「死刑、覚悟できている。だけど…」
人を殺しておいて、本当に覚悟ができているのか。
「一日も早く死刑にしてほしい」
青酸連続不審死事件で殺人罪などに問われた筧(かけひ)千佐子被告(70)に対し、
京都地裁は7日、死刑判決を言い渡した。
「明日の夢もなく、ただ死刑の日を待つのみ」
8月以降、朝日新聞記者が34回にわたって京都拘置所で面会をしたり、
はがき等で通信を交わした記録である。
この二つの発言を見れば、
今は、粛々と判決を待つのみだという気持ちの表れかなと思われる発言だ。
だが、紹介された彼女の発言は許し難い、自分本位の発言に変化していく。
判決前の接見で得られた発言。
「死刑になることは分かっている。
覚悟はできているの。
だけどね、私も人の子やからね。
本当はまだ生きていたい」
高齢の男を手玉に取り、青酸連続死の殺人罪に問われた筧千佐子被告だ。
ここには、
殺人という罪の重さも、
かけがいのない命を奪うという身勝手な自分を悔いる気持ちなど微塵も感じられない。
自分の金銭的欲望のために何人もの人の命を殺め、
表の顔は「覚悟は出ている」と装いながら、
裏の顔がひょいと顔を出す。
「人の子やからね」「本当はまだ生きていたい」と本音をのぞかせ、
罪の意識など微塵もない。
「あなたを愛した人が目の前で倒れて苦しんでいる時、
ほんの少しでも可哀想だという気持ちはわかなかったのか」
記者の誘導尋問にしばらく沈黙した筧被告の答えはなかった。
7日、京都地裁の判決が出た同日午後の面会記録。
「まだ生きていたい。
控訴をして、
それでもだめならあきらめがつく。
笑って死んでいくよ」。
「覚悟はできている」という発言と裏腹に、
「まだ生きていたい。
控訴を」すると本音を言う心の裏には、
「生」に対する未練が見える。
この期に及んで「笑って死んでいくよ」と見栄を張る筧被告が哀しい。
最後まで、虚構の心中から逃れられない被告はあわれだ。
(参考:朝日新聞11/7夕刊 11/8朝刊)
(2017.11.11記) (つれづれ日記№70)