最近はIT業界を中心に多くのベンチャー企業が登場し、そのいくつかの企業は新たな業界のリーダとなりつつあります。
従来型の企業もその新たな流れへの対応にチャレンジしていますが、他方、従前からのキャッシュカウとしての成熟市場の延命にも努めています。その代表的な取り組みが「標準化による効率化」です。
(p171より引用) どんな組織も、萌芽期から発展期、成熟期、衰退期への流れを必ず辿ります。・・・
成熟期は、こうして残ったメインルート以外の選択肢が切り捨てられていく段階です。完成した組織は、もはやそれ以上の試行錯誤を行わなくても、運営を続けていく上でこれといった不都合もありません。・・・
この成熟期には大きな落とし穴があります。マニュアル化が「融通の利かない管理」になりがちな点です。メインルートのみを通ることを求め、「やってはいけない」「試してはいけない」「余計なことを考えてはいけない」という制約が与えられると、作業は効率化されていく一方で、選択肢をせばめられたことによる弊害が必ず現れるのです。
「マニュアル化」は徹底すればするほど、「自分の頭で考えることを否定」します。
(p174より引用) 仮にこの段階で予期せぬ事態が生じたとすれば、せまい知識しか持たない現場の人間、管理者が誤判断を起こしたり、思考停止状態になってうまく対応できないということが当然起こります。これが衰退期へ向かう流れで、小さな失敗が放置された結果、やがては取り返しのつかない大失敗が起こるというパターンに陥るのです。
このような細胞硬化がおこることを防ぎ、より積極的にプロセスの進化を進める具体的アクションが、トヨタでいえば「カイゼン」であり、GEでは「ワークアウト」です。
(p178より引用) 管理強化が失敗回避の切り札になり得ないのは明らかで、失敗を生かす組織運営を実現するには、こうした手っ取り早い手法に頼るのではなく、たとえ時間や手間はかかるにしても、ひとりひとりの失敗適応能力をアップさせるような方法も並行して取り入れていくべきなのです。
現代社会で見られる失敗の根源的背景について、著者は次のように語っています。
(p21より引用) 社会の要求がすでに別のところにあるのに、それを見ようとしないで従来型のことしかやろうとしないおかしさも、いまや日本中の組織に共通している問題です。