つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

林檎

2023年11月04日 | 佐橋美術店の展示・展覧会
ブログの更新が遅くなりました。
おかげさまで展覧会も、今日と明日、残すところ2日となりました。

当店としては予想外に多くのお客様にご来店をいただき、大変光栄に思っておりますが、「一昨日のご来店のお客様を、できることならその前日と昨日に分けてお迎えしたかった」と思えるようなことが多々あり、せっかくご予約をいただきご来店いただきましたお客様とゆっくりお話しさせていただくこともできず、そのままほかのお客様にお席をお譲りいただくことになってしまうこともありました。展覧会中とはいえ大変申し訳なく、お心づかい、ご協力をいただきましたお客様にあらためてお詫びとお礼を申し上げます。


ひとりで多くのお客様をお迎えした一日は、勿論ほかのことは何もせずお台所を片付けて店を後にするのがやっとですが、ご来客0という一日は、かといって私自身はどうやら臨戦態勢にはいっているようなので、事務仕事などには手をつけられず、画廊の中をうろうろと歩きまわるか、画集をぺらぺらとめくるしかすることはありません。

けれど、そうした時間は案外私には大切で、一種の「晴れの舞台」である展覧会を終えたあとに引き戻される現実生活、種々の問題に自分を向かわせる準備を整えるよい機会となります。

先日の記事で山口薫はあまり林檎を描いていないのではないか?と書かせていただきました。

けれど、柿ほどではないようですが、林檎を描いた作品も画集に多くみつけることができました。










しかも、とてもいい。


いまは色々な果物が出回り、しかも南国系の果物が多くなっていますので林檎は種類は増えても、全体の消費量は減っているのではないかと思います。
私は佐橋の病気を通し、食養について少し勉強をさせていただいたので林檎をとても身近な食材として意識しています。

西洋でも林檎は医者いらずといわれていますね。

秋、その目をもって、山積みされた旬の林檎を見ていると、ほかの果物に比べ実に色々な形があるのに驚きます。

そして、和林檎など、その形は素朴でとても神々しいと感じることがあります。

今回画集を開き驚いたのは、薫の描く林檎は、色、形すべてが違い、リズムも違い、「私以上に林檎を見ている」「なんて美しいのだろう」ということでした。



ものの哀れということを考えて仕方ない
これは東洋人であるためであろうか

なぐさめあうこと 

今、心の中にあたたかいものがあればそれでよい 僕




薫の底の底の力。

一日たりとも、一瞬たりとも佐橋との別れのこの深い悲しみを無駄にしたくない。そう思い、今までを過ごして参りました。そしてあらためて薫の日本人としての心を今少し垣間見ることができているような気がします。

土壁の床の間に飾らせていただいた薫の柿もいままでにない落ち着きと美しさを放ってくれています。それにお気づきくださるお客様もいらっしゃいます。


再度、佐橋美術店の作品に出会っていただく、佐橋に出会っていただく、そして佐橋とのお別れをしていただく・・そういう展覧会にしたいと思い、「最後の無眼界展」とさせていただいています。

ご都合よろしければ、ぜひお立ち寄りいただきますようお願いいたします。









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2022年10月20日 | 佐橋美術店の展示・展覧会
自宅の小さな庭に金木犀の木があります。

東京から名古屋に嫁いで、この秋ちょうど34年を過ごしたことになりますが

不思議なことに、この金木犀の花が開くことに気付いたり、気づかなかったりの秋を私は過ごして参りました。

勿論、花は毎年きちんと咲いてくれています。




去年は主人の入院があって金木犀の香りを感じる余裕もありませんでした。





おかげさまで、あれから一年が経ちましたが、私たちの現在にそれほどの余裕が生まれたわけではありません。

けれど、今年は金木犀の香りを深く味わっている自分がいます。


一昨日、大阪にお住まいのお客様からお電話をいただきました。杉山寧展のご案内が届いたとことをお知らせくださいました。


このお客様も今闘病中でいらして、残念ながら視力に影響が出ていらっしゃるので、お好きな美術品鑑賞もお出来にならない状態でいらっしゃいます。

以前の店に一度だけご来店いただき、お会いしただけですが、大変お優しく、謙虚でいらして、また美術品に対する感性が鋭くていらして、私は自分のブログを通してこの方とお会いできたことを何よりの誇りとして参りました。

