本書は、「ストーリー」という視点で競争戦略を論じたものですが、立論を進める前段の第二章で競争戦略の基本論理を概説しています。
その中で「競争優位の源泉」について説明しているくだりを何点か覚えに書き記しておきます。
楠木氏いわく、「競争戦略」の本質は「違いをつくる」ことですが、この違いの作り方よって「競争戦略」には2つの考え方があるとのこと、「種類の違い」を重視する「ポジショニング」と、「程度の違い」を重視する「組織能力」です。
(p125より引用) SP(Strategic Positioning)が「他社と違ったことをする」のに対して、OC(Organizational Capability)は「他社と違ったものを持つ」という考え方です。・・・
SPの戦略論が企業を取り巻く外的な要因(その際たるものが業界の競争構造)を重視するのに対して、OCの戦略論は企業の内的な要因に競争優位の源泉を求めるという考え方です。
つまり、「競争に勝つためには独自の強みを持ちましょう」という考え方です。
ちなみに「競争戦略」といえば必ず登場するポーター氏の戦略論はご存知のとおり「ポジショニング」です。
(p120より引用) ポーター戦略論も、ファイブフォースだけでなく、基本的な競争戦略の類型論や戦略グループといったさまざまなフレームワークを提示でしています。しかし、以前の戦略論と決定的に違うのは、使われた概念や提案されたフレームワークのすべてが一つの論理、すなわち「ポジショニング」という考え方で貫かれているということです。・・・ポーター戦略論は、個別の技法を超えて、一つの論理で一貫して組み立てられた思考体系です。
ポジショニング戦略の要諦は、「what」=何をするかという決断です。これはもうひとつの選択肢との訣別でもあります。
(p124より引用) SPとは、競争上必要となるトレードオフを行うことにほかなりません。・・・だからこそ、「何をやらないか」という選択が大切になるのです。ポジショニングの戦略論の根底には、このシンプルな論理があります。
競争優位の源泉たる「違い」をポジショニング(=位置どり)で実現するのですから中途半端は許容しません。
(p116より引用) SP(Strategic Positioning)の戦略論は、程度問題としての違いをOE(Operational Effectiveness)と呼び、SPとは明確に区別して考えています。戦略はSPの選択にかかっており、OEの追求は戦略ではない、というのがポジショニングの考え方です。
「程度の差」はすぐに他社にキャッチアップされてしまいます。また「程度の差」をつけることに注力し始めると貴重な経営リソースが分散してしまうというデメリットも生じますし、程度の差が顧客に響くかといえば、それは別問題になります。
さて、競争戦略の2型「SP」と「OC」ですが、これらは相反するものではありません。
(p146より引用) 現実の戦略はSPとOCとの組合せであるのが普通です。・・・優れた経営にとってはどちらも必要です。
時間軸でみると、多くの場合、SPからOCへという変遷が見えてきます。
そこで、この2つの戦略を組み合わせたマトリックス(SP-OCマトリックス)の中で企業を位置づけるといろいろと示唆に富む気づきが得られます。一般的には、欧米の企業はSP型、日本企業はOC型が多いようです。
(p162より引用) SP先行型の企業には一つの大きな強みがあります。それは、業績が悪くなるときに、はっきりと、しかも早く悪くなれるということです。・・・これは必ずしも悪いことではありません。経営陣や社員が今そこにある危機をはっきりと認識できるため、揺り戻しがかかりやすいのです。・・・
これに対してOC先行型の企業では、厨房が徐々にダメになっていく、という怖さがあります。・・・マネジメントや社員もはっきりとした危機感を持ちにくい。
このあたり、著者が挙げている、SPの例としての「HP」、OCの例としての「カネボウ」は確かに典型的なものとして納得感がありますね。
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