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共創への気づき (世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略(野中郁次郎・徳岡晃一郎)

2009-06-06 14:47:45 | 本と雑誌

 欧州はある意味、米国以上に自動車王国です。各国の自動車会社は、それぞれの国のニーズを反映した個性的なクルマで市場を押さえています。
 そういう中で日産は新参者でした。アメリカのとき以上に条件の厳しい欧州に進出する際も、エンジニアは現地の人材を最大限活用しました。

 独自日本流の暗黙知主導の開発スタイルをNETC流に再構築していくうちに、英国側エンジニアからの有益な気づきが生れてきました。

 
(p136より引用) 「グローバルに開発するためには最低限の形式知は必要なのです」。そしてチームワークと現場重視で暗黙知を伝え合い、官僚主義に陥らずにスピーディに開発を進めていくやり方を模索していった。

 
 また、上流・下流の工程の壁をつくらない検討方式も、スムーズな開発推進に大きく寄与しました。

 
(p136より引用) 「フレームワークをみなでワイワイガヤガヤと検討することに価値があるのです。マニュアルのようになってしまったものでは生きてこない。フレームワークを考えるプロセスでみなの知恵が出ます。またフレームワークだけであれば、その都度、中身をどうするべきかを発展させられます。マニュアルでは固まってしまうのです」

 
 こういったワイガヤの検討が機能するには、メンバ間の関係性の濃さがその前提条件として必要となります。

 
(p189より引用) すり合わせにおいては、一緒に仕事をするメンバーの「関係性」が重要になる。参加するメンバーの①暗黙知の質、②その共有度合、および③どのような方向で知をすり合わせるのかの文脈、この三つを総称して「関係性」という。

 
 この濃密な関係性に基づく知恵の綜合は、これからの市場で求められる商品作りの大きな力となります。
 著者たちは、「モノづくり」から「コトづくり」というキーワードで今後の市場の動きを指摘しています。

 
(p190より引用) デザイン、ソフト、サービスなどを総合してモノに込め、消費者にその商品を使用する場面の価値を訴え、ストーリー性や意味づけを与えるような、経験価値の創出を「コトづくり」という。

 
 高くても買いたくなるようなワクワク感のある商品です。
 そういった「コトづくり」を重視すると、市場との対話力が益々重要になってきます。

 
(p192より引用) これまで重要であったモノづくりのすり合わせの次元を超えて、「コトづくりの面での知の綜合」が必要になる。

 
 著者たちは、本書で、日産の「グローバル開発体制」の構築を材料に「日本発のグローバル知識綜合のしくみ」を提唱しています。

 
(p194より引用) アメリカ流の透明性を求める風土と、欧州流のきちんとしくみ化する気質が、日本のNTCの多分に曖昧で暗黙知的なしくみを鍛え、グローバルに共有できるものに普遍化することに役立った。

 
 この「知識綜合」は、「ほどよい形式知化」でプロセスの大枠を規定し、「濃密な信頼関係」の中で暗黙知の共有による共創を生み出していきました。

 
(p204より引用) この「ほどよい形式知化」と「濃密な関係性づくり」というエンジンが日産流のプロセスとして、埋め込まれたことにより、グローバル知識綜合は起動していった。・・・日産が構築した知の綜合化のエンジンとは、とりもなおさず、世界中の「多様な知」を手に入れ、それをマネジメントしきる「多様性のマネジメント力」に他ならない。

 
 本書で取り上げた日産のグローバル開発体制の構築の取組みは、ひとつの「日産ウェイ」の発現でした。
 それを著者たちは、「思いのある実践主義(思いとプラグマティズムの融合)」と名づけています。

 
(p209より引用) 合理的発想と自然な判断で、方向や道筋を決めたら、後は実践あるのみだ。・・・
 実践から得られる暗黙知を通じて、計画を微調整しながら一歩ずつ大きな思いに迫っていく。

 
 思いをひとつにして「走りながら考えるプロセス」です。

 ここでのポイントは、まずは「走り出す方向」です。これを定めるための基準は「合理性」という尺度です。
 そして、スタートは「現場」です。常に現場と向き合って諦めることなく成功するまで喰らいついていく姿勢。
 こういう行動様式は以前から日産にはあったといいます。山下氏がNTCNA社長在任中に4原則としてまとめ、その発展形が現在、開発部門の日産ウェイとして形式知化しています。

 最後に、本書は、「知識創造」という観点から日産の事例を研究したものですが、同じような問題意識でトヨタを分析した「トヨタの知識創造経営」という本もあります。
 
 

世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略 世界の知で創る―日産のグローバル共創戦略
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2009-03

 
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