楠木氏が提唱している「戦略ストーリー」ですが、具体的にビジネスの文脈の中で「競争戦略」として組み立てるには5つの柱が重要となります。「因果論理により結び付けられた、起・承・転・結」です。
楠木氏は、それらを「戦略ストーリーの5C」と名付けています。
(p173より引用)
・競争優位(Competitive Advantage)
ストーリーの「結」・・・利益創出の最終的な論理
・コンセプト(Concept)
ストーリーの「起」・・・本質的な顧客価値の定義
・構成要素(Components)
ストーリーの「承」・・・競合他社との「違い」 SP(戦略的ポジショニング)もしくはOC(組織能力))
・クリティカル・コア(Critical Core)
ストーリーの「転」・・・独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
・一貫性(Consistency)
ストーリーの評価基準・・・構成要素をつなぐ因果論理
この「5C」で構成された「戦略ストーリー」は、事業開始にあたって当初からフルセットで完成されているものではありません。むしろ、その必要もないと楠木氏はいいます。
(p225より引用) 戦略ストーリーは、特定時点で完結する意思決定やデザインの問題ではありません。むしろ日々の経営の仕事の中で遭遇するさまざまな事象をストーリーの視点から考え、ストーリーに取り込み、ストーリーへと仕立てていく。この「ストーリー化」のプロセスに経営者なり戦略家の仕事の本領があります。
経営者には「一本のストーリー」に収斂させていくという意識が重要なのです。一貫したストーリー化のプロセスを経て、企業の「戦略ストーリー」は「強く」「太く」「長く」なっていきます。
(p228より引用) ストーリーの戦略論とは、個別の打ち手でいきなり勝負するのではなく、因果論理でつながった打ち手の「合わせ技」を重視する戦略思考です。
「合わせ技」で複雑になった因果論理の束こそ、簡単に他社に模倣されない強固で独創的な競争戦略となるのです。
楠木氏のいう「ストーリー」とは、whyで始まる論理です。SP・OCといった個別の構成要素を首尾一貫した因果論理で結びつけ競争優位を導く「媒介(=つなげるもの)」なのです。
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