企業(株式会社)の所有者は株主であることは、制度上事実ですが、実際上は企業官僚体制における「企業経営者」の手に委ねられているとの指摘です。
(p59より引用) 企業経営に関する幻想は、最も手の込んだ、そして近年では最も際立った欺瞞である。「資本主義」という悪名を追放しようとするのなら、それに代わる適切な名称は「企業官僚主義」のはずである。・・・オーナー経営者や株主という言葉は日常的に、また好意的な意味合いを込めて使われるけれども、実際問題として、株主が企業経営において何の役割も果たしていないことは、火を見るよりも明らかである。
この点は、日本はもとより、株主が強い力を持っているといわれている米国ですらそうだということです。
この状況の証左が、ここ数年の間に顕在化した大企業の「粉飾決算」です。
(p106より引用) もっとも重要なのは次の点である。実効性のある規制のおかげで企業の行動が改善されれば、国民全体に大いなる利益がもたらされる。経営者による横領は国民全体に不利益をもたらす。このことは誇張でも脅しでもなく、正真正銘の事実なのである。取締役や株主による監視機能が十分だと思ってはならない。不正を防止する力を持つのは、司法当局だけなのである。
その他、大企業をとりまく欺瞞として、「エコノミストによる経済予測」を取り上げています。
まず、ガルブレイス氏は、そもそもの経済予測の確度について疑問を呈します。
(p82より引用) 未知なるものの寄せ集めを知ることはできない。このことは、経済全体についえ真であるばかりか、特定の産業や企業についても、同じく真である。経済の将来予測は、これまで当たったためしがないし、今後とも経済予測が当たることはあり得ない。
にもかかわらず、経済、とりわけ金融の世界では、未知なるもの、そして知り得ないはずのことを予測する営みが、必要不可欠であり、高収入にありつきやすい職業のひとつとされている。
にもかかわらず、エコノミストはしたり顔で予測を開陳します。政策の転換期・企業の決算期等々、折々に百花繚乱という感じで経済予測や企業の業績予測が登場します。
(p88より引用) ウォール街でコンサルタント役を引き受けるエコノミストは、・・・研究委託先の儲けが最も大きくなるような予測をする。また彼らは、自分の予測が周知されることを望む。なぜなら彼らは、自分の保有している株式の株価を押し上げる効果のある予測をしているのだから。
要するに、自らの利益に供し、みずからの損失を防ぐことが、ウォール街を闊歩するエコノミストたちの予測の目的なのである。
穿った見方ではありますが、首肯できる指摘です。
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