OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

〔映画〕特捜部Q 檻の中の女

2023-04-15 09:43:46 | 映画

 
 2013年公開のデンマーク映画です。「デンマーク」というのは珍しいですね。
 
 「特捜部Q」シリーズの第一作目とのことですが、シリーズものとして後続するのに必要な登場人物の設定や背景を織り込みながら、粛々と物語が進んでいきます。過度なアクションがないのも好印象です。
 
 “檻” という仕掛けは少々無理筋のところがありますが、ミステリアスな演出としては独創的ですね。主人公と相棒のキャラクタもそれぞれ一癖あってよかったと思います。
 
 決して“大作” ではありませんが、サスペンスとしては結構しっかりとした出来ですね。
 この感じなら次作も観てみようという気になります。

 

 

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〔映画〕ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

2023-04-14 09:33:53 | 映画

 

 2022年の映画です。

 「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の続編で、「ジュラシック・ワールド」三部作の第3作目、完結編との位置づけです。

 今までの作品に比べて、ストーリーは一本調子でラストも “万人、安心” のHappy endですし、本作のウリである恐竜たちの映像も見慣れてしまってインパクトはありません。
 今日のレベルでは、“並”のエンターテインメント作品と言わざるを得ないでしょう。

 とはいえ、以前の作品の主要メンバーが数多く登場人物していたり、ところどころに何某か過去の映画の「オマージュ」を想像させるシーンが織り込まれていたりと、昔からのファンに対するサービス精神は大いに感じられますね。

 しかし、こうやってシリーズ作品を何本か観続けると、やはり第一作目の「ジュラシック・パーク」の衝撃は絶大だったと改めて感じます。当時としては超絶リアルな恐竜の映像はもちろん、あの蚊から抽出した血液に含まれるDNAをもとに恐竜を復元する発想には驚かされました。

 

 

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〔映画〕12hours DEA特殊部隊

2023-04-13 11:52:11 | 映画
 2016年の映画です。
 
 “中途半端なB級サスペンス” かと思っていたら、実話に基づく作品とのこと。ちょっとビックリですが、どこまでがノンフィクションで、どのあたりがフィクションなのか気になりますね。
 
 ちなみに私は、いわゆる「B級映画」は嫌いではありません。ストーリーもシンプルで無暗に大げさな演出もなく、単純に楽しめる作品が多いように思います。メキシコ国境が舞台で、ちょっとラテン的な雰囲気のこの作品もまさにそうでした。
 
 ラストも予定調和的なHappy endですが、微笑ましいシーンで良かったですよ。

 

 

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磯崎新の「都庁」― 戦後日本最大のコンペ (平松 剛)

2023-04-12 09:23:36 | 本と雑誌

 知人のSNSで紹介されていたので気になった本です。

 磯崎新さんについては著名な建築家という程度しか知りませんが、昨年(2022年)暮に訃報が流れ、改めてその人となりの一端なりともたどってみようと思いました。

 本書は、現都庁建築時のコンペの場を舞台に、磯崎さんの魅力的な人物像と彼を取り巻く様々な人たちとの営みの様を描き出しています。

 まずは舞台となった1985年に行われた新宿新都庁舎コンペ(設計競技)についてです。本書で詳述されている鈴木俊一東京都知事(当時)丹下健三氏との関係を踏まえると、多くの人々は “出来レース” として仕立てられていたのだろうと考えていたようです。

(p356より引用) 丹下健三が鈴木都知事と共に設立した「東京都設計候補者選定委員会」のメンバーが、新都庁舎コンペを組織し、かつ審査員の大半を占める。そして丹下健三本人は応募者の側でコンペに参加する。 こんな構造なのだ。・・・
 もし、これを本気でまともなコンペにするつもりがあるのならば、東京都は、丹下健三を応募者ではなく審査委員長に就任させるか、あるいは、丹下がどうしても応募者の側に入りたいということであれば、「東京都設計候補者選定委員会」のメンバー全員を審査員から外したうえで、海外から中立のしかるべき実力と見識を備えた建築家や批評家を招待し、審査員を務めてもらうほかなかっただろう。

 そういった完全アウェイの舞台で、磯崎さんは自らの師でもある “巨大な壁” に向かって突進していったのです。磯崎さん自身、こう語っていました。

(p359より引用) 「いや、僕は出来レースじゃないコンペなんて、世界中どこにもないと思ってますよ、経験上ね。ハッハッハ」

 こういう環境下で、当の丹下健三氏は着々とコンペ案の作成を進めていきます。「第一・第二本庁舎」のデザインを固め、隣の街区に「広場」と「都議会議場」を配置。庁舎と広場とを「空中回廊」で結びました。

