黒羽が上機嫌で美優の肩をたたいた。

「…………」

「どうした美優。顔色良くないんじゃないか……?」

「え……ううん。ちょっとスタジオの熱気にあてられたかな」

 そういうと、美優は、明るい笑顔を黒羽に向けやがる。

 がん細胞撲滅のシグナル、小数第二位の『0』がビリビリ震えてカウントを上げ始めてやがる!

 クソォ(╬☉Д⊙╬) !

 マユは必死で抑え込むけど、ち、力が足らねえ戻らねえ……『0』は桁を二つも三つも増やしては元の『0』に戻るを繰り返しやがる……このままじゃ、マユの力が尽きたところで爆発的に増殖しちまう……!!

「そうか。じゃ、本番二十分前。そろそろ観覧席に行こうか」

「うん」

「あ、黒羽さん達の席は、そっちです」

 クララが、ウィンクしながら、観覧席の中央を指差しやがった。


〈黒羽ご夫妻様お席〉


 観覧席の真ん中には、そう張り紙された紅白二つの席が用意されていやがる。

「あいつら……」

 黒羽が、スタジオのAKRのコーナーを睨みつけると、メンバーたちが拍手したり、口笛を吹いたりして冷やかしやがる。

「アハハ……」

 精一杯、幸せそうに笑顔を向けるのが、精神的にも肉体的にも美優には限界だったぞ。


 マユは、必死で戦いながら、もう一度美優の心に語りかけたぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・158『え、そうだったんだ!』

2024-12-12 14:33:53 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
158『え、そうだったんだ!』   




 さすがに試験中は朝礼をやらない。


 金原さん佐伯さんと半年で二人、自ら命を絶つ生徒が出た。

 学校の前に新聞社の車が並び、教育委員会からも調査が入る次第になって、学校は試験的に朝礼を実施するようになった。
 実施と言っても『管理職からのお願い』という形なので実施しているクラスは半分ほどしかない。

 試験中だってやればいいんだけど、元来が強制的な職務命令とかでやっているわけじゃないから、校長も教頭も、いわんや生徒から強いことは言えない。           
 佐伯さんは一命をとりとめた。そのことも先生たちの気持ちをルーズにしているのかもしれない。

 だから、この三日、我が担任の花園先生には会っていない。

 パタパタパタパタパタパタ

 あと五分で一時間目の化学のテストが始まろうという時に、軽やかに廊下を走るサンダルの音……花園先生だ!

 いっしゅんドアの窓に見えた姿は、子どもっぽくテストの袋を胸に抱え、チラリと教室を覗いた顔はヘタレ八の字で屈託の気配は無い。


 そうか、あのお守り無事に届いたんだなぁと思う。学業お守りが良縁成就に変わって、ちょっとビックリかもしれないけど、うん、あの足音と眉毛なら大丈夫だろう……と思う。

 ガラガラ

 一時間目の監督の先生が入って来る。

 顔を上げると……杉野……先生だ。

 そう言えば、直前に花園先生よりも大きく、でももっと軽いサンダルの音がしていたっけ。

 みんなは普通そうにしてるけど、どこか空気が緩い。

「はい、あと一分でテスト配りま~す(^▭^)」

 ああ、本人も緩い。

 考査中は授業も無いし、始業時間も遅いし……この人、ほんとに仕事嫌いなんだなあと思う。


 二時間目の保険のテストも終わって中庭に。


 いの~ち掛けてと~ 誓った日から~ すてきな思い出~♪

 真知子のギターで『あの素晴らしい愛をもう一度』から始まって『若者たち』『戦争を知らない子供たち』『今日の日はさようなら』『翼をください』と続けてぶちかます。

『今日の日はさようなら』『翼をください』が続くとエヴァンゲリオンの雰囲気で『天使のテーゼ』を歌いたくなる(^_^;)。

「今年もクリスマスイヴの集いやりますんで~、よかったら集まって下さ~い」

 真知子が唄うようにオーディエンスに告げて、今日の日はさようなら。

 半分ほどが一年生っぽいんで、ちょっと期待。

 こういう時に、力みかえることも無くお誘いできる真知子はエライと思う。

「さあってと……っ!」

「え、たみ子のカバン重そうじゃない」

「ああ、中身二人分」

「ごめん、ギターあずけたら持つから」

「うん、しばらくここに居るから」

「じゃ、あたし先に行ってる」

 真知子はギターを預けに、佳奈子が昇降口に駆けて行って、このあとおたふくでお昼と思っていた私とロコは、ちょっと置いてけぼり。

「ああ、今日からでしたっけ……」

 おいおい、ロコもなにか思い当たって、知らぬはメグリひとりだけかぁ?

「今日から予備校なのよ」

「進路のポスターにあったS学院ですね」

「うん、べつに相談し合ってじゃないんだけど、進路の部屋でいっしょになって。申し込んだのは別々なんだけどね」

「ああ、なるほどぉ」

「三人とも二期校ねらいですからね」

「え、そうだったんだ!」

 二期校ぐらいは知っている、この時代は共通一次試験もセンター試験も無いんだ。二期校って言えば国公立だよ! 準進学校の宮之森では、ちょっと高嶺の花。けっこうな努力をしないと合格はキビシイ。

「あ、うん、秘密にしてたわけじゃないんだけどね。真知子も佳奈子も家でせっつかれてて、まあ、タイミングがいっしょになったわけ」

「そ、そうなんだ(^_^;)」

 オーーイ

 ギターを置いてきた真知子が通路の方で手を振って、たみ子が「じゃあね(^▽^)/」と去って行って、あっけなく二人きり。

「さ、帰りますか。明日もテストですし」

「あ、そうだね」

 二人でおたふくに行ってももう一つ。時刻は十一時を少し回ったところ。

 大人しく商店街を抜けて家に帰ったよ。

 で、駅のホームに立ったところで、ちょっと番狂わせの展開があるんだけど、それは、また次にね。

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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