スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

リコー杯女流王座戦&ネコと地蔵

2025-03-07 16:51:34 | 将棋
 5日に指された第14期女流王座戦五番勝負第三局。
 福間香奈女流王座の先手で中飛車。後手が角を交換したので向飛車になり,後手も向飛車に振っての相振飛車。この将棋は1筋の歩の付き合いがなかったことが影響して先手の銀冠に後手の矢倉になったのですが,これはたぶん先手が得をしているので,後手は角を交換する前に☖1四歩と突き,先手が☗1六歩と受ければ実戦のような作戦を採用し,受けなければ突き越して別の作戦に持ち込む方がよかったように思えます。
 中盤の早い段階で戦いに持ち込んだ先手が有利になり,後手が入玉も含みに粘りに粘った将棋だったのですが,感想戦の結論だと後手が逆転したところはなかったようです。なので戦いに持ち込まれたところ,後手が軽視していたという☗4一角と打たれた局面の直前が最大の勝負所だったのではないでしょうか。
                       
 ここで☖7三桂と跳ねました。この手がよくなかったのは,☗8五歩と打たれたときに☖7三銀と引く余地がなくなってしまったことで,これにより☗4一角が成立することになりました。なのでここではたとえば☖3三桂のような別の手を指すべきだったでしょう。この場合は☗6五歩☖同歩☗3一角のような別の攻めが成立することになりますが,こちらの方が後手にとっては均衡を保ちやすかったように思われます。
 3連勝で福間女流王座が防衛第3期,6期,7期,8期,11期,12期,13期に続く四連覇で通算8期目の女流王座になります。

 吉田はふたつの例を自身のものとして示しています。
 吉田は自身がとくにネコが好きだというわけではないそうですが,見知らぬネコが見知らぬ男に虐待されているのを表象したら,悲しみtristitiaを感じるといっています。人間とネコであれば,自身と似たところがあるのは人間ですから,虐待している男の方に共感しそうなものですが,そうはならず,ネコの方に共感するということです。これは吉田がネコとの間に何らかの共通項があるとみなしているからであって,男に対する共感sympathiaよりもネコに対する共感の方が優先されるのです。このことは僕たちは経験的に理解できるのではないでしょうか。この場合にはネコに対して共感し,男に対しては反感antipathiaを抱く人が圧倒的に多いのではないかと思います。これは原理的に反感よりも共感が先行するからなのであって,ネコに対して共感を有するがゆえに,男に対しては反感を抱くことになるのです。つまり共感の対象objectumは人間である必要はなく,ネコであっても構わないのです。
 さらに,道端に地蔵があって,この地蔵をだれかが破壊していたとしたら,やはり悲しみを感じると吉田はいっています。地蔵はネコとは異なり生物ですらありませんから,余計のこと破壊している人間の方に共感しそうなものなのですが,そうはならず,無生物である地蔵の方に共感を抱くと吉田はいっているのです。これはだれでもそのように感じるであろうとは僕はいいませんが,吉田のいっているところはほとんどの人が理解できるのではないかと思います。つまり僕たちは地蔵のような無生物に対してさえ,自身と似たところがあると了解することがあるのであって,この了解さえあれば,地蔵に対して共感を抱くということもあるのです。そして地蔵を破壊している人に対して反感をもつとすれば,それは地蔵に対する共感が原理的に先行しているからなのです。
 このように,感情の模倣imitatio affectuumというのは他の人間に対してだけ成立するわけではなく,おそらく感情など有さないであろうと思っているような地蔵のようなものにも成立するのですが,それが最も成立しやすいのが,生物学的な共通項が多い他人に対してであるということは間違いありません。

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