(p398より引用) 表向き、空中歩廊が設置された理由は、議場と本庁舎との行き来の便利を考えたため、ということになっている。
 でも、違うのだ。
 古市は言う。「・・・せっかく広場をつくっても、そこに面する建物が、京王プラザホテルなり、住友三角ビルじゃ、自分の気に入った広場はできないわけですね。広場には自分の第一本庁舎だけが面するようにしたいんです。早い話がですね、もう新宿NSビルなんか壊したいくらいですよね(笑)」
 だが、もちろん他の超高層ビル群を壊すなんてことが許されるはずもない。そこで丹下は考えた、目隠しをしてしまえ、と。
 「それで広場を回廊で囲んだんですよね、他が目に入らないように。・・・すると、ここには〝丹下広場” ができるわけです。・・・」

 基本の軸線に乗った“自分だけの空間を作りたい”というのが、丹下氏の強い意志でした。
 ただ、これは丹下氏の “我欲” の顕れと捉えるべきではないでしょう。彼の卓越した “全体構成力”の発露であり、彼が抱いていた“建築の意味への信念” によるものだったのだと思います。

 1986年4月7日、新都庁舎コンペ審査結果が発表されました。審査員の一人が明かした審査過程によれば、審査は「減点消去法」で進められたとのこと。

(p441より引用) 「減点消去法」が成立するためには、審査員があらかじめ100点満点の正解となる新庁舎のおおよそのイメージを審査の前から心得ていることが前提である。すなわち、この審査団が求めたのは、まだ点数化ができないような斬新な提案ではなく、この時代における標準的な超高層デザインの最大公約数だったと言えるだろう。

 そして、当然のごとく丹下健三事務所案が一等に選定されました。しかし、それは丹下氏が目指していた“ぶっちぎり”の評価ではなく、予想外に僅差での決着でした。

 2005年、丹下健三氏が亡くなった際の追悼文に、磯崎さんはこう記しました。

(p457より引用) 「あの意欲的に世界の歴史に残る作品を次々に制作していた頃に弟子として学び、助手として仕事をした私には、国家とすれ違っていった後からの丹下氏は本来の姿とは違ってみえる。あらゆる無理を覚悟で骨太の軸線を引きつづけた、あの時代の姿こそが、建築家丹下健三だったと今も思う。列島改造に引き出されて後は、もう余生だったのだ。」

 さて、本書を読み通しての感想です。
 磯崎さんが“建築家”として脚光を浴び始めた1960年代と、都庁コンペがひらかれた1980年代を往還しながら数々のエピソードが語られていきます。その時代感の相違や人間関係・師弟関係の妙がとても面白く、密度の濃いとても刺激に満ちた著作でしたね。

 

 

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〔映画〕種まく旅人〜みのりの茶〜

2023-04-11 11:48:41 | 映画

 
 2012年公開の日本映画です。
 
 珍しく “地方農業” をモチーフにしたシリーズものの第一作目ですが、内容は、“コミック” を原作としたようなテイストのホームコメディですね。
 
 いろいろな意味で “ご都合主義” 的な色合いが濃いので、好みは分かれるでしょう。まあ、私としては、こういった単純に観ていてホッとするようなエンターテインメント作品は嫌いではありません。
 
 キャスティングもよかったです。
 柄本明さんや石丸謙二郎さんといったバイプレーヤーとして定評のある役者さんを配したうえで、主役の陣内孝則さんと田中麗奈さんはそれぞれに自分たちの持ち味を十分に発揮していました。
 特に、陣内さんはこういったコミカルな役柄もうまく演じ切りますね。

 

 

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〔映画〕タイム・トゥ・ラン

2023-04-10 09:46:14 | 映画

 
 2015年公開のサスペンス映画です。
 
 私の好きなロバート・デ・ニーロが出演しているというので観てみました。
 
 バスジャックを舞台にしたモチーフ自体には目新しさはありませんが、ストーリー展開がテンポよく、伏線とサプライズもなかなか良かったと思います。
 
 あと、登場人物のキャラクタ設定が秀逸でしたね。ちょっとご都合主義的なところもあってそのぶんリアリティは失われてしまっていますが、エンターテインメントとしてはとても効果的でした。
 肝心のロバート・デ・ニーロもラストに向かうにつれて役割の重みが増していき、しっかり作品を引き締めていましたね。流石です。
 
 正直なところ、観る前はあまり期待していなかったのですが結構楽しめました。私としては十分満足できる出来栄えの映画でしたね。

 

 

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〔映画〕ラスト・リベンジ

2023-04-09 10:18:34 | 映画

 
 2014年の作品です。
 
 比較的最近のニコラス・ケイジ出演の映画なのでほとんど期待せずに観たのですが、やはり “期待どおり?” でした。
 
 ニコラス・ケイジの演技が酷いわけではないと思うのですが、どうもこのところの彼の出演作品は、そもそものプロットが雑な上にストーリー展開にも新機軸がなく、さらにラストに至っても締まりがないものが多いのでしょう。
 
