漢詩の最も古い詩集と言われる『詩経』の中からいくつか取り上げます。『詩経』とは、中国でかなり古い時代から口承により伝えられて(歌い継がれて?)きた詩3千余の中から3百首ほどを選び編纂されたもので、孔子(前551~前479)が編んだと言われている。したがって作者は不明である。
次の「采葛」は、王という国(今日の洛陽の近く?)で採集された民謡のようである。
采葛 采葛(さいかつ)
(一)
彼采葛兮 彼(かしこ)に葛(くず)を采(と)る
一日不見 一日 見ざれば
如三月兮 三月(みつき)の如し
(二)
彼采蕭兮 彼(かしこ)に蕭(しょう)を采(と)る
一日不見 一日 見ざれば
如三秋兮 三秋(さんしゅう)の如し
(三)
彼采艾兮 彼(かしこ)に艾(がい)を采(と)る
一日不見 一日 見ざれば
如三歳兮 三歳(さんさい)の如し
[現代語訳]
クズ摘み
(一)
クズを摘みます。
一日お会いできないと、三月も合わないみたい。
(二)
カワラヨモギを摘みます。
一日お会いできないと、三度の秋も合わないみたい。
(三)
ヨモギを摘みます。
一日お会いできないと、三歳(みとせ)も合わないみたい。
[解説]
(二)の「三秋」について:「三秋」とは七月から九月までの秋三カ月、あるいは三カ月の秋の三つ分で九カ月、あるいは「あき」を「年」の意味にとって三年など、諸説ある。要は「月」と「歳(年)」の間に季節という単位を置いて、時間が次第にながくなるのをあらわす。章ごとに月、季節、年と長くなることが、いや増す思いに対応する。
[河合康三編訳『新編 中国名詩選』(岩波書店、2015)に準拠。
但し「解説」の項は一部抜粋]
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