ご体調もお気持ちも大変お辛くていらっしゃるでしょうに、今回も変わらぬお優しい声とお心遣い溢れるお話ぶりに、佐橋も私も大変癒され、清々しい気持ちにさせていただきました。






画像は山種美術館さんのカレンダーの中の一枚。小林古径の静物です。

画集以外は絵画の印刷物をあまり見ないようにしていますが、カレンダーを捲ってから、この一枚はずっとテーブルの上に置いて眺めています。

古径はセザンヌの画集をよく見ていたと聞いていますが、本当に、古径は日本のセザンヌだなぁと感じられます。

そして、私はこの仕事を通し、また自分の人生を通し、近づきたいと思うのはこの清々しい境地であるなぁとしみじみと感じます。

しずかで深い諦観。孤高と言ってもいいかもしれません。

そして、ささやかな希望。いのちのリズム。よろこび。










杉山寧小品展を開かせていただくこの秋には、10年前に同展覧会を開かせていただいた時とは少し違う私たち、佐橋美術店があります。それは、今まで出会った作品達、その時その時当店を支えてくださったお客さまがたが、形作ってくださった場所です。

そして、今、この位置から見える杉山寧の作品を、あらためて皆様にご紹介できたらと思っています。

杉山作品にご興味のないお客様もどうぞご自身の美意識にお心を休め、しばらく杉山作品のご紹介にお付き合いくだされば幸いに存じます。


今朝も寒くなりました。

これからは、散る金木犀の花の掃き掃除をしばらくしなくてはいけません。

咲いた花に気づき、香りを十分楽しめた後であれば、それもまた気持ちよく行えることです。


























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そのソファーは

2022年09月30日 | 佐橋美術店の展示・展覧会
ソファーはこの店の応接室でも活躍してくれています。



ソファーにお座りいただくと正面に床の間が。






今日は堂本印象のお軸を飾らせていただいています。


ソファーの上には、土田麦僊の素描を。

















左右の壁には、酒井三良の作品があります。


※  堂本印象 軸  旭光新暉  紙本・彩色  48×58㎝ 共箱 〜□
※  土田麦僊 素描 アルル風景 ◇彡
※  酒井三良作品 酒井三良 をご覧ください。



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2022年09月24日 | 佐橋美術店の展示・展覧会
閉店時間間際に外から当店の写真を撮影出来るようになると、いよいよ秋だなぁと思えます。

九月も残り1週間となりました。






全体的に、センチメンタルな印象に。





久しぶりに宮崎智晴さんの作品を飾りました。

ショーウィンドウの展示をかえると、待っていました!とばかりに、急に外から作品をご覧くださる方たちの数が増えます。

はじめは気のせいか?と思っていましたが、どうやらそれだけではないようです。









店内も少しずつ秋らしくしていきたいと思っています。




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板谷波山

2022年07月29日 | 佐橋美術店の展示・展覧会
この2年ほどは、美術館さんの展覧会にほとんど伺っていません。

この酷暑、また現在の感染の拡大状況では尚更になってしまうかもしれませんが、生誕150年を迎える板谷波山の展覧会にはぜひ伺いたいと思っています。







とても高価であるので、なかなか当店でも扱うことはできませんが、というか?同じ予算があればつい絵画の方に手が出るので入手する機会を逃しますが、波山作品の美しさは別格!いつもそう思います。

気品の高さで言えば、日本画家であってもこのレベルに到達できた人はほとんどいないだろうと感じます。





葆光彩磁葵模様鉢 

ため息の出るほど美しい色。






彩磁金魚文花瓶





金魚。
かなりデザイン化されているのに、ちゃんと水槽の中を金魚が泳いでいるように感じられるのですね。不思議です。


今年は生誕150年を記念し、日本各所で波山展が開かれてきました。

今ご紹介させていただいたパンフレットの京都泉屋博古館さんで9月〜10月開催の予定。


そして東京出光美術館さんでは現在、8月21日まで開催中です。






板谷波山ご本人についても少し調べてみました。

芸術作品と作家自身の人間性については別物と考えることもできると思いますが、こと波山においては、やはり作家の人間性こそが作品の価値と感じられる気がいたします。

動画で波山について簡単な説明をしてくださるサイトがあります。よろしければ、ご覧ください。




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