 本作品も、かなり無理筋のプロットですし、相棒の行動も背景や動機の描写がないので意味不明でした。
 なので、観終わっても「何だったんだろう、この映画は・・・」といった印象なんですね。

 

 

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〔映画〕仕掛人梅安

2023-04-08 11:34:08 | 映画

 
 1981年の作品ですから、今から40年以上前のものです。
 
 原作は、言うまでもなく池波正太郎さんの代表的な娯楽時代小説シリーズ。主人公は、タイトルそのままに、“仕掛人” 鍼医者藤枝梅安です。
 
 エンターテインメントに徹したストーリーに加えて、善悪がはっきりしたキャラクターなので、映画に仕立てても単純に楽しめますね。
 
 そして、当時の映画のもうひとつの見どころはキャスティング。
 萬屋錦之介さん、中村嘉葎雄さんという兄弟共演に、悪役の伊丹十三さん、中尾彬さん。女優陣は、小川真由美さん、宮下順子さん、真行寺君枝さん、と時代を感じつつも豪華な面々が並びます。

 

 

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〔映画〕ルパン三世 お宝返却大作戦!!

2023-04-07 10:43:34 | 映画

 
 2003年、金曜ロードショーの枠で放映された作品です。
 
 その点では「ルパン三世 カリオストロの城」のような本格的なアニメ映画ではなく、「TVスペシャルシリーズ」との位置づけのようですね。
 とはいえ、結構しっかりしたストーリー構成で、ルパン三世シリーズの中でもかなりいい出来だったと思います。
 
 ルパン三世はもちろん、次元大介、石川五エ門はそれぞれのキャラクタを活かした見せ場がありましたし、峰不二子のアクションも冴えていました。
 
 敵役が見せたラストシーンも、それまでの伏線を回収して余りある印象的な幕切れでしたね。

 

 

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超圧縮 地球生物全史 (ヘンリー・ジー)

2023-04-06 10:32:55 | 本と雑誌

 

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。

 タイトルをひと目見て予約したのですが、長大な時間軸の中からどんなエピソードをピックアップするのかとても興味が湧きますね。

 紹介されている多彩なトピックや解説の中から、特に私の関心を惹いたところをひとつ書き留めておきます。

(p266より引用) 今後数千年のあいだに、ホモ・サピエンスは消滅するだろう。・・・人類の生息域は地球全体だが、人類は積極的に生息に都合の悪い環境をつくってきた。
 人類絶滅の最大の理由は、人口の移り変わりがうまくいかないことだ。人類の人口は今世紀 中にピークを迎え、その後減少へと転じる。・・・
 先史時代、太古のむかしの出来事により、遺伝的な多様性が足りないこと、現在の生息地の喪失による絶滅負債、人間の行動や環境の変化による少子化、より局所的な、小さな集団が直面する、ほかの集団から孤立する問題などが組み合わさり、人類は絶滅するのだ。

 科学的な推論の結果です。想像できる未来ですが、なかなかこう明確に結論づけている論考は珍しいように思います。

 さて、本書ですが、地球誕生から今に至るまでに登場した様々な生物を数多く紹介してくれています。

 ウェイト的にはやはり “動物” がかなりを占めますが、よく見られる本のように大人気の「恐竜中心」に止まっていません。広く原初の生命から海綿動物・脊椎動物・その中で、両生類・爬虫類・哺乳類等々についても、今までに聞いたこともないような種族が大量に登場します。
 スマホで画像検索しながら辿っていったのですが、よく化石だけからここまでの形態や生態を推測できるものだと大いに驚きました。
 生命38億年、その激動の歴史の中では、本当に様々な「命」が生まれていたんですね。

 ちなみに、本書での地球形成の歴史を辿った解説を理解するにあたっては、先に読んだ鎌田浩毅さんの「知っておきたい地球科学」、最後の方のホモ・サピエンスに至る解説については、篠田謙一さんの「人類の起源」がいい予習になりましたね。 

 

 

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〔映画〕サイドウェイズ

2023-04-05 11:18:23 | 映画

 
 2009年公開の日本映画です。
 
 「Sideways」というアメリカ映画のリメイク版とのこと。
 「Sideways」の方は、アカデミー賞で脚色賞を、ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞している作品なので、かなり出来はよかったのでしょうが、こちらの日本版は正直なところ “イマイチ” といった印象ですね。
 
 どうにも、メリハリのない展開で、ラストも尻切れトンボ。
 小日向文世さんが演じた主人公も、ただグズグズしているだけの中年おじさんに見えて、どうにも魅力を感じません。コメディアンヌとしても力量のある鈴木京香さんですら、この作品では輝かなかったですね。
 
 これは役者さんではなく、シナリオや演出の出来のせいでしょう。
 
 その中でも何とか持ち味の片鱗を見せていたのは菊地凛子さん、自然で素直な明るさに溢れた表情は “西海岸” でした。

 

 

 

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〔映画〕グッバイ、リチャード!

