いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
沢木耕太郎さんと言って思い浮かべる代表作は「深夜特急」ですが、本書は、日本国内の旅でのエピソードを綴ったエッセイです。肩ひじ張らずにページをめくってみようと読み始めました。
沢木さんの “旅の原点” は、16歳の時の東北一周の一人旅とのこと。「上野駅のホーム」を久しぶりに訪れた沢木さんはこう記しています。
(p37より引用) 上野駅のエスカレーターを降り、中央改札を出て、あらためて構内を眺めた。
たぶん、天井も壁も私が十六歳の頃とはさまざまに違っていることだろう。
しかし、海外を含めたその後の私の旅のすべては、この駅の、この改札口を入ったところにある、北に向かう列車が停まっているプラットホームから始まったのだ。
私も行き止まりのホームには思い出があります。
私の初めての一人旅は高校2年生のときですから、沢木さんと同じ16歳ごろですね。行先は九州一周。沢木さんは、夜行列車と駅と国民宿舎が宿だったそうですが、私の場合の宿は夜行列車とユースホステルでした。 夜行列車の始発駅と到着駅は行き止まり。門司港を出て長崎までが振り出しでした。次の日は、また門司港まで戻って、今度は西鹿児島へ。
その後の北海道旅行のときは、上野発、青森。行き止まりのホームを降りて、そのまま桟橋へ。そして青函連絡船で函館。青函トンネルが開通した今となっては、もうこのルートは辿れませんね。
このエッセイの舞台は「旅」です。
この国内小旅行でも、目的地は定めても細かな予定は立てず、事前の情報収集もしないのが “沢木流”。なので、旅先で行先を変えたり寄り道をしたりするのは日常茶飯事です。
(p181より引用) さて、どうしよう。行こうか、行くまいか。
迷った末に、やはり行くことにした。・・・
行くか、行くまいか、迷ったときは行くにかぎる。なぜなら、すべては移動によって始まるから、だ。
そうですね、新たな発見は行かなくては得られません。行ってみて何もなくても、期待外れでも。それもまた“旅の思い出”です。