犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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リ・サイクル

2021年07月27日 | のりもの
最寄りの駅からすぐ近くに自転車屋が有った。
同じ道の並びに、チェーン店の自転車屋ができたが、
古い地元の固定客が付いていたと思う。
なんたっていい仕事をするからだ。



十年以上前のことだが、
同居していた女子がまだ小学生だった頃のことだ。
新しいチェーン店のほうの前で、自転車がパンクして困っていたら、
その店の人がタダで直してくれたという。
お金を持っていない子どものこととは言え、
なんともいい話だ。
個人店なら分かるけれど、チェーン店ではなかなか
そういう判断もしにくいのではないか。



つまり、最寄り駅は自転車屋の当たり駅なんである。
だが、その隣の駅もなかなかの自転車屋当たり駅なのだ。
北側の商店街をずーっと行った所の店は、ろくに看板も出ていない。
どころか店に人もいない。
貼紙に従って、二軒隣の総菜屋に行くと、
居座って茶を飲んでくっちゃべっている。
近所付き合いなのか、家族なのか、もはや一見したくらいでは分からない。

修理だと言うとすぐに腰を上げて店に戻る。
ガレージにごちゃごちゃと道具が置いてあるだけの店だ。

すでに分かっているとおり、かなりの話好きであって、
修理している間もずっと何かしらしゃべる。
修理のコツもしゃべる。
コツをよく知っている自慢もしゃべる。

私はコツのところをよく聞いておいて、
今後、自分で修理する時の参考にする。
おしゃべりは良い教師である。



駅の南側の商店街をずーッと行くと、また自転車屋が在る。
自転車屋?
店頭には野菜が並んでいる。
野菜も並んでいるが、新車も並んでいる。
私はサイクル八百屋と呼んでいる。

野菜はふつうの値段だが、
自転車の修理は格安である。
なんせ気前が良く、こちらもおしゃべりである。
おしゃべりの種類がちょっと違って、
道を通る中学生に
「おかえり! どうした!試合負けたのか?」なんて言って
ウルサがられたりしている。

十年以上前にすでにジジイだったから、
今もご健在かどうかは、不明。
今度、行ってみよう。



もとい。
最寄り駅の、古い個人店について。

おじちゃんが修理して、おばちゃんが会計してくれた。
年老いたお母さんがデイサービスから送られて帰ってくるところに
居合わせたことが有る。
私の母と同じデイサービスに通っているようだった。

永く乗っている自転車を修理に出したことが有る。
マウンテンバイクも持っていて、そのママチャリにはあまり乗っていなかった。
そのため、タイヤがもう劣化しきっていた。

前後ともタイヤ交換してください。
と言うと、
片側だけで4500円。両方ならサービスしても8000円。
もう少し出せば新車が買えてしまう。
どうしますか?
と聞かれた。

ちょっと考えます。
と言って、一旦、自転車置き場に行った。



私は子どもの頃から自転車が好きだった。
自転車に乗って一人で突っ走っている時は、
とても自由だった。

そういう私を母は心配して、
腕時計を買い与えて、「30分で帰る」というルールを与えた。
短い!
小学生とは言え、30分は短い。
近くの川っぷちへ行って、ちょっと行ったらすぐに帰らなければならない。

おかげで猛スピードで走るようになった。
一方ですぐに時間の延長を願い出た。
延長に延長を重ね、スピードもアップしていった。

近くの川をひたすら下って、多摩川との合流点まで行って帰ってきたり、
上水路をひたすら上って、多摩湖まで行って帰ってきたり。

自分の足で移動するということは、
私にとって自立の大きな表現だった。



自転車置き場まで行ったものの、
やっぱり新車に買い替える気持ちにはなれなかった。
再度、自転車屋に向かった。



後日、修理のできた自転車を受け取りに行ってみると、
両輪が交換してあるだけではなかった。

ゆがんでしまっていた前カゴが、別の物に交換してあった。
破れかけていたサドルが、別の物に交換してあった。
ペダルも、別の物に交換してあった。

つまり、私の自転車はあちこちガタガタだったのだ。
廃棄する別の自転車から部品を取って、付け替えてくれたのだ。
全部、サービス。

よよよ。
今回はタイヤ交換だけでお金がかかるから言わなかったのだ。
徐々に直していこうと思っていたのだ。
それを、見かねたのか、直してくれた。



そういう地元の自転車屋がついに閉店になった、と
友人YがLINEしてきた。

Yが見たとき、閉店を告げる貼紙の横に、
もう一枚の貼紙が有ったという。
『また再開してくださることを祈っていました。今までありがとうございました。』と。

そう思った全員が貼紙をしたら、
シャッター一面ベタベタになることだろう。
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