(p105より引用) 労働災害の世界には、災害が発生する確率を経験則から導き出した「ハインリッヒの法則」というものがあります。一件の重大災害の裏には二十九件のかすり傷程度の軽災害があり、さらにその裏にはケガまではいたらなくても三百件の「ひやっとした体験」が存在しているという考え方です。・・・
ハインリッヒの法則は、失敗がある一定の法則で起こる確率現象であることを私たちに教えています。また、表面的には成功しているように見えるときでも、その裏で失敗の準備が着々と進んでいるという恐ろしい現実があることも伝えています。その中には、一度発生すると、再起不能の状態に追い込んでしまうような、致命的なダメージを与える危険な失敗が潜んでいることもあるかもしれません。
この点に関しては、単なる「確率」論だけではなく「期待値(生じた影響×確率)」的な発想も必要です。
最近起こった「株式売買誤発注(東証マザーズ市場に上場したジェイコム株をみずほ証券が誤発注した件)」でも、生じた事象は簡略化して言えば、「『A』と入力すべきところを『B』と入力した」ということです。(たまたま?)その『A』が『1株61万円』で、『B』が『61万株1円』であった結果、損害はとんでもないことになったわけです。
このケース、(こまかく言えば違いますが、)『B』を『1株60万円』としてしまう確率と理屈上は大差はないはずですが、結果は天と地ほどの差がついてしまうのです。まさに、その点だけとらえれば、運不運の部分もかなりあります。
コンピュータシステムのトラブルも同じようなことが言えます。
不具合の生じる確率は大差なくても(たとえば、不注意による単純なプログラムミスであっても)、そのミスのロジックの場所によっては、発生する事象は大きく異なるのです。