百科事典によると「空はいっさいの実体(有)を否定し、それに執着しない人間の精神作用である」と説明されています。
般若心経を解するには、この「空」という概念が肝になります。
(p39より引用) 仏教的なモノの見方をまとめるなら、あらゆる現象は単独で自立した主体(自性)をもたず、無限の関係性のなかで絶えず変化しながら発生する出来事であり、しかも秩序から無秩序に向かう(壊れる)方向に変化しつつある、ということでしょうか。
「色不異空」、「色は空に異ならず」。
「色」とは、物質的現象すなわち「形あるもの」を言います。また、「変化するもの」「壊れるもの」という意味もあります。
「空」は、「自性」という固定的実体がないということです。
般若心経の中でも代表的な句である「色即是空」は、
(p52より引用) 我々が知覚するあらゆる現象は、空性である。つまり固定的実体がない、ということ
また、「空即是色」は
(p52より引用) 「空」であるが故に「縁起」し、あらゆることが現象してくる、ということ
だそうです。
この「空」という概念は「梵我一如」の根底でもあります。
(p55より引用) 世尊は、ウパニシャッド哲学の云う「梵我」という二元を、共に「空性」であると悟って止揚されたのです。この意味での「梵我一如」を悟ることが初期の「悟り」とされました。
「般若波羅蜜多」は「空」の実現そのものでもありました。まさに「般若の空」です。
「空」に至らない段階は「私」が残っている状態です。
「私」があると「意識」が生まれます。
(p155より引用) 「意識」などは、最も虚構性の高い代物であるわけです。「般若」の眼で見れば、全てが自性のない暫定的な出来事なのでした。
「私」がある限りは「空」に至ることはできません。
(p199より引用) 自分で作った「私」という殻がいかに「苦」を生みだすものであるか、・・・
知的に明確に知ることで得られるのは、やすらぎではなく単なる満足にすぎません。知的に知る主体は「私」だからです。
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