犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

メーター改革へ どうしても間違う篇

2019年12月28日 | 椰子の実の中
[あらすじ] 以前、水道メーターの検針員をしていた。
水道メーターは大体、敷地のすみっこ、道路から近い位置に在る。
車の下になっていたり、犬が飛びかかってきたり、
泥水が流れ込んだりなど、見にくい状況になっているものも多い。

メーターボックスの上に物は置かず開けやすく、メーターは読みやすく清潔に。
水道を利用するお客様のご理解とご協力をお願いしたい。


「万が一」という言葉が有る。
百分率で言えば、0.01%。小数点以下2桁のところの1である。
とても少ない、ほとんど無い、無いと言ってもいいくらい、といった意味だ。

事故は、万に一つも有ってはいけない、と言う。
しかし、母数が万も有りゃ、そのうち一くらいはなんかしら混じるもんではなかろうか。
ましてや人間がやっている仕事である。

メーターの数字を読み間違えることを、「誤針(ごしん)」と言う。

水道の検針で、私の場合では、月に3000~4000件ほどを担当していた。
つまり、3ヶ月で一万件だ。
3ヶ月に一度くらいは、誤針が有る。
有ってはいけないのだが、有る。

私のいた職場に当時、検針員はおよそ15人くらいいた。
15人がそれぞれ3ヶ月に一度誤針するならば、
全体では毎月5つの誤針が出るという計算になる。

一人ひとりは3ヶ月に一度でも、検針員をとりまとめる上司は、
月に5回も謝らねばならない。
お客様に謝るのは役所の人で、その役所の人に怒られるのは下請け業者である。
怒ったお客様も厄介だが、その怒りを背負った役所の人間というのもこれまた厄介である。
そうして怒りの行き着く先はやはり現場の人間である。



ある時ついに、罰則が設けられた。
誤針をしたら、検針報酬の単価×2の減俸、というのである。
こちとら1件いくらで仕事しているのだ。
ミスは1件なのにマイナスは2倍ってどういうことだ。

そんな反発も聞き入れられることは無かった。
減俸はイヤだから頑張るけれど、頑張ったところでミスはそう減るでもない。
むしろ減俸の仕組みに対する不満が加わって、労働意欲は減退する。
末端の人間の頑張りに負荷をかけたところで、業務内容は良くなるわけではない。

もちろん、チェックの仕組みも有る。
いつもの使用量より極端に多いとか少ないとかいう場合は、
計算機であるハンディターミナルが警告音を出して知らせてくれる。

ただ、そんなことは意外によく有ることだ。
ちょいと旅行に行きましたとか、しばらく親戚の若者が同居していましたとか、
娘がお産で帰って来ててとか、うっかり出しっぱなしが有りましたとか、
お祖母ちゃんが亡くなってとか、3週間ほど入院していましたとか。

使用水量は、生活を反映する。
生活というのは、なるべく安定していたいものだが、生きていりゃ何かしら有る。
水はまさに人が生きるというところに寄り添って有る物だから、
人の生活が水道メーターに直接に映し出されるのだ。

そうやって、ちょくちょく何かしら使用水量に変動は有るものなので、
警告音が鳴ることイコール誤針というわけではない。
とは言え、警告音が鳴ったら、「おや?」と思ってメーターを見直す。

ところが、いくら見直しても間違う時は間違う。
不思議なもので、後になって誤針が発覚した時に、はっきりと「見直した」記憶が有る、
ということは何度も経験している。
よく見なかったから誤針したのではなく、
よく見たにもかかわらず、結果、誤針しているのである。

ここは大きな問題点だと思う。

いい加減な仕事をしているから叱られるのなら、しかたない。
しかし、丁寧に仕事をしているのに、
困難な場だからこそ慎重に仕事をしているのに、
それでも間違うほどの状況なのに、
間違うと減俸になるのである。

これはすでに、働き手の問題とは考え難い。
他の対策を考えるべきではないか。



メーターの位置を変える、というのも一つの方法である。
地面の中に有るから、泥水が流れ込み、メーターが汚れて読みにくくなる。
なのであれば、メーターを高い位置に付けるという方法も有る。

沖縄で住宅街を散歩して驚いた。
水道管がにょきにょき立ち上がって、メーターは塀の中や外壁に沿った所に付けてあったりする。
こりゃあ見やすくって良い。

しかし、これは沖縄が暖かいので、水が凍る心配が無いからできることだ。
地元東京で同じことをやったらあちこちで破裂が起きてしまう。

では東北や北海道はどうしているのだろう。
調べてみると、どうやら隔測メーターを用いているようだ。
本来のメーターは地中に在るが、そこからコードを引いて、
数値を地上で見られるにしているものだ。
寒冷地でなくても、たとえば商業施設や、関係者以外立ち入り禁止の場所や、
学校や、非常に深い所に在るメーターなどで使われている。

いづれにしろ、メーターそのものは公共の物であるが、
その取り付け位置やメーターボックスは使用者の所有物である。
いくら読みやすいからと言っても、使用者の協力が無いと、
設置するわけにいかない。

お宅のメーターは車の下で見にくいから位置を変えてください、
自費で。
と言ってほいほい移設してくれる人はそうそういないだろう。

というわけで、移設や隔測メーター設置は、却下。



ではやはり、今そこに在るメーターを読みやすくする方法を考えるしかない。

つづく

コメントを投稿