犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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猿面冠者

2017年07月30日 | 国語真偽会
[あらすじ] 現代日本書道の源流、比田井天来の故郷である望月には、
馬と姫様の悲恋物語が伝わる。


唐の三大書家の一人、欧陽詢(おうよう・じゅん)はひどい猿顔だったという。
うっかり目の前でくすりと笑った部下もいたそうだ。
『補江総白猿伝』という伝奇小説までできてしまった。
作者は知られていない。
バレるとまずかったからだろう。つまり、欧陽詢の生前から語られていたのかもしれない。
半七捕物帳で知られる明治の小説家、岡本綺堂も奇譚集の中で取り上げている。

欧陽詢の父欧陽紇(おうよう・こつ)は、身分のある人だった。
ある時、辺境への遠征をおおせつかった。
当時の中国は、絶えず異民族との領土争いを繰り返していたのだ。

その際、妻も連れて行った。
周囲の人たちは、こんな山奥の危険な場所に女性を連れて来るとは、と言った。
案の定、ある日、妻はさらわれてしまっていた。

紇はすぐに妻を捜した。
数ヶ月かかってやっと、見付け出した。
他にも何人かのさらわれた女性たちと暮らしていた。

白い大きな猿にさらわれたのだと言う。
紇は女性たちに方法を教わり、十日後にあらためて攻め込み、
猿を退治した。

が、その時に妻は既に猿の子を身籠っていた。
猿は、その子はいづれ出世する、と言い残し、死んだ。
その子というのが欧陽詢である、というお話だ。

おかげで欧陽詢は毛深くて猿面なのだ、
だが、優れている、というわけだ。

人間以外の何者かとの交わりでできた子は、ことに優れた能力を持つ
というお話は、いろいろある。
山の精霊との間の子の金太郎さんはたいへんな力持ちであったし、
桃から生まれちゃう桃太郎は鬼を退治した。

人間ばなれした能力から、並の生まれ方じゃないと思われたものだろうか。
人間以外のものの能力も兼ね備えるには、その血が流れているというわけか。
なんだかあやしい生まれだけど、優れていることは認めるよ、といったところか。

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