犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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ドイツ語で罵られる

2017年09月11日 | たべもののみもの
[あらすじ] 半日ビールを飲み続け。
友人Kは「なるべく薄い(アルコール度数の低い)のをずーっと飲んでいたいの。」と言う。


大学で、ドイツ語学科に行ったのだった。
名物教授がいた。
ポーランド生まれのドイツ人だった。
私はギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』を愛読していたので、
その先生とグラスの境涯の共通点に驚いた。
それ以上のことを先生と話してみていないが。

先生は日本にずっと住んでいて、都内に仕事場を構え、
「石山書斎」なんて表札を出している。
プロフェッサー・シュタインベルクつまり日本語で言えば石山さんだからだ。

先生の授業はドイツ語だけで進められる。
最初は何をまくし立てているのか、さっぱり分からない。
必死で予習したり、先輩から聞いたり、
そういう準備をしている同級生から噂を聞いたり。

教室に着くと、その日の授業のキーワードが黒板一面に書いてある。
早めに学校に行って、そのワードを調べておくのが学生の第一の仕事だ。
ある日、「Unsinn」と書いてある。
調べてみると、愚か者の意味である。
この日以降、先生はさんざん学生を罵るようになった。
「ウンズィンっ」
「ウ」は、かすかに「オ」に近いような発音である。

先生が学生にあきれた時に発する口癖のようなものに、
「Schlafen Sie bitte zu Hause!」というのも有った。
「お家に帰って寝てらっしゃい!」という意味である。

ドイツ語はすっかり忘れてしまったが、
この二つのフレーズの響きだけは脳裏に刻まれ、流暢に発音できる。
ただ、今ここに書くにあたって、大文字にした箇所が正しいかどうか、自信が無い。
そんな細かいこと読者にはどうでも良かろうけれど、
ちょっと間違うと「Unsinn!」と罵られそうで、肝が冷える。



そんな学生時代の同級生と、日比谷公園のオクトーバーフェストに行ったのだ。
ベタだなあ。
3人の友人の一人はオーストリア人と結婚してウィーン郊外の
地平線の見える場所に住んでいる。
浅草育ちがよくそんなところで勤まったもんだ。

残りの愚か者どもはドイツ語など既にちんぷんかんぷんだ。
ただ「Unsinn!」と「Schlafen Sie bitte zu Hause!」だけは言えるところが
悲しい共通点ではある。

友人K「ヴァイス・ブルストは皮を剥くんだよ。」
へー!!!
愚者は皮ごと食っていた。

友人K「Prost!」
Unsinn「かんぱーい!」



Unsinn「ウーアテュープってなんだ?」
友人K「urは"古い"だよ。」
Unsinn「ああっ、そうだった!なんか海馬がくすぐられる!」

Unsinn「これは分かるぞ、ヤー フンダートはこの醸造所の百周年記念なのね。」
友人K「メニューにはなぜかヤーフン ダートって変なとこで切れてるけどね。」

友人K「普通のラガーは無いの?ヴァイスビアは苦手なんだよね。あとはドゥンケルかー。」
Unsinn「そうだっ、白ビールはヴァイスビアだけど黒ビールはダークなわけだ。」

友人K「ここのメーカーのなら間違い無いよ。そっちのは聞いたこと無いなあ。」
Unsinn「マイクロ・ブルワリーだって。百年くらいの歴史じゃ零細なんだな。」



私は一年ちょっとして学校に通うのをやめ、今で言うひきこもりのようになった。
愚かにも先生の指示通りに家で寝ていた、といったところか。



友人Y「うちの息子がさー、プロ棋士になりたいって言うけど、もう年齢制限なのよ。ダメね。
    でも好きなことでドロップアウトしても、あんたみたいなのがいるから安心だわ。
    だって人生楽しんでるでしょ?」
Unsinn「う、うん。私があんたの救いになっているとは…。」



輸入のせいか価格は高いが、天気は上々、午前中から行ったので屋根の下に入れたし
風も吹いて、気分良かった。

同い年が集まれば、子育て、きょうだいとの関係、親の介護、体のあちこちが痛い、と
話題はいづこも同じ。
心配事も誰かの悪口も自分の意見も、遠慮なくしゃべれるのが同級生のいいところか。

たしかに、そんな時には酔っ払ってしまう酒よりも、
なるべく薄いビールをずーっと飲んでワイのワイのやるのがふさわしい。

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