少し前に「国家の罠」を読んだので、佐藤優氏の著作は本書で2冊目です。
佐藤氏の外交官キャリアの中で出会った国内外の政治関係の人々を中心に、その他、イエス・キリストやイスカリオテのユダといった彼の学問面の専門である神学の世界の人物も登場します。
佐藤氏流の人間批評ですが、正直なところ、読む前のイメージとはちょっと違ったテイストの内容でした。
たとえば、先の総理大臣小泉純一郎氏に言及した部分です。
(p114より引用) 「マフィアの技法」とは、一見、喧嘩好きのように見えても、いちばん強い者とは絶対に諍いを起こさないという処世術である。・・・このことをよくわかっていた小泉氏はアメリカとは決して喧嘩をしなかった。
全体を通して、私が勝手に期待していたような「人間論」というよりも、マニアチックな人物評というトーンです。
そういった中、私が気になったフレーズをご紹介します。
本書内で引用されている金峯山修験本宗総本山金峯山寺の東南院住職の「修験道」に関する言葉です。
(p239より引用) 修験道は、神道、仏教のみならず道教や日本の土着信仰が合わさったもので、多元性を基本とする。吉野は古来より政争に敗れ、逃れてきた人々を匿い、再出発させる場だ。われわれ山伏は偏見にとらわれず、人々を人物本位、言説をその内的ロジックのみで捉える。・・・多元性と寛容の世界を維持する。なぜなら、それがなくなると日本は日本でなくなるからだ。
ここでの「多元性」は、以前読んだ長部日出雄氏による「『古事記』の真実」という本に書かれていた「日本という国の特質は天武天皇に始まる『二元的社会』にある」といる論旨に相通ずるように感じました。
金峯山寺のある吉野は、「二元論」の典型的表象である「南北朝期」、かの後醍醐天皇が移った地でもあります。
インテリジェンス人間論 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2007-12 |
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