愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題285 書籍‐2 特‐2 縄文女神回顧

2022-10-26 10:03:25 | 漢詩を読む

 山形県の縄文遺跡で発掘された土偶像・“縄文の女神”である。美しい、しなやかな姿態を揺らして、舞台の袖を練り歩く現代のファッションモデルを思わせます。

 

縄文の女神

 

<原文 と 読み下し文>

  縄文女神回顧   縄文の女神の回想  

土片埋砂万歲移,

  土片 砂に埋(ウマ)って万年も時移り,  

掘出粘成凜佳姿。

  掘出(ホリダ)され、粘(ハ)りあわされて、凜(リン)とした佳き姿と成る。  

新奇優体奪魂気,

  新奇(モダン)な優体は人の魂気(コンキ)を奪う,   

古遠麗人懐往時。

  古遠の麗人(レイジン)は往時(スギシトキ)を懐(ナツカシ)く思い返すのである。  

前望舒拉銀漢度,

  前には望舒が月を拉(ハコ)び 銀漢(ギンガ)を度(ワタ)り,   

後飛廉促太空馳。

  後には風の神・飛廉(ヒレン)が促して 太空(タイクウ)を馳(ハ)せる。  

六龍不頓忘時過,

  六龍(ロクリュウ)は頓(トドマ)ることなく 時の過ぎるを忘れ,   

天上無爭仙境宜。

  天上に爭い無く 仙境(センキョウ)宜(ヨロ)し。  

 註] 〇凜:(姿などが)厳かなさま; 〇新奇:モダンな; 〇優体:均整の取れた 

   美しい体形; 〇魂気:魂; 〇古遠:古代の、遥か昔の; 〇望舒:月の車を

   ひく御者。月は馬車に乗って夜空を回るという伝承から; 〇銀漢:銀河、天の川;

   〇飛廉:風の神; 〇太空:宇宙; 〇六龍:太陽を載せた車を引く六頭の龍、

   時間を言う。郭璞(カクハク) 《遊仙詩七首其四》 「六龍(ロクリュウ)安(イズ)くんぞ頓(トド)む

   可(ベ)けんや」に拠る; 〇仙境:別天地。   

< 現代語訳> 

  縄文の女神の回想  

 土片のまま土砂に埋まって幾世紀を経たろうか、片々が貼り合わされて八頭身の美人の姿を現した。そのモダンな姿は見る人の魂を奪い、この古代の麗人は在りし日のことを懐う。望舒が御する馬車に乗ってお月さまと一緒に銀河を渡り、風の神・飛廉は後ろから風を送って、宇宙を馳せ、地球をめぐる。太陽の進行は止まることなく時は流れ、天上界に遊んで時間の過ぎるのを忘れる、なんら争いのない天上界は 素晴らしい別天地であった。

<簡体字表記> 

  绳文女神回顾  

土片埋砂万岁移,挖出粘成凛佳姿。

新奇优体夺魂气,古远丽人懐往时。

前望舒拉银汉度,后飞廉促太空驰。

六龙不顿忘时过,天上无争仙境宜。

<記> 

 「縄文の女神」には2017年10月、京都国立博物館で開催された国宝展でお目に掛かり、すっかり魅了され、ファンタジイの世界へと招き入れられました。

 この土偶は、山形県西ノ前遺跡(BC3,000~BC2,000年)で、土器などが大量に廃棄された土坑から破片の状態で発見された。それらの破片を接着剤で張り合わせて復元された姿(高さ:約45 cm)であった。 

 “破片から完全な姿で復元できた例は極めて珍しく、特別な意味を込めて埋められたとみられる” とのコメントあり。どのような人をモデルにして、どのような人が作成したのか?折角できた像を何ゆえに壊し、埋めるに際して“込めた特別な意味”とは何だったろうか? 

 モデルの人は、日本海側の遺跡から発掘されたこと、また服装や姿態から推して、大陸から流れ着いた渡来人であり、作成者は、土器加工に秀でた西ノ前住人であろうか。 

 破片の欠損がなく、土偶が完全復元されたことから推して、他所で破壊して、破片を集めて運んだのではない。態々土偶を土坑まで持ってきて壊したものと推定される。やはり後ろ髪を惹かれるような思いで壊し、埋めたのであろう。 

 さて、土偶は、土中での長い眠りの後、再び人間界に戻り、“縄文の女神”としてお目見えすることになった。眠りの間に見た夢は、天上界で遊ぶ夢でした。天上界へは、望舒が先導し、後ろから風の神の飛廉が後押ししてくれた。 

 天上界では、何らの争いもなく、まさに桃源郷で、お月様と一緒に地球を巡り、青く美しい地球を眺めながら過ごし、時の経つのを忘れていた。 

 実は、「縄文の女神」は、素晴らしい才能を持つ土偶作者の閃きを通して創造された天上界の仙女の姿であるやも知れない。本稿では生身の人間に重ねて想像を巡らしましたが。 

 

コメント
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