日産とフォードの共同開発体制の構築は、当初の想定以上に困難なものでした。それぞれの会社での開発スタイルがあまりにも異なっていたのです。
共同開発を進めるためには、開発手法をひとつに整理する必要があります。
どちらのやり方に合わせるのか。「フロントライン」の仕事として、「アメリカで作ってアメリカで売る車なのだから、アメリカ人のセンスを重視しよう」としたところもあれば、日産ウェイを貫徹したところもありました。
フォードでは、上流の開発・設計工程と下流の製造工程の関係が明確です。
それぞれ工程の独立性が高く、権限や責任がキチンと規定されています。そして、上流の開発部門がイニシアティブを取り、両プロセスのインタフェースを規定します。
他方、日産の方法は全く異なります。
(p50より引用)一方、日産に限らず日本の自動車メーカーでは、生産技術部門が開発部門とバランスの取れた権限を持ち、生産技術部門の技術者が開発の初期段階から介入して、開発技術者と一体となって、加工・組み立てなどのつくり込みの品質や生産性を加味した開発・設計が進められる。これは下流工程の生産技術者が上流に遡り、開発技術者と一緒に開発を行うことで、後工程(生産)の齟齬や不具合を少なくしようという日本流のフロントローディングの実践である。これがいわゆる「サイマルテニアス・エンジニアリング」と呼ばれる日本方式だ。
NRDでの開発は、この日産型の「サイマルテニアス・エンジニアリング」方式を基本にして進められました。
この方式が現地のエンジニアに理解されるまでには、数ヶ月の時間が必要でした。しかしながら、このこだわりは「いいクルマづくり」という共通の目標に向かったものでした。
NRDの開発トップの上級副社長だった大久保宣夫氏のQCDについての信念です。
(p64より引用) 「QSD(品質・コスト・納期)はどれも大切だが、Q(品質)があってこそのC(コスト)とD(納期)である」といって、いかなる理由があろうと品質で妥協することを許さなかった。「いいクルマづくり」にこだわったことが結果的に幸いした。
NTCNA(元NRD)は、タイタン・アルマーダ・インフィニティQX56等、次々と現地開発した車種を市場に送り出しました。
現地開発組織としてはひとり立ちを果たしましたが、2000年、NTCNA社長の山下光彦氏は、次のステップアップに向けた問題を以下のように捉えていました。
(p98より引用) これからNTCNAが真に飛躍していくためには、どんな修羅場が来ようとも、守らねばならないものがある。それが品質、コスト、技術水準、マネジメントなどの組織の基礎能力である。これらがきちんとできなくては、火事場のバカ力で、一過性の商品開発はできるかもしれないが、長期的な商品性や収益力という観点、すなわち持続可能な成長力の観点では不安が残る。底力を組織知として整理し、ストックしなくてはならない。
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