手塚治虫文庫全集、全200巻購入者特典の「ロマンス島」が届きました。
もしかしたらこれがデビュー単行本になったかもしれない作品にもかかわらず、
当時の技術では製版できずに、そのうち一部原稿が消失するなどして、未発表作品のまま
今日に至ったレアな作品ということです。
全作品群の一番トリに「火の鳥」を読むことに決めていましたが、一部読破できないまま、
最近、火の鳥を読み始めました。この作品はずいぶん前に既読ながら、何度読み返しても
すごいマンガですねえ。すでに構想はできていたのに未完に終わった『現代編』がもし完成、
発表されていたならば、病める時代を生きる、迷える我らのバイブル的存在になったのかもなあ。
たしか亡くなった立川談志さんが言ってたと記憶しているけど、彼は枕元に手塚さんのマンガを常に
何冊かそろえておいて、とっかえひっかえ読んでいたんだそうです。それくらい手塚さんを「神様」の
ように拝め、敬い、身近におきたかったということなのでしょう。しかし手塚さんのマンガは、
単なる勧善懲悪ではない、一筋縄ではいかないヘビーなものも多くて、読後引きずるようなものが
多々あり、私だったら読んですぐには寝付けないかもなあ。悲劇が基本で、ハッピーエンドで終わる物が
少なく、突き放たれるような結末もしばしばです。そう、ですから、虫プロ出身の富野由悠季監督などにも、
その悲劇を産みだす作家性が引き継がれているのでしょう。
あら? 今日付けの朝日新聞・beの「beランキング」のお題は、『好きな手塚治虫マンガ』
ではないですか! なんと奇遇なと思いきや、今日が手塚さんの命日だったんですね。
ちなみに火の鳥は第四位でしたが、やはりベスト20には、映像化されて広く知られている代表作が
ズラリと並びました。私が投票するとしたらどの作品だろう? もちろん代表作品は別格としても、
そのすき間を埋めるような小作品にも素晴らしいのがたくさんあります。今回は急ぎ足でほぼ
全作品を読んでしまったので、再読後、私の一押しが決まればいいんだけど。
またまた散財してしまったわけですが、それよりも文庫本とはいえ、さすがに全200巻ともなると
相当かさばり、よりいっそう狭さを増した我が部屋です。ですがおそらく、「紙」で手塚さんの作品を
そろえられるのはこれが最後の機会でしょう。今後電子系が整備されると、そちらのほうで
作品を読めることになっても、「所有欲」を満足させることは難しいでしょうから、古い人間には
納得できないかもしれませんね。本来、狭いスペースしかもてない私のような立場ならば
本の電子化は歓迎しなければならないんでしょうけど、どうやら生きているうちには馴染めそうに
ない気がするんです。