「そんなものか・・?」と思いますが・・・。
ふつうの人からみて「当たり前」の事象が、物理学の「基礎法則」から説明しようとすると、実は大変だというのです。
(p156より引用) 非可逆性が一つのよい例であるわけですが、これほど明白な事実が法則から一目で読みとれるのではなくて、実際、基礎法則から遠く離れた位置にある-これはおもしろいことです。・・・非可逆性は、世界の経済にとって、また歴然とした諸現象、世界の振舞いを理解するうえにおいて、最も重要なものであります。・・・にもかかわらず、非可逆性の理解は基礎法則を知ればただちに得られるというものではない。長い長い解析が必要なのであります。
物理の諸法則が経験には直接結びつかない、程度の差こそあれ法則は経験から離れた抽象的なものである-こう感じさせられる場合がしばしばあります。いまの問題で、法則は可逆的だが実際の現象はちがうというのも、その一例です。
このあたりの説明は、段階を踏んで辿っていくと分かったような気になります。
物理学も世界の理解のための一手段です。
ファインマン氏は一流の物理学者ではありますが、物理学的な方法のみにこだわっていません。
探究のための多角的で俯瞰的な見方を認めます。
(p162より引用) 悪や美、希望の端からにせよ、あるいはまた基礎法則の極端からにせよ、そのような観点だけから全世界の深い理解を得ようと望むのはまちがっています。・・・たくさんの研究者たちが、中間の階層で上下の一段につながりをつける仕事をしております。世界に対する私たちの理解を進めているわけです。階層の両端で働く人々、中間の階層で働く人々-こうした人々のおかげで、複雑に結ばれた多層建築である、このとてつもない世界を、私たちは徐々に理解していきつつあるわけであります。
現代物理学の「最先端」にいる科学者が置かれているところは、(当然ではありますが、)極限の場所です。
「その先の未知の領域」は、今正しいと考えられている法則のどれかを否定することによってしか到達し得ないようです。現在正しいと考えられている法則は、「今」知られている現実や実験結果と合致しているに過ぎないというのです。
もうひとつ、極限の場では「いくつもの物理法則が根本原理に収斂される」ようです。
ファインマン氏ですら、不思議に思うのです。
(p246より引用) 物理の基礎法則が、発見の当座には一見して同じとは見えないさまざまの形をとり、それにもかかわらず数学的にちょっといじってみると互いの関係がわかってくる。これはいつ考えてみても私には不思議です。
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