この本は、極めて丁寧に「基本的な思考法」を解説したものです。
以前、このBlogでもドイツの哲学者ショウペンハウエルは「自分の頭で考えること」を主張し続けているとご紹介しました。レベルや対象は異なるかもしれませんが、実践的な思考プロセスのヒントが、この本には豊富に盛り込まれています。
その目指すところは、ものごとを多面的にとらえる思考であり、著者はそれを「知的複眼思考法」と名づけています。過去の「常識」や安易な「ステレオタイプ的発想」に引きずられず、自分で考えるための具体的な方法をいくつもの実例を挙げて説明しています。
その方法のひとつは「問いを立てる」ということです。
(p181より引用) 最初の問いをいくつかの問いに分解したり、関連する問いを新たに探していく、問いの分解と展開によって、考えを誘発する問いを得ることができるのです。
問いの分解の具体的方法としては、「主語の分解」を勧めています。
たとえば、「日本企業は・・・」という命題があると、それを「日本の製造業は・・・」とか「日本の非製造業は・・・」とかに分けて考えを進めてみる、また、「日本の大企業は・・・」とか「日本の中小企業は・・・」とかに分けて検討してみるといった具合です。
また、問いの展開の具体的方法としては、「なぜという『理由』をたずねる問い」と「どうなっているかという『実態』をたずねる問い」を組み合わせて展開していくというやり方を提示しています。
確かに、「なぜ」「なぜ」・・・を詰めていっても行き詰ることが往々にしてあります。そういう場合は、「じゃあ、実態はどうなっているんだ」と事実を再度確認するのです。そうしていくつかの事実を確認すると、「それじゃあ、どうしてそういう実態になっているんだ」と「なぜの深堀り」の再スタートができるのです。
この本は「How To本」とも言えますが、本質的な考える姿勢を教えてくれています。
課題を抱えた読者を具体的に意識して、これだけ丁寧に説明してくれている本はめずらしいと思います。