ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei 1564~1642)は、ご存知のとおりルネサンス期のイタリアの物理学者・天文学者です。
彼は、倍率32倍の手作りの望遠鏡で、木星の4衛星・月の山谷・天の川の正体等、多くの重大な天文学的発見をしました。
本書は、それらを発表した著書と太陽の黒点に関する書簡の全訳です。
(p13より引用) この小論においては、自然研究者の観察と思索とに対して、まことに重要な問題が提起される。主題そのもののすばらしさのゆえに、過去の時代に耳にしたことのない新しさのゆえに、この問題そのものをわたしたちの感覚に示した器械のゆえに、わたしは重要だというのである。
ガリレオの考察は、観測による事実の開陳に止まりませんでした。
一歩踏み込んで、精緻な観測結果から対象の実像を推論しようとしたのです。
(p29より引用) 月のより明るい表面には、いたるところに隆起やくぼみが散在している。・・・あとは地上の凹凸が月のそれより遥かに小さなことを示し、その規模に言及すれば足りる。しかも、小さいというのは、みかけの球の大きさのわりにというのではなく、絶対的な大きさにおいてである。このことを、つぎにはっきり証明しよう。
この記述の後、観測データを元に初等幾何学を使って月面上の山の高さを割り出し、それが地球上の山よりもはるかに高いことを証明しています。
さて、有名なエピソードですが、ガリレオは地動説を唱え、当時のカトリックの教義と衝突しました。
(p35より引用) 地球は運動と光とを欠如しているという理由で、星の回転から除外しなければならないと主張する人びとがいる。こういう人びとには、・・・地球が遊星であり、輝きにおいて月を凌駕していること、世界の底によどんでいる汚い滓ではないことを示そう。かぎりない自然の理性によって、わたしたちはそれを確認するだろう。
具体的には、太陽と木星およびその衛星との関係を明らかにすることにより、その相似形としての太陽・地球・月の関係を規定したのです。
(p72より引用) 四つの星は木星とともに、12年の周期で太陽のまわりを大きく回転している。同時に、地球のまわりの月とおなじく、木星のまわりをも回転している。感覚的経験がこのことを示している。いま、惑星が二つ、太陽のまわりに大きな軌道を描きつつ、同時に、一方の惑星のまわりをほかの一つが回るということが、どうして考えられないのか。
ガリレオは、望遠鏡による観測から得られた事実と論考によって、従来のアリストテレスの学説を否定しました。
しかし、その学究のプロセスは否定していません。むしろ敬意を払い続けているのです。
(p125より引用) 現代まで隠されていた予期せざる驚異からなにかを収穫するには、今後、天空の実体についてアリストテレスとは違ったように考える賢明な哲学者たちに、耳を傾けるのがいいでしょう。アリストテレスそのひとだって、現在の感覚的観測を知っていたら、かれらの考えとそう違いはしなかったでしょう。なぜならかれは、自然の諸問題にかんして結論づけることを可能にする方法として、明白な経験を認めたのみでなく、それに第一の地位を与えたのでした。過去の時代にはそこになんの変化もみられなかったという理由で、かれは天空の不変性を論じているのですから、わたしたちにとっては明白となっていることがらを感覚がかれに示したとすれば、かれは疑いもなく、このような驚くべき発見にもとづいて、わたしたちが考えている逆の意見にしたがうでしょう。
本書から、ガリレオの地道で精緻な観測の足跡とその結果から真の実態を推測する想像力と論理構成力を見て取ることができます。さらには、研究の経緯と結果を平易に伝えるプレゼンテーション能力と忍耐力?を感じることもできます。
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