本書で示された道教的思考の第四法則は、「上兵無兵」です。
すなわち「間接的行動」を活用した戦術です。
(p243より引用) 東洋と西洋のいずれの軍事的アプローチでも、間接的な行動が考慮されてはいるものの、西洋では間接的行動は弱者がとるべきものとして位置づけられているのに対して、東洋では間接的行動こそが戦いにおいて最も重要なものとして捉えられている。・・・競争優位の獲得を目的とする間接的行動は、限られた労力で絶大な効果をもたらしてくれるものである。それは、決して弱者だけが用いるものではなく、市場で支配的な地位を築いている企業こそが得意としているものである。
間接的な行動は、必ずしも直接的な行動の陰にかくれたものとは限りません。
(p272より引用) 備え周かば則ち意怠る、常に見れば則ち疑わず。陰は陽の内に在り、陽の対に在らず。太陽は太陰なり。
守りが万全であると思えば、どうしても警戒心が弱くなる。ふだんから見慣れていることには、とかく疑問を感じなくなる。人の意表をつくような奇策は、人目につきにくい秘密の場所にしまわれているわけではなく、人目につきやすいところにこそ隠されているものである。誰にもそれとわかるような所に、しばしば重大な秘密が隠されているのだ。
具体的に、著者が本書で「上兵無兵」の考え方にもとづく戦術として整理している9種を、覚えに記しておきます。
- 戦術28:指桑罵槐 自らの行動を通じて隠れたメッセージを送り、相手の行動に影響力を及ぼす
- 戦術29:声東撃西 見せかけの行動で相手をおびき出し、別の行動で相手を倒す
- 戦術30:暗渡陳倉 通常とは異なる間接的な手段を用いて、敵の不意を突く
- 戦術31:瞞天過海 相手の思い込みを利用して、日常的な行動のなかに真の行動を隠す
- 戦術32:無中生有 ゲームのなかに新しいプレイヤーを導入して、優位に立つ
- 戦術33:笑裏蔵刀 見た目は友好的な行動をとり、その裏で相手より優位に立つ
- 戦術34:樹上開花 協調的なネットワークを形成して、より大きな力を行使する
- 戦術35:擒賊擒王 相手のリーダーに働きかけて、影響力を行使する
- 戦術36:連環計 複数の戦術を駆使して、競争優位を持続的なものとする
「兵法三十六計」は、安直なHow Toではありません。
36通りの戦術があるわけですから、その中のどの戦術をとるべきか、具体的なケースに応じて選択しなくてはなりません。適用されるパターンは、戦術家がおかれた環境・条件によって様々に異なります。
(p5より引用) 「兵法三十六計」は、読者に対して、「このような方法もある」という選択肢を提示するものであり、「こうしなければならない」という結論を与えるものではない。
まさに、応用の巧拙が勝敗を分かつことになります。
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