2023-04-04 10:00:34 | 映画

 
 2018年に公開されたジョニー・デップが主演のヒューマン・ドラマです。
 
 テーマ自体はなかなかに重いものですが、比較的軽めのストーリーですね。これといってインパクトのない展開です。
 
 大学教授を主人公に据えたのであれば、たとえばもっと一人一人の学生と接するシーンを深堀りして、彼ら彼女らの変貌を描くというのもひとつのメッセージの伝え方だったように思います。
 
 織り込まれているエピソードがそれぞれ中途半端なせいもあり、主人公の心理や境遇に対する共感も今ひとつなんですね。
 ラストの家族との別れのシーンも今ひとつ雑で、これでいいのかという違和感と、重いテーマを扱った映画のエンディングという点では大きな物足りなさが残りました。

 

 

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〔映画〕春を背負って

2023-04-03 11:41:16 | 映画

 
 2014年に公開された作品です。
 
 山を舞台にした映画ですが、過度にスリリングなシーンはありません。ほのぼの系のホーム・ドラマといったテイストです。
 
 登場人物は “いい人” ばかりですし、描かれるエピソードもどれも “中庸” ですね。極めつけはラストシーン。最近ではまずお目にかかれないような(かなり照れくさい)演出は象徴的でした。
 
 その割に?、キャスティング的には多彩で実力派の面々が顔を揃えていました。
 中でも一番持ち味を発揮していたのは蒼井優さんでしたね。彼女の清新な柔らかさは立山の四季の風景にピッタリでした。

 

 

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〔映画〕白ゆき姫殺人事件

2023-04-02 12:07:55 | 映画

 
 2014年に公開された作品です。
 
 原作は、湊かなえさんの人気小説です。
 
 そういう言い方はないのでしょうが、言うなれば “ライト・サスペンス” といったテイスト。流行ってきたSNSを取り入れたり、TVのワイドショーを揶揄したりと、当時の時代感や世相をうまく活かしたつくりですね。
 
 映画の出来としては、エンターテインメント作品として普通に楽しめるといったレベルですが、井上真央さん、貫地谷しほりさんという私の好きな女優さんが出演していたということで、私としては十分 “及第点” です。
 お二人とも“地味”なキャラクターをとても丁寧に演じていたように思います。ラスト近くの絡みのシーンは、素直に救われますね。

 

 

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飛び立つ季節 :旅のつばくろ (沢木 耕太郎)

2023-04-01 09:40:15 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。

 沢木耕太郎さんと言って思い浮かべる代表作は「深夜特急」ですが、本書は、日本国内の旅でのエピソードを綴ったエッセイです。肩ひじ張らずにページをめくってみようと読み始めました。

 沢木さんの “旅の原点” は、16歳の時の東北一周の一人旅とのこと。「上野駅のホーム」を久しぶりに訪れた沢木さんはこう記しています。

(p37より引用) 上野駅のエスカレーターを降り、中央改札を出て、あらためて構内を眺めた。
 たぶん、天井も壁も私が十六歳の頃とはさまざまに違っていることだろう。
 しかし、海外を含めたその後の私の旅のすべては、この駅の、この改札口を入ったところにある、北に向かう列車が停まっているプラットホームから始まったのだ。

 私も行き止まりのホームには思い出があります。
 私の初めての一人旅は高校2年生のときですから、沢木さんと同じ16歳ごろですね。行先は九州一周。沢木さんは、夜行列車と駅と国民宿舎が宿だったそうですが、私の場合の宿は夜行列車とユースホステルでした。 夜行列車の始発駅と到着駅は行き止まり。門司港を出て長崎までが振り出しでした。次の日は、また門司港まで戻って、今度は西鹿児島へ。
 その後の北海道旅行のときは、上野発、青森。行き止まりのホームを降りて、そのまま桟橋へ。そして青函連絡船で函館。青函トンネルが開通した今となっては、もうこのルートは辿れませんね。

 このエッセイの舞台は「旅」です。
 この国内小旅行でも、目的地は定めても細かな予定は立てず、事前の情報収集もしないのが “沢木流”。なので、旅先で行先を変えたり寄り道をしたりするのは日常茶飯事です。

(p181より引用) さて、どうしよう。行こうか、行くまいか。
 迷った末に、やはり行くことにした。・・・
 行くか、行くまいか、迷ったときは行くにかぎる。なぜなら、すべては移動によって始まるから、だ。

 そうですね、新たな発見は行かなくては得られません。行ってみて何もなくても、期待外れでも。それもまた“旅の思い出”です。

 

 

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