どんな作家のどんな展覧会でも、初日を迎えるときの緊張感は特別です。
心のどこかで、お店の前に何人かのお客様が開店をお持ちくださっていたらどうしましょう?と人気ラーメン店への憧れ的なことを思いながら出社します^^;
喫茶店とか、ラーメン屋さんのようなお仕事は私の体力では務まらないと重々承知していますが、一日決まった数のご来客のあるお仕事にどこかで憧れをもってしまうのがこのお仕事の弱みだろうなぁと感じます。
さて、今日の名古屋は快晴で温かな一日になりそうです。
土曜日は人通りも少なく、いつもは来客0という事も多くありますが、今日は早速前をお通りの方が「とても素敵なショーウィンドウだったので思わず入ってきてしまいました」とお立ち寄りくださいました。
そんな嬉しいお言葉を頼りに、福井の作品を見ながら、画集を覗いたり、ブログを書かせていただきながら、今日、明日はのんびりと過ごさせていただこうと思っています。
ギャラリーの作品についてご紹介を始めさせていただきますね。
10M 雪の聚落 東美鑑
雪をかぶった家並みの上にはおそらく雲でなく、雪に覆われた稜線が描かれていると思うのですが、その優しさと美しさにひときわ心を奪われるのは、この画面の半分以上を覆う一面の雪の描写の確かさの為であると思えます。
福井は雪景色を描きながら、果たして雪が描きたかったのか?家々の暮らしを描きたかったのか?空を描きたかったのか?
「わからない」
その「わからない」の画家こそが福井であるように思えて仕方ありません。何点かある雪景色のなかでも趣の深い作品です。額は少し重たいのですが、この絵にぴったりの重厚感があります。(京都大地堂製かなと教えていただきました)
10Ⅿ 風景
う~ん、この作品は残念ながら画像では作品の可愛らしさと品の良さをお伝えできません。色彩のとても温かな作品で、屋根の下には人でなく小さな動物たちが住んでいるのではないかしら?と思えてしまいます。額は弥栄さんがお付けになられました。軽く、またその色調も抜群に絵に合っているなぁと思っていましたら、なるほど~エンドウさん製だそうです。
キャンバスむき出しのまま、カウンターに飾らせていただきましたのは、「くわい」を描いた作品です。今のところぴったりの額がないのでとお聞きしましたが、絵が素敵すぎて額なしの方がいいかも?と思えました。
余談ですが、「くわい」って「慈姑」と書くのですね。
勿論中国から日本に既に8世紀くらいにに伝わっていたらしいのですが、面白いことに中国で食される慈姑の種類ではなく、日本では青慈姑という種類が好まれているそうです。確かに福井の描く慈姑も青いのです。
オモダカ科であるのにも驚き、どうやって実がなるのかしら?調べてみると
水中、或いは湿地でこのように収穫されるようです。
私達が食すのは塊茎(かいめい)という部分だそうです。
今回くわいを描いた作品は2点ありますが、こちらは6号サイズの作品で
キャンバス裏には「恭子ノ為ノ静物 1966年1月」と書かれています。
先日もご紹介しましたが、略歴によるとこれを描いた10年ほど前に福井はこの恭子さんと結婚をしています。またこの作品は福井の1973年までの初期画集にも掲載され、そちらでは「五つの実」とタイトルがついています。
先日ご来店のお客様が、すでに色々な作品をお持ちの方ですが「福井ってこんな作家だったのですねぇ」と感動してくださり、結局この作品にお約束をくださいました。
くわいを描いた作品がここに二点あるということの意味を短い時間にお感じいただけましたことが大変嬉しく感じられました。くわいはとても大人の絵だと思っています。
さて、午後からはブログを書かせていただくことが出来ないほど忙しくなるでしょうか?無理かな?
更新をどうぞ、お楽しみにお待ちください。