ニュースの声(9) 揺らぐ専制国家ロシア
(1) プーチン氏に「誤った情報」
米英「側近ら、怖くて真実言えず」(朝日新聞朝刊2022.4/1)
米英政府機関が相次いで機密情報を公開した。
情報戦の応酬
メディアを利用した情報戦は、ロシア、ウクライナばかりでなく、
後方支援をする米英なども参加し、どの情報が正しいのか疑心暗鬼に陥ってしまう。
プーチン氏に「誤った情報」を側近たちが流している、
つまり、プーチン大統領が正しい情報を得ずに、戦略的な失敗を重ね、
部隊の士気も低下していると公表することで、
ロシア側を揺さぶる情報戦の一環ではないかと報道は伝えている。
ホワイトハウスの見解(米情報機関)
ロシア軍のウクライナでの戦闘の不手際や、
米欧などによる経済制裁がロシア経済に及ぼす影響について誤った情報を
(側近がプーチン大統領に)伝えている。
「プーチン氏のことが怖くて真実を伝えられない」からだと。
「専制国家のアキレス腱の一つは、権力に真実を語る人がいないということだ。
我々はそれをロシアで見ている」(米・ブリンケン国務長官)
英国の情報機関・フレミング長官の見解
プーチン氏がロシア軍の実力を過信しウクライナ側の抵抗や、
国際社会の結束を見くびっていた点をあげ、
「状況を大きく見誤った可能性が高い」と述べ、
ロシア軍の士気の低下についても指摘している。
専門家の見解(日本大学危機管理学部小谷賢教授)
相次ぐ米英側の機密情報の公開をどう評価するか。
① 「停戦協議に向けた駆け引きで、ウクライナ側が譲歩しすぎないようにし、
ロシアのペースで協議が進まないよう発信している」
② (機密情報を小出しにすることについて)
「『誰か裏切り者がいる』とプーチン氏の疑心暗鬼を増幅させて
内部崩壊を狙っている」
通常、機密情報は公表しない。収集した機密情報は、相手側を徹底的に分析し、
戦略の基礎材料として利用する。
機密情報の公表は、相手側に作戦の方向性を教えてしまう危険性を持っている。
にもかかわらず、公表に踏み切るのは、
公表する欧米が戦争の実践者ではなく、後方支援者として経済的制裁や 武器の供給、
資金の援助している部外者的な役割を持っているにすぎないからだろう。
だから、 ①と②が重要な役割を担っているのでしょう。
(2) 赤十字国際委員会(ICRC)、安全確保ができずマリウポリ市民退避計画に失敗
(共同通信社2022.4/2)
(ウクライナ南東部マリウポリで、荒廃した街中を歩く住民 タス=共同)
ロシア側の包囲攻撃が1カ月以上続くウクライナ南東部マリウポリの市民を退避させるため、
赤十字国際委員会(ICRC)が車両やスタッフを派遣した。
しかし、安全を確保できず引き返した。
市内は水道や電気が使えず、食料や医薬品も不足し、
人道危機が極限状態になっている。
ICRCは人道支援物資の搬入も(ロシア軍に)妨げられた。
4/2に再び市民退避計画を試みる予定。
「人口約43万人のうち、約17万人が依然しないに閉じ込められていると推定しているが、
ウクライナの他都市への組織的な退避は実現していない」(マリウポリ市長)
戦争になれば、抵抗力のない市民・女や子ども、老人が犠牲になるのは
いつの時代も同じ。
無差別攻撃を含んだ非人道的戦闘行為も、大量破壊兵器もかって米軍が
日本の都市を襲った焼夷弾による殺戮や、核爆弾の使用と変わりはしない。
核の抑止力は暗黙の合意であったはずなのに、卑劣にもロシアは脅しの手段
として利用している。
果てのない、軍備拡張競争の前兆にしてはいけない。
沖縄戦においては、防空壕などに潜んだ兵士を火炎放射器で焼き殺すシーンを
ニュース映画で何度も見て、子ども心に、
「なんてひどいことをするんだ」と恐怖と共に無意識のうちに、戦争の非情さ
と、それを行う人間の恐ろしさを感じていたが、今、また程度の差こそあれあ
の時と同じようなことが繰り返されていると、人間って生物の中で最も愚かな
生き物だなと思う。
救いは、日欧米等、太平洋条約機構の141カ国が、武力による解決ではなく、
経済制裁を含む話し合いなどで解決を望んでいることだ。
ロシア軍によるウクライナ侵攻の終結の第一歩は、無条件の停戦をすることで
はないか。
停戦協議が互いの条件の応酬になってしまっては、解決は長引き、机上で停戦
協議を行い、その裏で戦闘の応戦が行われ、力の劣勢な国が条件を飲まざるを
得ない状況がつくられてしまう。
核爆弾等によって徹底的に破壊され、『無条件降伏』を飲まざるを得ない劣
勢に立たされた経験を持っている。
『無条件の停戦』が侵略終結へのスタートラインだ。
(ニュースの声№9) (2022.04.02記)