スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

銀河戦&第四部定理三二

2008-01-24 20:00:49 | 将棋
 10日に放映された銀河戦で,ちょっと珍しい仕掛けがありましたので紹介します。Eブロック4回戦で,村田智弘五段と中村亮介四段の対戦でした。
 後手の中村四段の四間飛車。藤井システム風に牽制しなかったので先手の村田五段は居飛車穴熊を選択して第1図。ここまではありそうな感じです。
   
 ここで後手は☖1四歩。不急に感じる手です。以下,☗9九玉に☖3五歩で第2図。
   
 普通に考えると☖3五歩は☖3二飛から角を引いて☖3四飛と浮こうという狙いに思えます。そこで先手は☗6八角。もし飛車が3二にいれば角を引いて何事もありませんが,ここでは3五の歩を守るために☖3四銀。これで構想が阻止されたと思いきや,後手の真の狙いは別のところにあり,以下,☗8八銀☖3二飛☗6七金右に☖1三桂で第3図。第1図の☖1四歩が生き,先手は2五の歩を守る術がありません。
   
 後手が桂馬を1三に跳ねだして2五の歩を狙うというのは非常に珍しい筋なのではないかと思います。実戦も第4図の☖2五桂が実現,後手の一歩得になりました。
   
 ただし,実戦的にいえば居飛車穴熊は一歩損くらいでは大して響きません。この後,飛車を犠牲に馬を作った先手がむしろ優位に。しかし後手の端を絡めた反撃に受け間違えて逆転。とくに第5図で☗8五金と手厚く打ったのがまずく,ここは☗8六歩とした方がよかったようです。
   
 この将棋は逆転してからの後手の寄せも見事で印象的。第6図の☖4八角,第7図の☖6七角など,好手も連発して,珍しい構想を見せた中村四段の勝ちとなっています。
 
 この将棋は番組の聞き手が村田五段の妹の村田智穂女流初段でした。聞き手の声が聞こえるわけではありませんが,村田五段としては少しやりにくい状況ではあったかもしれません。

 王将戦はごきげん中飛車③CⅠの超急戦に。久保八段は昨年の棋聖戦第四局で佐藤二冠が指した「偉大なる悪手」☖5四歩を採用。ここから☗6三桂成☖同玉に,羽生王将は☗6六香ではなく,☗9六角の新手を放ちました。以下,☖7四歩☗6六香☖同馬☗同歩☖9五銀で1日目終了。この将棋がどうなるかに☖5四歩の今後の命運が握られているかもしれません。

 それでは第四部定理三二に進むことにしましょう。
 「人間は受動に従属する限りにおいては本性上一致すると言われえない」。
 この定理Propositioは証明Demonstratioと証明の後の備考Scholiumでスピノザが述べているように,それ自体で明らかであるといえます。なぜなら,たとえばAの本性naturaとBの本性が一致するというのは,第二部定義二により,Aについて,それがなければAがあることも考えるconcipereこともできず,逆にAがなければそれがあることも考えることもできないようなある事柄と,Bに関して,それがなければBがあることも考えることもできず,またそれはBがなければあることも考えることもできないようなある事柄とが,完全に一致するという意味でなければならないからです。したがって,たとえばAもBもCではないというならば,この言明自体は絶対的に正しい真の命題であるといえるのですが,だからAとBの本性が一致するということを意味するわけではありません。AはCではないということによってAであるわけではありませんし,Bもまた,CではないということによってBであるというわけではないからです。むしろCではないということは,AにとってもBにとっても,それがなければあることも考えることもできない事柄であるどころか,むしろそれ自身が本性として有していない事柄についての言明であるからです。よって,もしもこうしたことによってのみ,AとBが一致するのであれば,この言明は同時にAとBの本性は異なるということを意味していることになります。
 同様に,人間の受動passioというのは,それがなければ人間があることも考えられることもできないようなあるものではありません。むしろ人間Aと人間Bの本性がこの点で一致するといわれるなら,おおよそ受動に従属するようなもの,すなわち第四部公理により,すべての個物res singularisの本性は一致するといわれなければならないでしょう。しかしそれが不条理であるのは自明ではないかと思います。よって,人間は,受動に従属するという点から,本性の上で一致するということはできないということになります。

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