ゴールドラット氏の著作は「ザ・ゴール」以降、何冊か読んでいます。
本書も、基本は「Theory of Constraints(制約条件の理論)」の応用ですが、主張の内容はかなり趣きが異なっています。
著者の主張の大きな柱のひとつは、「ものごとは、そもそもシンプルである」という考え方です。
本書は、ゴールドラット博士と娘エフラットとの会話という形でストーリーが進んでいくのですが、この「ものごとはシンプル」という主張は、ニュートンの考え方を紹介する形で説明されています。
(p62より引用) ニュートンが言っているのは、その反対だ。ものごとは収束していくと言うんだ。深く掘り下げれば掘り下げるほど、共通の原因が現われてくる。十分掘り下げると、根底にはすべてに共通した少数の原因、根本的な原因しか存在していない。原因と結果の関係を通して、これらの根本的な原因がシステム全体を支配しているというんだ。つまり、『どうして』『なぜ』を繰り返すことは、ものごとを複雑にするどころか、逆にすばらしくシンプルにしてくれると彼は言っているんだよ。
このあたりは、トヨタが「なぜなぜを5回」で課題解決の本質的原因に迫っていく取り組みと似た発想です。
「Theory of Constraints(制約条件の理論)」自体、「トヨタ生産方式」によるプロセス改善と類似したアプローチですから当然といえば当然ですね。
ただ、「『ものごとはシンプルだ』と信じて課題解決に取り組む」というアプローチ手法は参考になります。
(p81より引用) 『ものごとは、そもそもシンプルである』というのは、現実は、現実のあらゆる面は、すべてごく少数の要素によって支配されていて、どんな対立も解消することができるということだ
著者も、それにより「明晰な思考」ができるようになると説いています。
逆に、物事は複雑なものだと考えると解決への道は遠くなります。
著者は、そういった問題解決を阻む「障害」を3つにまとめています。
(p124より引用) 一つ目の障害は、現実が複雑だと考えること。二つ目の障害は、対立は当たり前で仕方のないことだと考えること。この二つの障害が、必要な変化を導き出す邪魔をしているというのだ。
そして三つ目の障害は、「人には、他人を責める習性があること」だといいます。
「自責」で考えなさいということです。結局のところ、課題というものは、自分が主体的に動かないと、自分が自分のこととして解決するという強い意思をもたないと、解決しないということなのでしょう。
もうひとつ、本書の中で印象に残ったフレーズをご紹介しておきます。
「ロジックと直感」の関係についての著者の考えです。
(p253より引用) ロジック、つまり論理を展開していくには、直感に基づいて原因と結果の関係を次から次へと供給していかなければいけない。仮説を立てるにも、あるいは結果を予想するにも、直感なくしては無理なんだ。どんな前提があるのか、それを見つけ出すにも、やはり直感が必要だ
さて、最後に本書の感想ですが、ちょっと冗長で主張に今ひとつ切れがないかなという印象です。数年前読んだ同じ著者の代表作「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」のインパクトが際立っていたからかもしれません。
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