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逆進化 (進化しすぎた脳(池谷 裕二))

2007-03-31 16:49:23 | 本と雑誌

Synapse  著者によると、「脳は体に規定される」そうです。
 ヒトの脳は、今以上に身体性能が向上しても、それをコントロールする潜在能力を十分に有しているとのことです。その意味では、さらなる「進化」の可能性は間違いなくあるといえます。

 しかしながら、著者は、ヒトは進化を止めたと言います。

(p313より引用) いま人間のしていることは自然淘汰の原理に反している。いわば〈逆進化〉だよ。現代の医療技術がなければ排除されてしまっていた遺伝子を人間は保存している。この意味で人間はもはや進化を止めたと言っていい。
 その代わり人類は何をやっているかというと、自分の「体」ではなくて「環境」を進化させているんだ。従来は、環境が変化したら、環境に合わせて動物自体が変わってきた。でも、いまの人間は遺伝子的な進化を止めて、逆に環境を支配して、それを自分に合わせて変えている。・・・そういうことができればもう自分の体は進化しなくてもいい。そんなことを人間はやり始めている。新しい進化の方法だ。

 このことが良いことか悪いことかはともかく、確かにそういう傾向は否定できません。
 が、なかなか刺激的な示唆だと思います。

 さて、この本は、まさに時代の最先端を走る「研究者」の著作です。

 研究者の方が書いた本で、最近よく登場することばが、「セレンディピティ」という単語です。「偶然に思いがけないものを発見する能力」のことですが、本書でもやはり触れられています。
 特に本書が、これから研究を志すであろう若者を対象としているので当然といえば当然ですね。

(p299より引用) 正しい知識をいかに持っているかどうかで、アイディアを思いつくかどうかっていうのもまた決まってくるんだよね。発見や発明はなにも神様が与えてくれるもんじゃなくて、やっぱり日頃の勉強や努力のたまものってわけ。

 もうひとつ。「相関と因果」について。
 こちらは、データに基づく「正しい情報の読み取り方」を論じる文脈でよく登場します。

(p370より引用) 相関と因果の違いは一見微妙なものだけど、これは実に深い溝だ。
 科学で証明できることは相関だけだ。研究者たる者、実験科学の本質と限界を忘れてはいけない。因果関係を証明することは基本的に不可能だ。

進化しすぎた脳 進化しすぎた脳
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2007-01-19

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