スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

棋聖戦&物体論の特色

2016-07-13 19:28:53 | 将棋
 隠岐の島で指された第87期棋聖戦五番勝負第四局。
 永瀬拓矢六段の先手。矢倉の早囲いを目指したのに対して後手の羽生善治棋聖が急戦矢倉で対抗しました。
                                     
 ここはもう中盤戦。後手は跳ねた桂馬を目標に△3五歩と突きました。
 ▲同歩と取る手もあったと思いますが▲5五歩と取ったので△同銀直▲同銀△同銀で銀交換に。わざわざ呼び込んでいるような印象も受けました。
 前例はあって▲5三歩と打ったらしいのですが単に▲4五桂と跳ねて新しい将棋に。対して△3四銀と打ったのはほぼ絶対手のようです。
 ここでは▲5三歩と打って前例に戻すか,▲2四歩と打っておくかしなければならなかったようですが単に▲4六歩と突いて桂馬を守りました。ですが2筋に綾がないためにすぐに△4五銀と取られてしまい▲同歩に△6六歩と取り込まれることに。
 ここで▲6四歩と打ったのは最善だったと思われますが落ち着いて△同金と取られると▲6六銀と戻さざるを得ず,△同銀▲同金に△6五桂打と攻め込まれることに。
                                     
 第2図で後手が勝勢に近い局面になっているようです。総じていえば先手が経験不足でうまく対応できなかったという一局ではないでしょうか。
 羽生棋聖が勝って2勝2敗。第五局は来月1日です。

 スピノザの物体に関係する哲学の内容を最も丁寧に説明しているのは,僕が知る限りでは河井徳治の『哲学書概説シリーズ スピノザ『エチカ』』です。そこで述べられているように,スピノザの物体論には大きな特徴がありました。
 第二部定義一で明らかにされているように,物体は延長の属性の個物res particularisです。一方,スピノザはシュラーGeorg Hermann Schullerに宛てた書簡六十四において,運動と静止は延長の属性の直接無限様態であると説明しています。これはシュラーから送られた書簡六十三への返答で,だからスピノザもシュラーに送り返しています。ただし六十三を読めば分かるように,延長の属性の直接無限様態とは何かという質問をしたのは実際にはチルンハウスです。なのでスピノザも手紙はシュラーに送っていますが,チルンハウスの質問に答えていると意識していたでしょう。
 直接無限様態と個物では,直接無限様態の方が本性の上で「先立つ」様態でなければなりません。したがってスピノザの物体論では,運動と静止が物体に対して本性の上で先立つことになります。すなわち,まず物体が存在して,その物体が運動したり静止したりするというように考えてはいけません。まず運動と静止があって,そこから物体が発生する,他面からいえば,運動と静止がまず概念されて,その概念を基礎として物体が概念されるというように考えなければならないのです。
 このことは第一部定理三二系二からも裏付けられます。この部分は意志の自由が神の本性には属さないということの説明として与えられている部分ですが,明らかに運動と静止から無限に多くのもの,すなわち物体が発生してくるということを含意しているからです。しかしどうして運動と静止から無限に多くの物体が存在し得るのか,他面からいえば運動と静止が概念されることによって無限に多くの物体が概念され得るのかということについては,スピノザは確たる説明をしていません。チルンハウスに宛てた書簡八十三から解する限り,スピノザはそれを説明する意欲はもっていたと思われますが,この手紙の日付の約半年後には,スピノザは死んでしまったからです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 先生の善悪&実証主義的見解 | トップ | 農林水産大臣賞典ジャパンダ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

将棋」カテゴリの最新記事